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第3章 学園編
7 ジキスとミレーユ
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2人で他愛のない事を話しながら教室に入ると、各自のデスクが並べられた光景が広がる。
どちらかといえば学校の教室というよりは職員室みたいだ。
研究科に授業というのはあまり無くて、自主的な研鑽と研究が求められる。いくつかの必修講義以外は教授にくっついて育成科の授業や守護獣育成のアシスタントをしたり、教授の研究を手伝ったり、自分の論文を書いたりするのが主な日課になるようだ。
室内の掲示板に貼られた座席表を確認して自分の席を確かめる。
席は4人ごとのブロックになっていて、ミレーユと俺は隣のブロックだった。
「わあ、ご近所さんだ。課題やるの手伝ってねー!」
無邪気に笑うミレーユにつられて笑顔で頷いて席に向かう。
俺の隣の席にはもう男子生徒が座っていた。
背筋を伸ばした揺るぎない姿勢でペンを走らせる後ろ姿が目に入る。
確か同じ1年生だったはず。名前はジキス・ガーデンシアだ。入学2日目だと言うのにデスクには所狭しと分厚い書物やノートが積まれていて、そのどれにも鍵が取り付けられていた。
彼の足元にはそれらを入れてきたであろう大きな革鞄が打ち捨てられている。
「あの、ガーデンシア様、おはようございます。」
挨拶のため横から話しかける。
反応は無く、きっちり七三分けされたブルネットの頭がこちらを向く気配もない。
「もー、ジーちゃん!声掛けられてるよ!耳が遠くて聞こえないのぉ?」
隣のブロックからミレーユが愉快そうにヤジを飛ばす。
おいやめろ。どう考えてもこの手のタイプにしていい物言いじゃないだろ。
案の定、ゆらりとミレーユと俺の方向を向いたジキスの顔には嫌悪が露わだった。
「頭の悪いあだ名をつけるなクソ野朗。私が公爵の権威を笠に着て不正入学した卑しい平民の相手をするわけがないだろうが。」
あ、うん。凄く分かりやすい。
実際いくら俺の実績があっても公爵の推薦がなければ入学は出来なかっただろう。
貴族階級の下級民差別は、別にジキスに限ったことじゃない。
けど、ミレーユをクソ野朗呼ばわりはちょっとどうなんだろう。見過ごしていいものか。
ちらりとミレーユを見やる。
「クソ野朗って酷いなぁ。昨日チューした仲なのに。」
ミレーユが言うとジキスの顔がさっと赤くなった。
「違っあれは貴様が勝手にっ……!っ……というかここで言うなっ!」
「だって、ツンツンしてて可愛いから。」
あ、うん。これはクソ野朗だわ。
「っっ!貴様との同室は解消してもらうよう申請したからなっ!今更謝っても許さないからなっ!」
「おい、1年、静かにしろ!ここが育成科3年の教室だと思ってるなら出て行け。」
少し離れたブロックにある2年の席から叱責が飛んでくる。
「大変申し訳ございません。」
部屋全体に向けて深々頭を下げておく。
別に俺はうるさくしてないけど、きっかけを作ったのは俺だし謝るのはユーリスの尻拭いで慣れっこだ。
「し、失礼しました!」
ジキスも慌てて立ち謝った後キっとこちらを睨みつけて席に座った。
ミレーユは悪びれる様子もなくニヤニヤ笑いながらジキスを眺めている。
庇ってくれたのかと思ったけど、単にジキスをからかいたいだけに見えるので礼を言うのはやめた。
この席、前途多難なような……。
間も無く教授がやってきて、今年度のアシスタント割り振りを決める打ち合わせが始まった。
どちらかといえば学校の教室というよりは職員室みたいだ。
研究科に授業というのはあまり無くて、自主的な研鑽と研究が求められる。いくつかの必修講義以外は教授にくっついて育成科の授業や守護獣育成のアシスタントをしたり、教授の研究を手伝ったり、自分の論文を書いたりするのが主な日課になるようだ。
室内の掲示板に貼られた座席表を確認して自分の席を確かめる。
席は4人ごとのブロックになっていて、ミレーユと俺は隣のブロックだった。
「わあ、ご近所さんだ。課題やるの手伝ってねー!」
無邪気に笑うミレーユにつられて笑顔で頷いて席に向かう。
俺の隣の席にはもう男子生徒が座っていた。
背筋を伸ばした揺るぎない姿勢でペンを走らせる後ろ姿が目に入る。
確か同じ1年生だったはず。名前はジキス・ガーデンシアだ。入学2日目だと言うのにデスクには所狭しと分厚い書物やノートが積まれていて、そのどれにも鍵が取り付けられていた。
彼の足元にはそれらを入れてきたであろう大きな革鞄が打ち捨てられている。
「あの、ガーデンシア様、おはようございます。」
挨拶のため横から話しかける。
反応は無く、きっちり七三分けされたブルネットの頭がこちらを向く気配もない。
「もー、ジーちゃん!声掛けられてるよ!耳が遠くて聞こえないのぉ?」
隣のブロックからミレーユが愉快そうにヤジを飛ばす。
おいやめろ。どう考えてもこの手のタイプにしていい物言いじゃないだろ。
案の定、ゆらりとミレーユと俺の方向を向いたジキスの顔には嫌悪が露わだった。
「頭の悪いあだ名をつけるなクソ野朗。私が公爵の権威を笠に着て不正入学した卑しい平民の相手をするわけがないだろうが。」
あ、うん。凄く分かりやすい。
実際いくら俺の実績があっても公爵の推薦がなければ入学は出来なかっただろう。
貴族階級の下級民差別は、別にジキスに限ったことじゃない。
けど、ミレーユをクソ野朗呼ばわりはちょっとどうなんだろう。見過ごしていいものか。
ちらりとミレーユを見やる。
「クソ野朗って酷いなぁ。昨日チューした仲なのに。」
ミレーユが言うとジキスの顔がさっと赤くなった。
「違っあれは貴様が勝手にっ……!っ……というかここで言うなっ!」
「だって、ツンツンしてて可愛いから。」
あ、うん。これはクソ野朗だわ。
「っっ!貴様との同室は解消してもらうよう申請したからなっ!今更謝っても許さないからなっ!」
「おい、1年、静かにしろ!ここが育成科3年の教室だと思ってるなら出て行け。」
少し離れたブロックにある2年の席から叱責が飛んでくる。
「大変申し訳ございません。」
部屋全体に向けて深々頭を下げておく。
別に俺はうるさくしてないけど、きっかけを作ったのは俺だし謝るのはユーリスの尻拭いで慣れっこだ。
「し、失礼しました!」
ジキスも慌てて立ち謝った後キっとこちらを睨みつけて席に座った。
ミレーユは悪びれる様子もなくニヤニヤ笑いながらジキスを眺めている。
庇ってくれたのかと思ったけど、単にジキスをからかいたいだけに見えるので礼を言うのはやめた。
この席、前途多難なような……。
間も無く教授がやってきて、今年度のアシスタント割り振りを決める打ち合わせが始まった。
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