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第3章 学園編

6 研究科

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眩しさと鳥の声で意識がふと戻る。

……眩しい?
少し体を起こすと俺の腰に乗っていた腕がボスっとマットレスに落ちた。
横を見れば起きる気配の無いユーリスの寝顔がカーテンから入る朝の光で浮かび上がる。

嘘だろ、あのままユーリスの部屋で寝ちゃうとか。今何時だ?
垂れてくる中のものをシーツに落とさないように押さえながらベッドを降りると、計ったかのように鐘楼から6時を告げる鐘が鳴った。

こんな時間まで寝てたなんて。
浴室に向かう前にまだベッドで寝ているユーリスをつい恨めしげに睨む。
いつもと違うシチュエーションに気分が乗ったんだが何だか知らないが、昨日のはヤり過ぎだ。
自制してくれたのは最初に頼んだ時だけで、後はひたすら盛られて途中から記憶がない。多分意識がトんだまま寝て今に至るんだと思う。

ここが屋敷なら職務怠慢と言われても仕方ないし、下手したら一緒に寝ている所を誰かに見られていたかもしれない。
ここだって、昨日朝は来ないように学園の従者に告げていなかったらと思うと背筋が冷える。

ユーリスに流されていたらダメだ。気を引き締めていかないと。
冷たい水で体や中を濯いで喝を入れた後、ユーリスの体も拭くためにお湯の用意にとりかかった。



育成科の教室までユーリスとノスニキを見送った後、自分は研究科のある別棟に移動する。

育成科は守護獣を持つ貴族の子弟が17歳から2年間通う専門学校みたいなものだ。大抵の生徒は家庭教師の個別指導や私塾で一般教養の学習は済ませてるので、学園では主に守護獣の強化訓練について学んで実践する。

研究科は、通常育成科を修了した後に更に守護獣について学ぶために在籍する学科だ。オリエンテーションの話し振りだと、学校というよりは大学のゼミや研究室に近い印象だった。
いくつもクラスがある育成科と比べても研究科の生徒は全体で20人程度しかいない。進学基準が厳しいってのもあるけど、大抵の貴族の子弟は育成科を卒業したら宮廷の役職に就くか、国軍に入るか、親の所領経営を手伝うのが一般的だからあまり守護獣の専門家としてのキャリアは選ばないんだろう。
研究科も2年制だけど、専門家になるなら卒業後も学園に在籍を続けて目指す感じだ。

「おっはよーー!」

廊下を歩いていると背後から声を掛けられた。
振り返ると、首に細い蛇が巻きついた男が人懐こそうな笑顔でこちらを見ている。
研究科の生徒だ。昨日のオリエンテーションの自己紹介では俺と同じ1年って名乗っていた。
長身だけど少し線が細くて全体的に色素が薄い体は、顔つきも手伝って軽薄な印象を受ける。
確か名前は……

「君ルコだっけ?俺は覚えてる?ミレーユ・タルマンだよ。こっちの超美人さんはレイラちゃんさ。よろしくねー。」

ミレーユが自分と守護獣の名を告げてくる。
こっちは覚えられていたらしい。育成科を飛ばしていきなり研究科に入ったのなんて俺くらいだからか悪目立ちしているのは何となく昨日感じた。

「はい。ルコ・ブライトンと申します。よろしくお願いいたします。」

何とも軽そうなノリに少し面食らいながら返す。

「同学年なんだから敬語とかいいよいいよールコ。」

「しかし、私は平民ですので。」

「俺も平民だよ!!お揃い!」

いきなりガシッと肩を組まれる。
いや、距離感おかしいだろ。首に巻きついた蛇も頬にスリスリしてくる。

「なのに守護獣がいるんですか?」

初めて見る蛇の守護獣に、手を伸ばして頭の横を指先で掻いてやる。
気持ち良さそうにレイラが舌をチロチロ動かした。

「そうだよ!俺の母親は没落した貴族で、商人の父親に金で買われたんだよねぇ。半分貴族の血が入ってるからレイラが守護獣になってくれたのさ。ラッキー。」

そう言ってミレーユはレイラの頭にチュッチュとキスをした。
こいつ、今ノリに似合わなすぎる重い出自をさらっと言ったぞ。

「はぁ、レイラちゃんは本当に可愛いでちゅねー!」

レイラに頬擦りをするミレーユ。

「可愛がってるんだな。」

本人が不要というので、俺も普通に接する事にする。
守護獣と契約できるのはこのゲームの主人公みたいな一部の例外を除けば貴族と王族だけなので、俺にとっては学園中が目上みたいなものだ。でも流石にそれでずっと2年間過ごすのは気が休まらないと思っていた。ミレーユみたいな存在に出会えたのは正直ありがたい。

「まあね!大好きな俺の分身だから!ルコもレイラを可愛がってくれてありがとぉ!」

ミレーユが屈託のない顔で笑う。
よかった。悪いやつじゃなさそうだ。
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