帝国再興記

第一章

第二幕-4別視点

汚れきったぼろ布を被り、少女は路地に座り込んでいた。もう一週は食べ物にありつけていない。最後に食べた物が残飯か近場に生えた雑草かさえ、彼女は覚えていなかった。両親を戦争で亡くし、彼女は１人で必死に首都で生きてきたが限界を感じていた。城の近くでは若い非力の女は体を売るしか稼げる手段が無かったが、それだけはしたくなかった。自分を大事にしなさいという母の言葉が頭に響くからであった。彼女には人の情欲が目で見えた。だからこそ、その言葉が忘れられないのである。だが、この状況では餓死する可能性が高い。下層スラムの食料源の残飯も、この頃柄の悪い集団に独占されている。最後の手段に出ることとを彼女は覚悟した。しかし問題があった。下層スラムの人間が上層スラムに入るのは難しく、そこでそういった仕事をするのは更に危険だった。その手の職は競争が激しいため、無法状態のスラムでは縄張りを破ると命が危なかった。下層スラムで働いても稼ぎはないに等しい。ならばと彼女は大通りの近くの路地で座り込んだ。時々、通りを騎士がどこかへ向けて歩いて行く事を彼女は知っていた。それを待つしかすべが無かった。そして、その時は２日後に来た。悪魔の女騎士が１人とカエルの執事を連れた仕立ての良い服の魔人の男が通りを歩いてきたのである。貴族と確信した少女は、買われるなら出来るだけ優しい人物に買われたいと考え、３人を注視した。その３人は下層スラムの住人に警戒したのか密集した。男が女騎士に近づいた時、魔人の男から一瞬情欲が見えたが、すぐに消えた。彼女は男が理性のしっかりした人物であると確信した。今しかないと彼女は通りに飛び出し、盛大に転んだ。
「なっ、何者ですか！私は姉さんほど剣は上手くないから殺しちゃうかもしれませんよ！」
殺すという言葉は恐ろしかったが餓死するゆっくりとした恐怖よりはましだった。とにかく何とかしよう彼女は立ち上がり口を開けた。
「私、ただお願いをしに来ただけです」
買ってもらうにはしっかり顔を見せなければと考えた彼女はぼろ布を顔からずらし言った。
「貴族様、私を買って下さい。」