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母と仲良し
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母と仲良くするプログラムです
私は本とは母が大好きだった
とっても強くて美しくて
気品があって
外務省のタイピストだった母
いつかそんな女になりたかった
だけどわたしは幻覚幻聴、家出と盗みばかり
公務なんてとんでもない
ふと思い出したんです
児童相談所にいったとき
私は貰い子になっていた
うそつきねー
母さま
いつも居眠りしてましたね
こっくりこっくり
母さま
糸を針が通らないと
困った顔
母さま
あかぎれだらけでしたね
母さま
父さまのセーターをほどいて
編み物してましたね
大きな声で歌ってましたね
野菊が好きだと言っていましたね
毒子はあなたを想うことによって
普通の子になれるかな
たぐるように
引き寄せるように
母を思い出そうとしている
いつも ああはなりたくないと
思っていた
頑張ってばかりで
辛そうだったから
働きづくめに働いていた
昼は百姓 夜は料理屋
母と仲良くするプログラム
人生最大の山場なのかも
それを受け入れたら
毒子は毒子でいられなくなるから
わたしたちが我慢すれば
あなたたちの時代には
女はもう少し幸せになれる
あなたはいつも我慢する
あなたはいつも耐える
あなたが笑っているところを
あなたが幸せそうなところを
わたしは見たことがない
いつしか ああはなりたくない
そう思っていた
ごめんなさい
一番 大好きな人なのに
母さま……
あかぎれだらけの指に
焼けた油をぬっていた
外務省のタイピストだった
母の美しい指は
百姓の手になっていく
稲ののこぎり葉で
顔も刻まれていく
生きることは
美しくなくなること
小さなわたしは
受け入れられなかった
いやだった
だって 父さまは
笑っている女のそばにいる
ねー どうして?
母が愛した江差追分
全てを捨てて
ついていきたくなると言っていた
そんな素敵な人がいたのかな
与謝野晶子が好きだったね
燃えあがるような
情熱が母の心に
あったのだろうか
短歌をたくさん残してくれた
母と仲良くなる
プログラム
気づいてしまった
愛されていたこと
毒子は消えていくのかな
働きづくめに働いて
すい臓がんのるいそうになって
がりがりに痩せて
痛みと戦って
ぶどう酒に麻薬を混ぜて
耐えていた
そんな母を受け入れられずに
ああは なりたくない
一生懸命生きても
いいことはないと
生きることがわからなくなる
幸せかどうかが問題じゃない
知らなかったんだ
ごめんね
そして ありがとう
母さま
おはようございます
起きたらすぐに
暖房をつけると
よく叱られましたね
起きたら
寒ければ一枚着ろって
いまだに思い出して
くすって笑ってしまいます
大雑把な野菜の切り方に
百姓料理だと
注意されましたね
やっぱり
たのしいーー
育ててくれてありがとう
たくさんの思い出をありがとう
私は本とは母が大好きだった
とっても強くて美しくて
気品があって
外務省のタイピストだった母
いつかそんな女になりたかった
だけどわたしは幻覚幻聴、家出と盗みばかり
公務なんてとんでもない
ふと思い出したんです
児童相談所にいったとき
私は貰い子になっていた
うそつきねー
母さま
いつも居眠りしてましたね
こっくりこっくり
母さま
糸を針が通らないと
困った顔
母さま
あかぎれだらけでしたね
母さま
父さまのセーターをほどいて
編み物してましたね
大きな声で歌ってましたね
野菊が好きだと言っていましたね
毒子はあなたを想うことによって
普通の子になれるかな
たぐるように
引き寄せるように
母を思い出そうとしている
いつも ああはなりたくないと
思っていた
頑張ってばかりで
辛そうだったから
働きづくめに働いていた
昼は百姓 夜は料理屋
母と仲良くするプログラム
人生最大の山場なのかも
それを受け入れたら
毒子は毒子でいられなくなるから
わたしたちが我慢すれば
あなたたちの時代には
女はもう少し幸せになれる
あなたはいつも我慢する
あなたはいつも耐える
あなたが笑っているところを
あなたが幸せそうなところを
わたしは見たことがない
いつしか ああはなりたくない
そう思っていた
ごめんなさい
一番 大好きな人なのに
母さま……
あかぎれだらけの指に
焼けた油をぬっていた
外務省のタイピストだった
母の美しい指は
百姓の手になっていく
稲ののこぎり葉で
顔も刻まれていく
生きることは
美しくなくなること
小さなわたしは
受け入れられなかった
いやだった
だって 父さまは
笑っている女のそばにいる
ねー どうして?
母が愛した江差追分
全てを捨てて
ついていきたくなると言っていた
そんな素敵な人がいたのかな
与謝野晶子が好きだったね
燃えあがるような
情熱が母の心に
あったのだろうか
短歌をたくさん残してくれた
母と仲良くなる
プログラム
気づいてしまった
愛されていたこと
毒子は消えていくのかな
働きづくめに働いて
すい臓がんのるいそうになって
がりがりに痩せて
痛みと戦って
ぶどう酒に麻薬を混ぜて
耐えていた
そんな母を受け入れられずに
ああは なりたくない
一生懸命生きても
いいことはないと
生きることがわからなくなる
幸せかどうかが問題じゃない
知らなかったんだ
ごめんね
そして ありがとう
母さま
おはようございます
起きたらすぐに
暖房をつけると
よく叱られましたね
起きたら
寒ければ一枚着ろって
いまだに思い出して
くすって笑ってしまいます
大雑把な野菜の切り方に
百姓料理だと
注意されましたね
やっぱり
たのしいーー
育ててくれてありがとう
たくさんの思い出をありがとう
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