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第二章 小さな白竜との出会い

第33話 エルザのお知らせ

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「なぁなぁ中はどんな感じなんだ?」
「すごい所・・・まさに楽園」
「私もここに住むわ・・・」

 妖精の住処が実装され、精霊馬に消えていったユキナとウェンディ。
 俺がいくら手を触れても中に入ることはできないので、まさに言葉通り妖精限定の住処のようだ。

「気になるな・・・俺の精霊馬なのに中を確認できないもどかしさ・・・それよりも二人共ちゃんと出てこいよ。怖いよ」
 妖精の住処の様子を話す2人は首だけ・・・馬から首が生えている状態だ。

 呆けた顔の美少女と妖精が首だけで喋っているのはホラー映画のようだ。

「さてと、残りはメッセージの確認だな」

「ユキナ。このメッセージを送ってくるエルザっていう人の悪口は絶対に言っちゃ駄目よ」
「なんで?」
「エルザは今もどこかで私たちを見張ってるの。それですぐに不機嫌になるの」
「怖いよウェンディお姉ちゃん・・・レイスか亡霊なの」
「しっ!黙りなさい!怒られるわよ」
「ムグムグ」

 そんなに警戒しないでも大丈夫だと思うけどな。
 ウェンディの手がユキナの口を押さえている様子を見ながらメッセージの表示をタッチする。

〈皆さんこんにちは!エルザです。ワタル様が異世界ライフを楽しまれているようで何よりです〉

 あれ?いつもと感じが違うな。機嫌がいいのかなエルザさん。

〈さて、まさかこんなに早く暴走モードを使われるとは思いませんでした。あくまで保険的な意味で実装を許可したのですが・・・ワタルさんはのんびりしたいのか、冒険したいのかどちらなのでしょうか?〉

 俺だって好きで使ったわけじゃないぞ。他に選択肢がなかったのです。

〈暴走モードが当社比較より性能が強化されていることで、ワタル様にご迷惑をおかけして申し訳ございません。概ね原因は判明しておりますが、現在調査中です〉

 何が!?どこが元の性能より強化されているの?もっとマイルドな仕様だったの?

〈妖精の住処ですが、これもいつの間にか実装されており、驚きを隠せません。こちらも概ね犯人に見当がついておりますが、現在調査中です。重ねてお詫びいたします〉

 これも!?一体御社はユーザーの事を考えて仕事しているのだろうか?カスタマーセンターの連絡先はどこだ!!

〈最後に私事ですが、ご心配をお掛けしております彼氏との仲ですが、何故かトントン拍子に不仲の原因が解消され、仲直りの旅行に行く運びになりました。これも日頃の仕事を真面目にやっていた賜物だと思います〉

「それは良かった・・・だから機嫌がいいんだな」
「この人自分で自分を評価しているわ」
「色々大変なんだねエルザさん」

〈最後に上司から伝言を言付かっております。「婚活しろといったが、幼女と契約するとはどうかと思うぞ。俺はそんな風に育てた覚えはない。死んだ母さんもあの世で心配しているはずだ。俺は関係各所に謝っておく」だそうです。

 これから暑くなる季節となります。どうぞご自愛ください。

 追伸 いつの間にかレイスや亡霊のようにあなたの前に現れるかもしれません。 
                エルザ〉

「だーーー!!!断じて違うぞ!親父は誤解している!!俺はロリコンでは無い!苦情を申し立てる!!みんな直通電話を探してくれ!」

「ほらね!ほらね!絶対にどこかで見てるよエルザ!来るよ!きっと来るよー!!」

「ヒッ!!ホ、ホーリーブレス効くかな・・・怖いよ・・・」

 豪華でオシャレな貴族馬車の中は、パニック状態となりカオスの様相を呈していた。


「・・・これは、大変だわ」
 そんな様子を馬車の影からそっと伺っている一つの影があることにワタル達は気づくはずもなかった。

 ・・・・・・・・・

 ビーガーデン山脈 ホワイトパレス城

 城を一望できるテラスでは、厳しい顔でヒュウガ・ホワイトが森の方を見てる。
 端正な顔立ちの目にはくまができており、若干やつれた様子に城の者が心配していた。

「陛下・・・お気持ちは分かりますが少しお休みになられては・・・」
「ああ、宰相か・・・心配かけて申し訳ないな・・・やはりユキナは人族の前に出すべきではなかった・・・」

 ヒュウガが毎日眠れていないのを知っている白竜族の宰相は心配そうに尋ねる。

「フブキ様は、森の奥へ捜索の足を伸ばすようです」
「そうか・・・皆には迷惑をかける・・・」
「何を仰っているのです。姫様は白竜族の宝。捜索に全力をかけるのは当たり前です」
「ありがとう・・・」

 本当は捜索に加わりたいヒュウガは、もどかしさに唇を噛んだ。

「へ、陛下!!申し上げます!」
「どうした!ユキナが見つかったのか!」
「い、いえ。お客様がお見えになっております」
「客?・・・今は国の一大事だ。引き取ってもらえ」
「そ、それが・・・」

 突然、衛兵が客の来訪を告げるが今のヒュウガに対応する余裕がない。
 引き下がろうとしない衛兵に苛立ちを隠せない。

「それがなんだ?私に客人と仲良く茶でも飲めと言うのか?」
「い、いえ。お客様は勇者ガンテツ様と聖女サツキ様なのです」
「なんだって!」

 勇者ガンテツ様は父上が契りを結んだ英雄だ。白竜族の恩人を無下にするわけにはいかない。その奥方のサツキ様は白竜族の神とも呼ばれる存在。

「分かった!すぐに向かう。お前たちは歓待の準備を」
「はっ!!」

 こんな時にどうしたのだというのだ。ヒュウガは不安にかられながら応接室へ向かった。



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