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第3章 学園編
9 ルドルス
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それから暫く明日の授業アシスタントの準備などをしてから指導対象のリストを持って学園の厩舎に向かう。
厩舎は生徒の守護獣専用のスペースだ。
守護獣のサイズは大小さまざまだが、体が大きいと主人にいつも付き従うのは難しい。
だからそういう獣は普段訓練や役目がない時は厩舎で過ごしている。
アッシュタールなんかは典型的な厩舎で過ごす獣で、公爵があまり好まないのとアッシュタール自身も厩舎でのんびりするのが好きな性格だったので珍しく小型化していなかった。
一方ノスニキは普段は小型化して主人の側にいる守護獣の典型で、一般にはこっちのタイプの方が好まれる。
まあ、ノスニキの場合はフェンリルの姿を維持できないからなんだけど。
それはそうと大型の獣はだいたい小型化の技を覚えるのが基本になってくるんだけど、この厩舎に入れられているということはそれがまだ出来ていないということだ。
つまり、その守護獣を持つ生徒は目に見えた課題があると言える。
彼らを今後重点的にサポートして全体の底上げを図らなくてはいけないだろう。
それには守護獣の今の状態を見ておく必要がある。
手にした名簿と厩舎のネームプレートを付き合わせて自分の担当を確認していく。
今日のうちに終わらせないと、明日からは業務や勉強で時間が取れなくなりそうだ。
リストの情報だと支援対象全体で厩舎に入れられた獣は1割くらいだった。小型化できる大型獣が3割で、残りは厩舎がいらない中・小型だ。
厩舎には牛やカンガルー、サイや仔象などの守護獣がいた。
1個1個の獣を観察して気付いたところをメモしていく。
巨大な厩舎の中を碁盤の目に走る通路を縫いながら移動していると、授業中なのに生徒がいた。
厩舎で眠る熊の守護獣を眺めている。
ネクタイの色は育成科の2年みたいだけど、サボりか?
そう思いながら近づくとなんと、見覚えがあるゲームのキャラだった。
ちょうどさっき思い出していた育成科のアドバイスキャラだ。
あれ?でもネクタイは育成科だな。研究科の生徒じゃなかったっけ?
ゲーム中のネクタイの色が思い出せない。
名前、名前は……姉貴は鬼風紀って言ってたっけ。
怖いやつの印象はないけど。
「ご機嫌よう。貴方様の守護獣でいらっしゃいますか?」
名前が思い出せず、とりあえず声をかける。
こちらを見た鬼風紀君は、俺より少し背が高くて風紀委員長の設定にふさわしく短髪できちんとした身なりをしていた。鬼には見えない。
「いや、僕の守護獣はこっちだ。」
制服のポケットから可愛いハムスターが顔をのぞかせた。
あ、そうだったな。で、すげえでかくて素早く噛み技繰り出してくるラットに変身するんだ。思い出した。
こちらの戦意を奪う技が厄介だったような。
「素敵な守護獣ですね。」
「ああ。この世の救世主だよ。」
ん?どういう意味だ?
「なぁ、この子、この熊と守護獣バトルしたら勝てると思うか?」
唐突に質問される。
「いえ、流石に。」
確か風紀委員長とのバトルは序盤の方だ。チュートリアルのボスみたいな感じの役回り。熊の守護獣は中盤の不良キャラとのバトルで出てきたから、実力差がありすぎるだろう。
そこまで思い出して厩舎のネームプレートを見ると、覚えのある主人名。この熊、その不良の守護獣だ。
「一噛みくらいならどうだ?」
「それはできるのではないでしょうか。」
「そしたら勝負はメサイアの勝ちだな。」
風紀委員長のハムちゃんはメサイアというらしい。厨二か。
「何故ですか?」
「ネズミが運ぶ病気はたくさんあるだろう?メサイアはまだ十数種類の病気しか罹患させることができないが。」
こいつは自分の守護獣に何ちゅうもん覚えさせてるんですかね……。
「隙をついてバトル相手の主人に噛み付けば、尊い守護獣を人間という悪魔から解放する事ができる。だからもっと強い病気が使えるようにならなきゃな。」
そう言ってポケットの中のハムを撫でる少年。
おい待て攻撃対象そっちか。救世主って……いや深く考えるのはやめよう。
こいつこんな奴だったんだな。始めたばっかの頃何回か試しにアドバイスもらったけど、普通に風紀委員長ぽい堅物キャラだと思ってた。
「……それ、支援対象のリストだろう。お前1人の担当にしては多くないか?」
俺の手元を見た風紀委員長が聞いてくる。
「勉強になるので他の方の分を分けていただきました。」
「……なるほどな。」
「貴方様のこともご担当させていただいてるかもしれません。えっと、失礼ですがお名前は…。」
「ルドルス・ギルモア・バージ二スタスだ。」
バージ二スタス家って、クリスタス家と同じ公爵家じゃないか。
ユーリスのお母さんは今のバージニスタス公爵の妹だったからユーリスの外戚でもある。
「バージ二スタス公爵家の御令息とは知らず、気安くお声をかけてしまい申し訳ございませんでした。」
厩舎に気軽に立ち入ってるから男爵か子爵あたりかと思ってた。
まさかお助けキャラが公爵令息とは、BLゲームのライトさ恐ろしい。
「別に。あと、僕はリストに載っていない。在籍は育成科の2年だけど必要な単位は取り終わっていて研究科扱いだからな。」
なるほど、だから俺は研究科のキャラだって覚えてたのか。
「ますます失礼いたしました。」
「別に畏まらなくていい。学園ではみな等しく守護獣について学ぶ求道者だろう。まあ、俗世のつまらん理を持ち込む奴もいるが。」
