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第3章 学園編

31 シンクロ

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実況の熱のこもった紹介と一緒に続けて出てきたキマイラも瞬殺だった。
さっきと同じ疾風技をノスニキが繰り出すと、轟音と共に渦巻く強風がキマイラの巨体を吹っ飛ばして一発KOする。

戦闘不能になった相手の様子を見てまた審判がユーリスの勝利を告げた。
会場がさらに沸いて実況とBGMに熱が入る。

10人抜きまであと2人になった。
このまま全勝するんだろうか。
いや、出来るわけない。

そう思った直後、案の定ノスニキの体がしぼんで狼犬の姿になってしまった。
熱気を帯びていた会場にどよめきが走る。

「何ということだノスガルデルタ!ここでまさかのスタミナ切れか!?はたまた全てユーリスフレッドの戦略か!その体で果たしてどうやって十傑ツートップと戦うんだぁ!?」

予想通りのことが起きて息を飲んだ。
ユーリスの戦略は、単純なゴリ押し戦法だ。
あらかじめ守護獣を相手より高いレベルまで上げておいて、強い攻撃技をぶっ放し続けて勝つ。
10人抜きイベントでは一番手堅い勝ち方だけど、ゲームでは綿密に育てて素早さと攻撃力、持久力を十分備えたグランドドラゴン系列に育てるしかこのやり方に耐えられない。

思った通り持久力に弱みがあるノスニキには10体の守護獣に高火力の疾風技を出し続けるのは無理なようだった。
向こうは準備なしで応じてるとはいえこの力づくのやり方で8戦もできた方が不思議なくらいだ。
俺の知らない間にユーリスはここまでノスニキを育てたのか……。

小さくなったノスニキの前に、巨大なミノタウロスが立ち塞がる。
誰もがノスニキの負けを予想したに違いない。
ミノタウロスが棍棒を振りかざして突進すると、場内に悲鳴が上がった。
直後ノスニキはその体をするりと抜けて背後に回る。

ノスニキの物理無効技を知らない観客の驚愕でまた会場がざわめいた。
けど、この技だって繰り返していればそのうちスタミナが尽きるし、属性技を打たれたら終わりだ。ジリ貧じゃないか。

「ユーリス様!」

思わず観客席から身を乗り出して、バトルエリアに立つユーリスに叫ぶ。
会場はうるさくて声が届いたかも怪しいのに、ユーリスはこちらを向いた。
その顔に焦りはなく、俺と目が合ってふっと笑う。
久々に見た笑顔に、こんな状況なのに胸が熱くなった。

その直後にユーリスに起きた異変にそのまま目が釘付けになる。
亜麻色だったウェーブ掛った髪がみるみる黒銀色になり、耳が大きく三角に伸びて黒銀の毛でフサフサになった。
まるでノスニキの耳そっくりだ。

その姿で遠吠えのような咆哮をユーリスがあげると、ミノタウロスの足元をちょこまか逃げ回っていたノスニキの体が突然フェンリルに戻った。
真下から膨らんできた敵の体に足を掬われて、ミノタウロスがよろめく。
そこにすかさずノスニキが疾風技を繰り出して巨体を地面に叩きつけた。
空を切る音と地鳴りだけが会場に響く。

その場にいたユーリス以外の全員があっけに取られていた。
一瞬の間の後審判がノスニキの勝利を告げる。

「きゅ、9人抜きだあぁぁぁ!!」

思い出したように実況と歓声がまた場内を埋めたが、さっきと比べて戸惑い交じりになっている。

何だ、今の?

「一体どういう事でしょう!?犬耳姿も麗しいがユーリスフレッド!シンクロした途端にノスガルデルタが幻獣化したのは関係があるのかぁ?わたくし幻獣とシンクロする例にお目にかかるのは初めてです!興奮しております!正に未知の守護獣!!十傑の9人まで瞬殺した奇々怪々の化け物コンビだあああぁ!!!」

とうとう十傑最期の1人になった。
体格が良いパリッとした騎士姿の男がバトルエリアに入る。
彼の腕に巻きついた青大将から白い鳥の羽が生え、宙に浮いたかと思うと巨大な蛇竜に姿を変えた。
ケツァルコアトルの禍々しい姿に方々から悲鳴が上がる。
黄色い声や声援、どよめきが会場を埋めている。
戸惑う声があるのは多分……
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