ソロモン王の愛のものがたり

ソロモン、王座に就けられる

ソロモン、王座に就けられる

ダビデの衰退と王宮の陰影
エルサレムの王宮には、戦争の英雄ダビデ王の静かな衰退が色濃く現れていた。彼はかつて国を広げ、数多くの戦いで勝利を収めた男であり、今や病床に伏し、老いに向き合う時間が長くなっていた。周囲は次第にダビデ王の後継者を決める時期が迫っていることを感じ始めていた。

その後継者として注目されるのは、ダビデの息子であるソロモンだった。しかし、王宮内にはソロモンの即位を巡る暗雲が立ち込めていた。ダビデがまだ健在であるにもかかわらず、アドニヤが自ら王位を狙い、彼の野心を隠すことはなかった。

ナタンの警戒と決断
そのころ、預言者ナタンは事態を見守っていた。ナタンは長年にわたりダビデ王とエホバに忠実であり、王と神の意思に対して常に目を光らせていた。アドニヤが王位を簒奪しようとしていることを知ったナタンは、迅速に動く必要があると感じた。

「これを放置すれば、エホバの約束は無に帰してしまう。」ナタンはバテ・シバに告げ、王宮へ向かわせることを決めた。

バテ・シバはダビデに対する忠誠心を持ちながらも、息子ソロモンの命を守るため、ナタンの指示に従った。彼女は慎重にダビデの寝室へと向かい、思いを胸に秘めながら、言葉を口にした。「王よ、あなたがソロモンに王位を譲ると誓われたことをお忘れではないでしょうか。」

ダビデの決断
バテ・シバが語った言葉を聞き、ダビデの心は揺れ動いた。彼はすぐに決断を下した。アドニヤの野望を打破し、エホバの約束を守るため、ソロモンが王位を継ぐべきだと確信した。

「ナタン、ザドク、ベナヤ、すぐにソロモンをギホンへ連れて行け。」ダビデの声は断固としていた。「そして彼に油を注ぎ、王として認められるようにしなさい。」

ソロモン、王座に就く
ナタンと祭司ザドクはすぐに行動を起こした。彼らはソロモンを王の持ち物である雌らばに乗せ、エルサレムの町を出発した。その行動は、王権を受け継ぐ者にふさわしい名誉を与えるものであり、ソロモンの即位を周囲に示すこととなった。

「ソロモン王、万歳！」民衆の歓呼の声がエルサレムに響き渡り、彼は正式に王として迎え入れられた。ソロモンの顔には、少しの緊張と決意が見て取れたが、それでも彼はエホバの意志に従い、王としての責務を果たす覚悟を決めていた。

その一方で、アドニヤはその知らせを聞き、動揺を隠せなかった。彼が目論んでいた王位簒奪は、ダビデ王の命令により完全に打破された。アドニヤはその後、命乞いをし、最終的にその命は許されたが、ソロモンの即位を前に彼の野望は完全に潰えた。

平和の王としての歩み
ソロモンの即位により、ダビデ王の約束が守られ、エホバの意志が現実のものとなった。ソロモンは平和をもたらす王として、民を治める責任を担った。その治世は、戦争の後の平穏を追求するものとなり、国は繁栄を迎えることとなった。

しかし、ソロモンにとっての試練はこれからであった。王としての力を持ちながらも、エホバの導きと知恵を求め続ける日々が待っていた。それでも彼は、自身の内なる誓いを胸に、忠実にその歩みを進めるのであった。