2 / 9
2,
しおりを挟むバレンタインの日、ヒロは恐ろしい数のチョコを貰っていた。
「わあ!ありがと~。」
なんて言ってヒロは全部嬉しそうに受け取る。無類の女好きだから。
こんだけハイスペで女の子が好きなチャラい性格だから、そりゃもう女性たちから凄まじいアピールが日夜されている。
でもヒロは女好きのくせにというか女好きだからというか1人に決めて付き合ったりはしないのだそう。
遊んでたりはするんだろうな。
絶対聞きたくないから聞かないけど。
「ユノみたいなやつ初めてだよぉ。俺、女の子にモテるようになったら男友達いなくなっちゃって~。大学でユノに会えて本当によかったぁ。」
なんてヘラヘラ嬉しげに俺に笑いかけるヒロ。
ばーか。それは俺の内心が他の女どもと同じだからだよ。
ごめんな。
ヒロがトイレに行っている最中は控えめな地味女子どもが講義机に怨念のこもってそうなチョコを置いていく。
机はすぐに山盛りになって、とうとう天板下の道具入れスペースにまで突っ込みだした。
チョコの机詰め放題が終わった所で、隣に座っていた俺は机の下に詰め込まれたチョコを一つ取り出してみる。
俺ですら知ってる高級輸入チョコの豪華な外袋。
女ってだけで、ヒロにアピール出来ていいよな。
俺も女だったらよかった。
でも、女だったらヒロの友達にはなれなかっただろう。
それでもどうにか一晩遊んでもらえたりは出来ただろうか。
こんな風にすぐ側で友達面しながら恋心拗らせてるよりはそっちの方がよかったかも。
なんてしけたことを考える。
考えていたらヒロが戻って来るのが見えた。
目が合って、慌てて手にしていたチョコを机に戻す。
いつも飄々としてゆったり歩くヒロが、珍しく少し早足で机に辿り着く。
「それ、チョコレート?」
やや頬を赤くして尋ねてくる。分かりきってるのに白々しい。
しかも全く貰えてない俺に聞くとかかなりのマウントムーブだろう。こいつのこういう所が友達のいない所以だと思う。
俺レベルにヒロを愛してると「嬉しそうなの超可愛い結婚したい」としか思わないけどね。
「そうだよ。上に乗らなかったから中入れといた。」
俺もぎこちなく笑い返して指さした。
俺は人様のチョコを恨みがましく盗み見たのではなく、落ちそうだったから親切にも中にしまったのだ。歴史改変。
「う、うん!!」
何だか普段よりも焦った様子で俺が戻したばかりのチョコを引っ張り出す。
しばらく外袋を見つめて、蕩けるような顔で笑った。
「ふひゅっ」
俺がやらかしちまったのかと一瞬思ったが、斜め前に座ってヒロを見ていた女子生徒の吐息だった。
分かる。やばいよな、ヒロのこの顔は。
でもこれ標準装備だから。
友達の俺にすら大盤振る舞いだから。
「嬉しいな。ユノ、ありがとう。」
その顔のまま俺を見て言う。
ほらね。
俺、盗み見してただけだけどね。そんなに好きなメーカーだったんだろうか。
覚えておこう。
にしても、他のチョコに比べて喜びすぎじゃないだろうか。
まさかそのチョコの贈り主が好きなわけじゃあるまい。見えるところに記名やメッセージカードはなかったし、紙袋の下に入り込んでるんだろう。だから外からじゃ誰からかもわからないはず。
でも、もしヒロが今年こそこのチョコの山から特別を見つけてしまったら……
そんな俺の一抹の不安は、3月14日に良い店があるからご飯に行こうと誘われたことで少し払拭された。
どうやら今年もホワイトデーはスルーのようだ。
ヒロは去年も一切チョコのお返しをしていない。
本命でもない子に返すのは面倒だけど勝手にくれる分には構わないらしい。
なかなか最低な発言だが、俺クラスにヒロにぞっこんラブだと「潔くてしゅき!」としか思わない。
そんなこんなで夜待ち合わせし、他の男ならとっておきのデートにしか使わないようなホテルにあるイタリアンの個室に男2人で場違い丸出しで座った。
女しか相手にしてこなかったからかヒロが俺といくのはいつもそんなとこばっかりだ。
そして飯も酒も進んだ所で、ヒロからお菓子を渡され告白され、今に至る。
32
お気に入りに追加
278
あなたにおすすめの小説
【完結】なぜ、王子の僕は幽閉されてこの男に犯されているのだろう?