ルドルスがちらりと俺の手元を見る。
「守護獣は尊い。人間は愚かだ。」
そう言ってルドルスはさっと立ち去ってしまった。
厩舎は生徒の守護獣専用のスペースだ。
守護獣のサイズは大小さまざまだが、体が大きいと主人にいつも付き従うのは難しい。
だからそういう獣は普段訓練や役目がない時は厩舎で過ごしている。
アッシュタールなんかは典型的な厩舎で過ごす獣で、公爵があまり好まないのとアッシュタール自身も厩舎でのんびりするのが好きな性格だったので珍しく小型化していなかった。
一方ノスニキは普段は小型化して主人の側にいる守護獣の典型で、一般にはこっちのタイプの方が好まれる。
まあ、ノスニキの場合はフェンリルの姿を維持できないからなんだけど。
それはそうと大型の獣はだいたい小型化の技を覚えるのが基本になってくるんだけど、この厩舎に入れられているということはそれがまだ出来ていないということだ。
つまり、その守護獣を持つ生徒は目に見えた課題があると言える。
彼らを今後重点的にサポートして全体の底上げを図らなくてはいけないだろう。
それには守護獣の今の状態を見ておく必要がある。
手にした名簿と厩舎のネームプレートを付き合わせて自分の担当を確認していく。
今日のうちに終わらせないと、明日からは業務や勉強で時間が取れなくなりそうだ。
リストの情報だと支援対象全体で厩舎に入れられた獣は1割くらいだった。小型化できる大型獣が3割で、残りは厩舎がいらない中・小型だ。
厩舎には牛やカンガルー、サイや仔象などの守護獣がいた。
1個1個の獣を観察して気付いたところをメモしていく。
巨大な厩舎の中を碁盤の目に走る通路を縫いながら移動していると、授業中なのに生徒がいた。
厩舎で眠る熊の守護獣を眺めている。
ネクタイの色は育成科の2年みたいだけど、サボりか?
そう思いながら近づくとなんと、見覚えがあるゲームのキャラだった。
ちょうどさっき思い出していた育成科のアドバイスキャラだ。
あれ?でもネクタイは育成科だな。研究科の生徒じゃなかったっけ?
ゲーム中のネクタイの色が思い出せない。
名前、名前は……姉貴は鬼風紀って言ってたっけ。
怖いやつの印象はないけど。
「ご機嫌よう。貴方様の守護獣でいらっしゃいますか?」
名前が思い出せず、とりあえず声をかける。
こちらを見た鬼風紀君は、俺より少し背が高くて風紀委員長の設定にふさわしく短髪できちんとした身なりをしていた。鬼には見えない。
「いや、僕の守護獣はこっちだ。」
制服のポケットから可愛いハムスターが顔をのぞかせた。
あ、そうだったな。で、すげえでかくて素早く噛み技繰り出してくるラットに変身するんだ。思い出した。
こちらの戦意を奪う技が厄介だったような。
「素敵な守護獣ですね。」
「ああ。この世の救世主だよ。」
ん?どういう意味だ?
「なぁ、この子、この熊と守護獣バトルしたら勝てると思うか?」
唐突に質問される。
「いえ、流石に。」
確か風紀委員長とのバトルは序盤の方だ。チュートリアルのボスみたいな感じの役回り。熊の守護獣は中盤の不良キャラとのバトルで出てきたから、実力差がありすぎるだろう。
そこまで思い出して厩舎のネームプレートを見ると、覚えのある主人名。この熊、その不良の守護獣だ。
「一噛みくらいならどうだ?」
「それはできるのではないでしょうか。」
「そしたら勝負はメサイアの勝ちだな。」
風紀委員長のハムちゃんはメサイアというらしい。厨二か。
「何故ですか?」
「ネズミが運ぶ病気はたくさんあるだろう?メサイアはまだ十数種類の病気しか罹患させることができないが。」
こいつは自分の守護獣に何ちゅうもん覚えさせてるんですかね……。
「隙をついてバトル相手の主人に噛み付けば、尊い守護獣を人間という悪魔から解放する事ができる。だからもっと強い病気が使えるようにならなきゃな。」
そう言ってポケットの中のハムを撫でる少年。
おい待て攻撃対象そっちか。救世主って……いや深く考えるのはやめよう。
こいつこんな奴だったんだな。始めたばっかの頃何回か試しにアドバイスもらったけど、普通に風紀委員長ぽい堅物キャラだと思ってた。
「……それ、支援対象のリストだろう。お前1人の担当にしては多くないか?」
俺の手元を見た風紀委員長が聞いてくる。
「勉強になるので他の方の分を分けていただきました。」
「……なるほどな。」
「貴方様のこともご担当させていただいてるかもしれません。えっと、失礼ですがお名前は…。」
「ルドルス・ギルモア・バージ二スタスだ。」
バージ二スタス家って、クリスタス家と同じ公爵家じゃないか。
ユーリスのお母さんは今のバージニスタス公爵の妹だったからユーリスの外戚でもある。
「バージ二スタス公爵家の御令息とは知らず、気安くお声をかけてしまい申し訳ございませんでした。」
厩舎に気軽に立ち入ってるから男爵か子爵あたりかと思ってた。
まさかお助けキャラが公爵令息とは、BLゲームのライトさ恐ろしい。
「別に。あと、僕はリストに載っていない。在籍は育成科の2年だけど必要な単位は取り終わっていて研究科扱いだからな。」
なるほど、だから俺は研究科のキャラだって覚えてたのか。
「ますます失礼いたしました。」
「別に畏まらなくていい。学園ではみな等しく守護獣について学ぶ求道者だろう。まあ、俗世のつまらん理を持ち込む奴もいるが。」
ルドルスがちらりと俺の手元を見る。
「守護獣は尊い。人間は愚かだ。」
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