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第3話 僕と少女の自己紹介

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 少女とともに森を歩く。ともにという言い方をしたが正確にはローブを羽織った少女の後ろ姿をついていっているだけだ。聞きたいことが多くて、そわそわしてしまう。

「おい。そなた儂に聞きたいことがあるのではないか?」
「たくさんあります」
「そうか。儂もそなたに聞きたいことがある。だが儂は大人じゃ。その後におまえの聞きたいことを先に聞いてやろう」

 それはありがたい。だがこの少女が大人とはどういう意味だろうか。どう見ても僕より背が引くし、歩幅も狭い。身体的特徴は明らかに僕よりも子どもっぽい。そんな特徴を持つ子が自分のことを大人だと主張していると余計子どもっぽく見えてしまう。

「ありがとうございます。ではまずあなたのことを聞きたいです」
「ふむ、良かろう。ただ相手のことを尋ねるときは自分から名乗るべきじゃ」
「…はい。僕は神来社仁《からいと じん》です。苗字が神来社《からいと》、名前が仁《じん》です。…体を動かすことが得意な高校生です」
「ふふ、それでよい。よくやった。良い名じゃ。仁」
「…」

 目の前の少女に注意を受けた僕は渋々自己紹介した。それを聞いた少女は軽く笑うと、今度は僕を気軽に褒めた。まるで親戚の子どものようである。

 この少女は僕を子ども扱いしているようだ。だが僕は先程も言ったように高校生であるため、複雑な気分である。だがその感想に反して、僕は脳裏に父を思い浮かべた。なぜならそれは父の褒め方と全く一緒だったからである。

「どうしたのじゃ?仁」
「…いえ、なんでも。ただそんな風に注意されたり、褒められるのは久しぶりだったので驚いただけです」
「ふふ。そうかそうか。それで儂のことじゃな」

 きっと僕を子ども扱いできて嬉しかったのだろう。そう言って彼女は機嫌を良くした。そして足を止め、ローブから頭を出し、僕に振り向いてこう言った。

「儂は神である!名前はない!神である故年齢も意味はない」
「…」

 思わず僕は黙ってしまった。そこにいたのは肌が褐色で色素が抜けたような白髪で生意気そうな表情をした少女であった。胸を張り、僕を見上げており、とても偉そうな少女。あのとき最初に見た時に見えたオーラのようなものも今はない。

「ふむ。さてはそなた信じていないな」
「それはまぁ、そうですね」
「なんだ。含むものがあるようなものいいじゃな。怒らぬから思ったことを言ってみよ」
「怒りませんか?」
「怒らぬ。儂の器はでかいからの」
「本当に怒りませんか?」
「怒らぬ。儂の懐は大きいのじゃ」
「…本当に?」
「くどい!」

 怒られてしまった。怒らないって言ったのに…。でも本人がそういうなら言うしかないだろう。信じよう。僕はまた怒られるための心構えをし、深呼吸した。そして全てぶちまけることにした。

「じゃあ言いますけど…。あなたは…褐色で白髪で生意気そうな少女にしか見えません!特に胸を張り、僕を見上げて、偉そうにしているあたりが余計に子どもっぽいです!最初に会ったときにあったオーラみたいなものも今はないですし」

 僕は一呼吸で言い切った。僕は恐る恐る少女の顔を覗き込む。僕が言ったことは本音であるが、失礼とも言える内容である。少女はきっときつい表情をしているに違いない。僕はそう思った。

 だが僕の言葉を受けて、僕の考えてを裏切って、目の前の少女は表情を変えることなく、当たり前のように言った。

「…ふむ。そうじゃろうな」

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