ひよこ麺
BL
「僕は、何故こんなに薄汚い場所にいるんだ??」
目が覚めた、僕は何故か全裸で拘束されていた。記憶を辿るが何故ここに居るのか、何が起きたのかが全く思い出せない。ただ、誰かに僕は幽閉されて犯されていたようだ。ショックを受ける僕の元に見知らぬ男が現れた。
なぜ、王子で最愛の婚約者が居たはずの僕はここに閉じ込められて、男に犯されたのだろう?
そして、僕を犯そうとする男が、ある提案をする。
「そうだ、ルイス、ゲームをしよう。お前が俺にその体を1回許す度に、記憶のヒントを1つやろう」
拘束されて逃げられない僕にはそれを拒む術はない。行為を行う度に男が話す失われた記憶の断片。少しずつ記憶を取り戻していくが……。
※いままでのギャクノリと違い、シリアスでエロ描写も割とハード系となります。タグにもありますが「どうあがいても絶望」、メリバ寄りの結末の予定ですので苦手な方はご注意ください。また、「※」付きがガッツリ性描写のある回ですが、物語の都合上大体性的な雰囲気があります。
アイドル辞めると言ったら犯された
人生1919回血迷った人
BL
二人一組でアイドルユニットとして活動している彩季(アキ)は相方の嶺二(レイジ)のことが好きだ。その気持ちに限界が来る前にとこの仕事を辞めると嶺二に伝えるが─────。
※タイトル通りです。
愛ある強姦?となっております。
ほぼエロで書くつもりです。
完結しましたのでムーンライトノベルズ様でも掲載する予定です。
【BL・R18】可愛い弟に拘束されているのは何ででしょうか…?
梅花
BL
伯爵家長男の俺は、弟が大好き。プラチナブロンドの髪や青色の瞳。見た目もさることながら、性格も良くて俺を『にーに』なんて呼んだりしてさ。
ても、そんな弟が成人を迎えたある日…俺は…
基本、R18のため、描写ありと思ってください。
特に告知はしません。
短編になる予定です。地雷にはお気をつけください!
横暴な幼馴染から逃げようとしたら死にそうになるまで抱き潰された
戸沖たま
BL
「おいグズ」
「何ぐだぐだ言ってんだ、最優先は俺だろうが」
「ヘラヘラ笑ってんじゃねぇよ不細工」
横暴な幼馴染に虐げられてはや19年。
もうそろそろ耐えられないので、幼馴染に見つからない場所に逃げたい…!
そう考えた薬局の一人息子であるユパは、ある日の晩家出を図ろうとしていたところを運悪く見つかってしまい……。
横暴執着攻め×不憫な受け/結構いじめられています/結腸攻め/失禁/スパンキング(ぬるい)/洗脳
などなど完全に無理矢理襲われているので苦手な方はご注意!初っ端からやっちゃってます!
胸焼け注意!
自分のことを疎んでいる年下の婚約者にやっとの思いで別れを告げたが、なんだか様子がおかしい。
槿 資紀
BL
年下×年上
横書きでのご鑑賞をおすすめします。
イニテウム王国ルーベルンゲン辺境伯、ユリウスは、幼馴染で5歳年下の婚約者である、イニテウム王国の王位継承権第一位のテオドール王子に長年想いを寄せていたが、テオドールからは冷遇されていた。
自身の故郷の危機に立ち向かうため、やむを得ず2年の別離を経たのち、すっかりテオドールとの未来を諦めるに至ったユリウスは、遂に自身の想いを断ち切り、最愛の婚約者に別れを告げる。
しかし、待っていたのは、全く想像だにしない展開で――――――。
展開に無理やり要素が含まれます。苦手な方はご注意ください。
内容のうち8割はやや過激なR-18の話です。
嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい
りまり
BL
僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。
この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。
僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。
本当に僕にはもったいない人なんだ。
どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。
彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。
答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。
後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。
【BL】攻めの将来の為に身を引こうとしたら更に執着されてハメられました
めめもっち
BL
名前無し。執着ハイスペ×地味な苦学生。身分格差。友達から始めた二人だったが、あまりにも仲良くしすぎて一線を越えてしまっていた。なすがまま流された受けはこのままでいいのだろうかと悩んでいた中、攻めの結婚を聞かされ、決断をする。
2023年9月16日付
BLランキング最高11位&女性向け小説96位 感謝!
お気に入り、エール再生ありがとうございます!
文官Aは王子に美味しく食べられました
東院さち
BL
リンドは姉ミリアの代わりに第三王子シリウスに会いに行った。シリウスは優しくて、格好良くて、リンドは恋してしまった。けれど彼は姉の婚約者で。自覚した途端にやってきた成長期で泣く泣く別れたリンドは文官として王城にあがる。
転載になりまさ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる