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第2章 入学前編

19 入学前

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いつものように日の出と一緒に自分のベッドで目が覚めた。

今日は明日の入学式に備えてユーリスが入寮する日だ。

結局、旅行から帰った今も俺はユーリスの執事を続けている。
守護獣研究者に弟子入りする話を断ったら、公爵にはやっぱりかという顔をされた。
ユーリスが反対して俺が折れたと思ったらしい。

命を救われて絆されたのは間違いないけど、進化したノスニキの事を色々調査できて守護獣の研究は充実している。

身支度を整えて朝の業務にとりかかる。
明日からはユーリスの世話やノスニキの訓練が平日は無くなるのでもう少しゆっくり寝られるようになるはず。
ありがたくもあり、少し寂しくも感じた。
本当少しだけ。
どうせ週末になれば戻ってくるし。

厨房で料理人に朝ごはんとお弁当の献立について打ち合わせしをした後、寮に持ち込む荷物の再点検をする。
本人は公爵がアッシュタールに乗せて連れて行く事になっているので、この荷物は俺が送り届けて向こうの寮の従業員に引き渡す予定だ。
必要なものが揃っていることを確認して、下男に馬車に積むように指示した。

作業がひと段落したらユーリスの朝食の時間になったので、起こしに寝室に向かう。
扉を開けると床で寝ていたノスニキが起き上がってこちらに来た。
鼻を突き出してきたので頭をわしわしと撫でる。

今のノスニキはあのフェンリルの巨体ではなく、黒銀の毛並みをした狼犬の姿をしている。
色以外はゲーム序盤の姿の通りだ。
調べた結果フェンリルの姿でいるともの凄い力を消耗するらしく、あの時以来数える程しかなっていない。どうも完全にフェンリル に進化したわけじゃないみたいだ。今後は完全に進化するように育成していく必要があると分かった。

まあ、流石に序盤であんな究極進化級の守護獣をライバルキャラが出して来たら単なる負けイベにしかならないし、これくらいのハンデはあってしかるべきだと思う。
終盤は最終ボスキャラより強い中ボスになる懸念はあるけど。

あとは、ユーリスが主人公に情けない態度を取らないと嬉しい。
俺に対しては相変わらずワガママ放題やりたい放題のユーリスでも、他の使用人の評判では最近は賢くなったとか優しくなったとかいう声も聞こえてくるから、ひょっとしたらもう少しましなライバルになってくれるかもしれない。

……というかなんでその賢さや優しさを1番身近にいる俺にカケラも発揮しないんでしょうか。
納得がいかない。

「ユーリス様、起きてください。お時間です。」

声をかけてもピクリともしない。
肩に手を置いて揺すろうとしたら、伸ばした手をいきなり掴まれて引っ張られた。

バランスを崩してそのままベッドに引きずり込まれる。

「起きていたんですか。」

俺に覆いかぶさって楽しそうに笑っているユーリスを呆れたように見上げた。

「うん。今日が楽しみで起きた。」

あっそ。まああんたは新生活で楽しいだろうよ。
俺も別に楽になっていいし。

って、

「おやめください。なんで脱がせてるんですか。」

勝手に人のジャケットのボタンを外してスカーフを解き出すユーリスを慌てて押し返す。

朝立ちでもしてんのか。
そろそろ朝食が運ばれてくるのに、人に見られたら困るようなことはやめろ。

「朝から盛らないでください。」

「ん?違うよ。着替え手伝ってあげてるだけ。そっちこそ服脱がせただけで期待してるのか?僕はそっちでもいいけど。」

「着替え?」

うざ絡みは無視で聞き捨てならないところを繰り返す。

「そ。ルコも制服着ないとな。」

「せーふく?」

「あ、聞いてなかった?ルコも明日から王立学園の生徒だよ?」
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