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第3章 学園編

11 からかい

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「ジキス様はタイトルを聞いただけであの書庫のどこにあるのか分かるのですね。凄いです。」

「別に使ってれば何となく覚える。」

「育成科にいらした頃から使ってるんですか?」

「何で私が貴様ごときに質問されなきゃならないんだ。」

「貴方に個人的に興味がございまして。」

「なっ……」

口をあんぐり開けて振り向いたジキスの顔がランプに照らされる。
いや本当、からかい甲斐があるな。

「というのは冗談でございますが、あのように整理がされていない書庫は使っていて支障を感じるのではないかと思いまして、使われている方の意見を伺いたく。」

「それは……」

「あ、お待ち下さい。本をここの部屋に届けなくてはならないので。」

「は?何で私がっ……」

頼んできた教授の部屋の前に来たので、さっと入って本を届ける。
外に出ると、律儀にジキスは待っていた。

俺が言うのもおかしいけど、貴族としてそれでいいのか?

「お待たせして申し訳ありません。」

「貴様なんか待ってない。ただ……待ってない!」

またずんずん歩き出すジキス。
言い訳考えつかなかったですかよ。
面白くてつい笑みがこぼれる。

「書庫の何が不満なんだ。みんなで使ってるんだから場所や配置が変わるのは仕方ないだろう。」

「でも、テーマ別に分けたり、タイトルの順に並べてある方が使いやすいのではございませんか。使用ルールを決め、定期的に整理をするのです。」

「そんな事誰がいちいちするんだ。みんな忙しいのに何も得がない。今だって何となく元あった位置に戻すようになってるから蔵書に一通り目を通せば大体どこに何があるか分かるようにはなってる。十分だろう。」

「一通り目を通すだけで随分かかりませんか?読む必要の無い本もあるのでは。」

「それが学問だろう?必要があるか無いかは自分の目で判断するべきだ。ちゃんと何の本があるか自分で把握して探せて一人前だろう。ある本も読まない怠け者が得する方法なんぞ間違ってる。」

「しかし、それでは時間がかかり過ぎて新しい研究に手が回らないではないですか。過去をなぞるだけで満足する学問こそ怠惰では?」

「新しいことがしたいなら学問の時間でなく寝る時間を削ってやればいいだろう。主人の世話をする片手間でやってる奴が偉そうに。」

はぁ?ブラック思考過ぎない?
情報なんて時間が経てば増える一方なんだから整理して探しやすくして必要なとこだけ取り出して使うって当たり前じゃんか。
詰め込むほど偉いとか旧時代かよ。

あ、旧時代だった。

「では、私があの書庫を変えて見せます。劇的に状況良くなりますので。」

何せ歴史が証明してるからな。
前世の人類の知恵を見せてやる。

「ふん。やれるものならやってみろ。失敗したら笑ってやる。」

「結構ですよ。では、成功したらどうですか?」

「何でもしてやろう。」

ん?今何でもって言った?
本当つんけんしてる割に隙だらけで弄りやすいというか……。

ミレーユみたいにキスでもしてやろうかって気になる。
いや、しないけど、面白いからビビらすくらいはしとくか。
あんだけセクハラ嫌がってたから効果はてき面だろう。

ランプを持ってグッとギリギリまでジキスの顔に顔を寄せる

「では、私とイイコトいたしましょうか。」

態とニッと笑ってみせた。
みるみる青ざめる表情がちょっと面白い。

「ルコ!」

よく知った声に呼ばれて進行方向の暗くなっている廊下の先を見ると、ユーリスがこちらを見て立っていた。
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