言の葉でつづるあなたへの想ひ

きみがため春の野にいでて若菜摘む わがころも手に雪は降りつつ

光孝天皇は雪の降る春の野に立っていた。白い雪が野原を覆い、遠くまで広がる景色は一面銀世界となっていた。彼の周りには静寂が漂い、ただ雪が舞い落ちる音だけが聞こえる。寒さをしのぐため、彼はころもをしっかりと身にまとい、手には若菜を摘んだ籠を持っている。

空気は冷たく、息が白く発せられる。しかし、その冷たさにも春の訪れを感じることができる。雪の下には新緑が待ち構え、雪解けとともに美しい花々が咲き誇る光景が目に浮かぶ。彼はその美しい春の予感に胸を躍らせた。

光孝天皇は一歩踏み出し、雪の中を歩き始める。足元の雪がふわりと踏みしめられ、その瞬間に静寂が一層深まる。彼は雪の中に立つ自分を映し出すように、心の中で過去を振り返った。

きみとの出会いが、まるで春の訪れのようだった。彼女の笑顔が、彼の心に新たな命を吹き込んでくれた。その思い出が、彼を温かく包み込み、寒さを忘れさせてくれる。

光孝天皇は、雪の中を歩みながらきみの姿を想い、心から感謝の気持ちを捧げた。彼の心の中には、春の訪れときみへの愛情が満ち溢れていた。


きみがため春（はる）の野にいでて若菜摘むわがころも手に雪は降りつつ（古今集 春 21）
　　　　光孝天皇（830～887 第58代天皇 仁明天皇の皇子 仁和の帝）


光孝天皇は春の訪れを感じ、清々しい野原に歩を進めた。青々とした若草が彼の足元で揺れ、その爽やかな香りが漂っている。手には柔らかな若菜を摘む籠を持ち、春の息吹を感じながら彼は歩いていった。

しかし、その美しい春の風景とは裏腹に、天からは雪が舞い降りてきた。雪片が彼のころもに積もり、その白い粉雪が彼の手に触れる。寒さと温かさが同居するその瞬間、光孝天皇は心に微かな感傷を覚えた。

彼は心の中できみの姿を思い浮かべた。彼女とともに過ごした春の日々が思い起こされ、その美しい思い出が彼の心を温かく包み込む。彼女との出会いはまるで春のように新たな生命をもたらし、彼の心を躍らせた。

そして、彼は雪の舞う春の日に、きみの姿を想いながら静かに笑みを浮かべた。彼の心は、春の訪れと雪の舞い降りる美しい風景を通して、彼女への愛情と感謝の気持ちで満たされていたのだった。


光孝天皇は雪の舞う春の野を歩みながら、心の中に深い感情が渦巻いていた。彼はきみとの思い出を胸に秘め、その温かな思いに包まれながら歩を進める。彼の心は愛情と感謝で満ち溢れており、きみとの出会いが彼にとっていかに特別なものであるかを痛感していた。

雪が降り積もる春の野に立つ彼の姿は、孤独ながらも心に深く根付いた愛情の証であった。彼はきみとの出会いが彼の人生にどれほどの意味を持つかを思い返し、その喜びと感動に心を打たれる。彼の内なる喜びは、雪の中で静かに輝いていた。

一方で、彼の心には切なさも混じっていた。きみとの別れや、彼女との過ごした思い出が彼を喜びと同時に悲しみにも包み込んでいた。彼はその切なさを胸に秘めつつも、きみへの愛情を永遠に抱き続ける決意を固めていた。

光孝天皇の心は、雪の降り積もる春の野に立つ彼の姿と共に、静かに揺れ動いていた。彼の内なる感情は、雪の白さと対比してさらに深く、複雑な色彩を帯びていた。