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第3章 学園編
19 ユーリスは がまん を おぼえた!
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ガシャンッと背後で食器がぶつかる音がして、熱っと小さな悲鳴が聞こえる。
振り返ると眉をしかめて手を押さえるユーリスの姿があった。
「いかがしましたか?」
慌てて近寄ってみれば、カップが倒れ紅茶がソーサーとクロスに大量に溢れていた。
手にしたカップを置き損ねて手に紅茶が掛かったのだろう。
「お見せください。」
濡れた左手を取り、指先を確認する。
見た目では特に外傷はないけど、軽い火傷くらいはしてるかもしれない。
「すみません、冷えた水を持ってきていただいても?」
驚いてこちらを見ている給仕に告げると、慌てて外に出て行った。
これくらい言われなくても動いて欲しい、と少しトゲのある気持ちが湧いてしまう。
「まだ痛みますか?」
ハンカチで紅茶を拭き取りながら尋ねる。
「……ちょっと。」
大したことはないはずだけど、見た目よりは酷いのかもしれない。
慰めるように手の甲を指の腹で撫でると、滑らかな皮膚の下に隆起した血管や筋の感触がした。
つい何度も指を往復させてその感触を味わう。
「っ……ルコ、もういいから、手、離せ。」
軽く振り払われてはっとした。
欲望丸出しの行動に走っていたのを咎められて恥ずかしさが湧いてくる。
「失礼いたしました。」
「下がっていい。あと、必要な時はこっちから呼ぶから。」
視線を合わせずにユーリスが言う。
嘘だ。部屋を移ってから一度だって呼んでくれたことないじゃないか。
言外に会いたくたいと言われ、自分はまたやらかしてしまったのだと気付いた。
そりゃそうだ。
仕事を口実に呼ばれてもないのに押しかけて、手を撫で回すセクハラ行為まで働いたんだから。
「も、申し訳ございません。出過ぎた真似をしました。」
クンクン鼻を鳴らしてこちらを見ているノスニキの前を横切って、とぼとぼと出口に向かい部屋を後にする。
ノスニキがフォローしてくれるのはありがたいけどちょっと俺やり過ぎちゃってどうしようもないみたい。
ふらつく足取りで自室のあるフロアを歩いていると、まばらに歩く生徒の中にミレーユとジキスがいた。
「あ、ルコおはよ。ご飯食べた?俺らこれから食堂いくとこ。今日のメニュー何だった?」
ミレーユが話しかけてくる。
止まらず通り過ぎようとするジキスの首根っこをしっかり掴んで。
「ごめん、食事はしてないんだ。」
「じゃあ俺らと一緒に食べる?」
「私を一緒にするな!貴様が私が出るタイミングで勝手に付いてきただけだろうが!離せバカミレーユっ」
「朝は食べない方でさ。悪いけど。」
「そう。何か昨日より更に顔色悪いよ。休んだら?」
「ありがとう。そうする。」
「おい!私を無視するなってば!」
2人と別れて部屋に戻り、筆記用具やノートを取り出してまた廊下に出る。
何かしていないといられなかったので、週末の二日間は結局は暮れるまで書庫に行って整理作業を進め、夜はまた眠れるまでレポートを添削した。
週明け、まだ誰も教室に来ていないうちに2年のそれぞれの引き出しに書き上げた添削レポートをつっこむ。
自分の分は提出ボックスに先に入れた。
そのすぐ後、ジキスがいつものように本が詰まった大きな革鞄を下げて部屋に入って来た。
こちらを一瞥もせずに机に鞄を置き、中から自分の添削済みレポートを取り出して提出ボックスに近づく。
入れる時に、先に入っていた俺のレポートをじっと見た。
「少し見てもいいか?」
俺に向けての言葉だと最初わからなくて、黙っていたらジロリと睨まれた。
