言の葉でつづるあなたへの想ひ

春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ

春（はる）の夜の夢ばかりなる手枕（たまくら）にかひなく立たむ名こそ惜しけれ（千載集 雑 964）
　　　　周防内侍（すおうのないし 生没年不詳 周防守平棟仲の娘）


春の夜、深い夢の中で見たのは、ただ一つの光景だけ。手枕に頬杖をつき、夢の中で恋しい人を待ち続ける周防内侍の姿がそこにあった。

彼女の心は、春の夜に満ちる月の光と、微かな桜の香りで満たされていた。しかし、その美しい夜景の中には、寂しさと切なる思いが滲んでいるように感じられた。

「春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ」

彼女の詠んだこの和歌は、深い愛情と寂しさが込められていた。手枕に頬杖をつき、夢の中で待ち続ける彼女の姿は、まるで春の夜に咲く一輪の孤独な花のようだった。

彼女の心は、夢の中で恋しい人と寄り添い、夜が明けるまで彼を待ち続ける。彼女の愛する人が現れるその瞬間まで、彼女の心は夢の中で静かに輝き続けるのだろう。

周防内侍の夜の夢、その美しさと切なさは、まるで春の夜に揺れる桜の花のように儚く、そして美しい。


***


百人一首 67番 周防内侍

原文:

春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ

現代語訳:

春の夜の夢のように儚い、あなたの手枕で眠ってしまったばかりに、何の甲斐もなく浮名（うわさ）が立ってしまうのは口惜しいことです。

作者:

周防内侍（すおうのないし、生没年不詳）は、平安時代後期の女官で歌人です。父は平棟仲（たいらむねなか）で、周防守（すおうのかみ）を務めました。

背景:

この歌は、小倉百人一首の67番目に収められています。歌は、二条院で開催された歌会での出来事を詠んだものと考えられています。

当時、周防内侍は権力者との関係が噂され、評判が芳しくありませんでした。ある夜、二条院で歌会に参加していた周防内侍は、眠くなってしまい、誰かの腕枕で眠ってしまいました。その相手が誰なのかは不明ですが、この出来事が周防内侍の評判をさらに悪化させたことは想像に難くありません。

この歌は、周防内侍の当時の苦悩と後悔を歌ったものと言えます。春の夜の夢のように儚いひとときのために、自分の評判を犠牲にしてしまったことに対する悔恨の気持ちが伝わってきます。

解釈:

この歌は、様々な解釈が可能です。

一つの解釈は、周防内侍が単に自分の状況を嘆いているというものです。彼女は権力者との関係に翻弄され、自分の意志とは関係なく評判を落としてしまったことに苦しんでいます。
もう一つの解釈は、周防内侍が当時の社会を批判しているというものです。当時の社会は女性に対して非常に厳格で、ちょっとしたことで評判を落としてしまう可能性がありました。周防内侍は、そのような社会のあり方に憤りを感じていたのかもしれません。
いずれにしても、この歌は、当時の女性たちが置かれていた苦しい状況を反映していると言えます。

その他:

この歌は、俳句や和歌などの題材としてよく用いられます。
「春の夜の夢」というフレーズは、儚い美しさやはかないものの象徴として使われています。
この歌は、エズラ・パウンドやドナルド・キーンなど、多くの英文学者によって英訳されています。
参考資料:

百人一首 [無効な URL を削除しました]
周防内侍 [無効な URL を削除しました]
春の夜の夢 [無効な URL を削除しました]
その他ご質問があれば、お気軽にお尋ねください。