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第3章 学園編
23 限界
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頭と足中心のブラッシングは、ゲーム内でやる気パラメーターを上げやすいコマンドだ。パフォーマンスにむら気のある種類に進化した時は重宝するんだよな。
んー、……でも、何かこの子の感じ、元々の性格だけじゃない気もする。
しばらく施しているとスッキリした顔つきになったので手を止め、大きな背中に手を回して起きるように促す。
それに合わせてグレが体を起こしてお座りの姿勢になった。
使い終わったコームをティモルに返す。
「あっ、ありがとうございます。」
彼は驚いた様子でグレとコームを交互に見た。
「訓練に入る前に、今のブラッシングを習慣づけて下さい。むら気のある子は、『これをされたら集中して訓練』というきっかけの動作を作ってメリハリをつけると良いですよ。」
「はい。」
「課題はフープくぐりでございますか?」
ティモルが手にしているフラフープから推測して聞く。
この手の獣には珍しい選択だ。
「はい。あの、本当は障害物コースがいいんですが、グレって僕から少しも離れないんです。だから、フープくぐりにしたんですけど、グレでも障害物コース出来るようになりますか?」
ティモルがすがるような視線を投げてくる。俊敏な方ではないと思うけど、コースをこなすくらいなら身体的には問題ないはずだ。けど、普段からそんなにべったりなのは何故なんだろう。
「……失礼ですがこれまでグレ様に対して離れて欲しくないとか、ずっとそばにいて欲しいなど強く願ったことは?」
「あ……あります。お父さんが死んだ時、グレはいなくならないでねって。」
「左様ですか。だからグレ様は、ネイサム様のために今の姿になったのでしょう。」
「そうかもしれません……。でも僕もう大丈夫です。新しいお義父さんはいい人だし、家族みんな仲良しだし。」
「では、これからはもう大丈夫だってたくさん伝えて安心させて差し上げて下さい。そうしたら障害物コースもきっとこなしてくれますよ。」
「あ、うん。分かりました。」
ティモルがそっとグレの頭を撫でると、グレは優し気な瞳を細めた。
「あの、ブライトン様のことルコ様って呼んでもいいですか?」
「ご随意に。」
「僕の事はティモルでいいですから。そ、それと、迷惑でなければグレの障害物コースの練習に……」
「ネイサム、君も障害物コースにするの?」
後ろからユーリスの声がして振り返ると、明るい笑顔で立つ彼がいた。
「クリスタス様!はっはい。できるか分かりませんが、ルコ様のアドバイスで変える勇気が出ました!」
ティモルの少しそばかすが浮いた丸みのある顔がほんのり赤くなっている。
な、何だその反応は……。
「そう、じゃあ一緒に練習しようか。」
爽やかな笑顔しちゃって。
サボってたくせに、さも真面目にやっていたような口ぶりはどうなんだろう。
「ふぁ、ふぁいっ!」
まんまと騙されてうっとりした顔で返事をするティモルの背に手を回して歩くように促すユーリス。
大人気ないのはわかってるけど、胃がジリジリした。
さっきから一度もこっちを見ない。
まるで俺なんかそこにいないみたいな態度だ。
どうにか研究科の生徒の立場に縋ってる俺の悪あがきなんて、ユーリスには関係ないんだな。
心臓がぎゅうっと縮まって体が急速に冷える。感じていためまいと吐き気がより強くなった。
ぐにゃりと視界が歪んで、自分が立っているかどうかあやふやになる。
視界がすうっと暗くなった。
「ルコ様!!」
ティモルの声が遠くに聞こえて、その直後に体が地面にぶつかる衝撃を感じる。
そのあと、意識がふっつりと途絶えた。
んー、……でも、何かこの子の感じ、元々の性格だけじゃない気もする。
しばらく施しているとスッキリした顔つきになったので手を止め、大きな背中に手を回して起きるように促す。
それに合わせてグレが体を起こしてお座りの姿勢になった。
使い終わったコームをティモルに返す。
「あっ、ありがとうございます。」
彼は驚いた様子でグレとコームを交互に見た。
「訓練に入る前に、今のブラッシングを習慣づけて下さい。むら気のある子は、『これをされたら集中して訓練』というきっかけの動作を作ってメリハリをつけると良いですよ。」
「はい。」
「課題はフープくぐりでございますか?」
ティモルが手にしているフラフープから推測して聞く。
この手の獣には珍しい選択だ。
「はい。あの、本当は障害物コースがいいんですが、グレって僕から少しも離れないんです。だから、フープくぐりにしたんですけど、グレでも障害物コース出来るようになりますか?」
ティモルがすがるような視線を投げてくる。俊敏な方ではないと思うけど、コースをこなすくらいなら身体的には問題ないはずだ。けど、普段からそんなにべったりなのは何故なんだろう。
「……失礼ですがこれまでグレ様に対して離れて欲しくないとか、ずっとそばにいて欲しいなど強く願ったことは?」
「あ……あります。お父さんが死んだ時、グレはいなくならないでねって。」
「左様ですか。だからグレ様は、ネイサム様のために今の姿になったのでしょう。」
「そうかもしれません……。でも僕もう大丈夫です。新しいお義父さんはいい人だし、家族みんな仲良しだし。」
「では、これからはもう大丈夫だってたくさん伝えて安心させて差し上げて下さい。そうしたら障害物コースもきっとこなしてくれますよ。」
「あ、うん。分かりました。」
ティモルがそっとグレの頭を撫でると、グレは優し気な瞳を細めた。
「あの、ブライトン様のことルコ様って呼んでもいいですか?」
「ご随意に。」
「僕の事はティモルでいいですから。そ、それと、迷惑でなければグレの障害物コースの練習に……」
「ネイサム、君も障害物コースにするの?」
後ろからユーリスの声がして振り返ると、明るい笑顔で立つ彼がいた。
「クリスタス様!はっはい。できるか分かりませんが、ルコ様のアドバイスで変える勇気が出ました!」
ティモルの少しそばかすが浮いた丸みのある顔がほんのり赤くなっている。
な、何だその反応は……。
「そう、じゃあ一緒に練習しようか。」
爽やかな笑顔しちゃって。
サボってたくせに、さも真面目にやっていたような口ぶりはどうなんだろう。
「ふぁ、ふぁいっ!」
まんまと騙されてうっとりした顔で返事をするティモルの背に手を回して歩くように促すユーリス。
大人気ないのはわかってるけど、胃がジリジリした。
さっきから一度もこっちを見ない。
まるで俺なんかそこにいないみたいな態度だ。
どうにか研究科の生徒の立場に縋ってる俺の悪あがきなんて、ユーリスには関係ないんだな。
心臓がぎゅうっと縮まって体が急速に冷える。感じていためまいと吐き気がより強くなった。
ぐにゃりと視界が歪んで、自分が立っているかどうかあやふやになる。
視界がすうっと暗くなった。
「ルコ様!!」
ティモルの声が遠くに聞こえて、その直後に体が地面にぶつかる衝撃を感じる。
そのあと、意識がふっつりと途絶えた。
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