やっと意図に気づいて承諾すると、ジキスが自分のレポートと入れ違いに俺のレポートを取り出して読み始める。
心なしかちょっと緊張した。
振り返ると眉をしかめて手を押さえるユーリスの姿があった。
「いかがしましたか?」
慌てて近寄ってみれば、カップが倒れ紅茶がソーサーとクロスに大量に溢れていた。
手にしたカップを置き損ねて手に紅茶が掛かったのだろう。
「お見せください。」
濡れた左手を取り、指先を確認する。
見た目では特に外傷はないけど、軽い火傷くらいはしてるかもしれない。
「すみません、冷えた水を持ってきていただいても?」
驚いてこちらを見ている給仕に告げると、慌てて外に出て行った。
これくらい言われなくても動いて欲しい、と少しトゲのある気持ちが湧いてしまう。
「まだ痛みますか?」
ハンカチで紅茶を拭き取りながら尋ねる。
「……ちょっと。」
大したことはないはずだけど、見た目よりは酷いのかもしれない。
慰めるように手の甲を指の腹で撫でると、滑らかな皮膚の下に隆起した血管や筋の感触がした。
つい何度も指を往復させてその感触を味わう。
「っ……ルコ、もういいから、手、離せ。」
軽く振り払われてはっとした。
欲望丸出しの行動に走っていたのを咎められて恥ずかしさが湧いてくる。
「失礼いたしました。」
「下がっていい。あと、必要な時はこっちから呼ぶから。」
視線を合わせずにユーリスが言う。
嘘だ。部屋を移ってから一度だって呼んでくれたことないじゃないか。
言外に会いたくたいと言われ、自分はまたやらかしてしまったのだと気付いた。
そりゃそうだ。
仕事を口実に呼ばれてもないのに押しかけて、手を撫で回すセクハラ行為まで働いたんだから。
「も、申し訳ございません。出過ぎた真似をしました。」
クンクン鼻を鳴らしてこちらを見ているノスニキの前を横切って、とぼとぼと出口に向かい部屋を後にする。
ノスニキがフォローしてくれるのはありがたいけどちょっと俺やり過ぎちゃってどうしようもないみたい。
ふらつく足取りで自室のあるフロアを歩いていると、まばらに歩く生徒の中にミレーユとジキスがいた。
「あ、ルコおはよ。ご飯食べた?俺らこれから食堂いくとこ。今日のメニュー何だった?」
ミレーユが話しかけてくる。
止まらず通り過ぎようとするジキスの首根っこをしっかり掴んで。
「ごめん、食事はしてないんだ。」
「じゃあ俺らと一緒に食べる?」
「私を一緒にするな!貴様が私が出るタイミングで勝手に付いてきただけだろうが!離せバカミレーユっ」
「朝は食べない方でさ。悪いけど。」
「そう。何か昨日より更に顔色悪いよ。休んだら?」
「ありがとう。そうする。」
「おい!私を無視するなってば!」
2人と別れて部屋に戻り、筆記用具やノートを取り出してまた廊下に出る。
何かしていないといられなかったので、週末の二日間は結局は暮れるまで書庫に行って整理作業を進め、夜はまた眠れるまでレポートを添削した。
週明け、まだ誰も教室に来ていないうちに2年のそれぞれの引き出しに書き上げた添削レポートをつっこむ。
自分の分は提出ボックスに先に入れた。
そのすぐ後、ジキスがいつものように本が詰まった大きな革鞄を下げて部屋に入って来た。
こちらを一瞥もせずに机に鞄を置き、中から自分の添削済みレポートを取り出して提出ボックスに近づく。
入れる時に、先に入っていた俺のレポートをじっと見た。
「少し見てもいいか?」
俺に向けての言葉だと最初わからなくて、黙っていたらジロリと睨まれた。
やっと意図に気づいて承諾すると、ジキスが自分のレポートと入れ違いに俺のレポートを取り出して読み始める。
心なしかちょっと緊張した。
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