23 / 84
第二章 小さな白竜との出会い
第20話 街道の木こり小屋
しおりを挟む
ゴトゴト
一台の馬車が森の中の街道を進んでいる。
アトランティスでは一般的などこにでも居るような馬車。
ただ、よく見ると御者台に乗っている青年は元は上質であったと思われるシャツとズボンを身にまとい、時折何もない空間に話しかけているので不審に思う人がいるかもしれない。
「やっと精霊馬車の本来の使い方ができるな」
「ただ移動してるだけだけどね」
妖魔の森を彷徨い、ようやく見えた街道。俺とウェンディは街道に出ると早速、馬と荷台を呼び出し乗り込んだ。
ウェンディはすぐに街道に出られるようなことを言っていたけど、結局二週間くらい森の中を彷徨ってしまった。妖精基準のすぐはあてにならない。
精霊馬車は、特に操縦技術を必要とせず、荷台に繋がっている馬(精霊)に俺の意思を伝えるだけで動いてくれる。
地球では、トラックを運転して配送の仕事をしていたけれど、流石に馬車を扱ったことはない俺にとってありがたいことだ。
「なぁこの街道はミルフィーユ王国に続いているんだよな」
「ミルフィーユ王国まではだいぶ距離があるけれど、繋がっているはずよ。森を出れば人族がいるから聞いてみればいいわ」
ウェンディの話によれば、この街道は妖魔の森の外縁部を通っている。流石に森を突っ切る道を作ることは危険なので、比較的安全な外側に道を作ったそうだ。
すぐに森を抜けて村に行けると言っているが妖精基準なので安心できない。
また、二週間くらいかかったらどうしよう。
「俺達、森の中を突っ切ってきたんだよな。しかも、野宿までしていたけど・・・かなり危険だったんじゃ」
「風の精霊エアロ様の眷属の私が付いていたから、安全だったでしょ?」
「どこが安全だっただ!?何度も死にかけたじゃねーか」
「それは、ワタルが変な詠唱するわ、勝手にナッシーウッドに突っ込むわ、全部自分のせいでしょ!」
ワーワーギャーギャー
じゃれ合うことしばし
精霊馬車の扱いにも慣れてきた頃(特に何もしてないが)、街道の脇に一軒の小屋が見えてきた。
「みろ!ウェンディ!小屋だぞ!」
「人がいるかもしれないわね」
地球で言う所のログハウスのような作りの小屋。この世界に来て初めて人がいる痕跡を見つけた俺はテンションが上がる。
洗濯物など人が生活している様子がないので、誰も住んでいないのかもしれない。
誰かいたら情報収集かな?
とりあえず確かめてみるか。
小屋の前に馬車を停め、馬に待っているように伝えた。特に繋げる必要もないので便利である。
「ご、こめんくださ~い。どなたかいらっしゃいませんか?」
なんだか飛び込み営業を思い出すな。
小屋の扉の前で声をかけたが、中には誰も居ないようだ。
「ウェンディ誰もいないみたい・・・」
仕方なく帰ろうと俺がウェンディの方を振り返ると
「ギャァァァ!ウェンディが熊になった!!!」
腰を抜かして後退る俺の前に熊がいた。
「なんだ~?強盗か~?」
「熊がしゃべったーー!ウェンディが突然変異したのか!?」
ウェンディはやっぱりおもしろ妖精だったのか?
ゲシッ
「誰が熊よ!落ち着きなさい!人族よ」
「ん?ウェンディ?・・・あれ?」
俺の頭に蹴りを入れているウェンディが指差す方を見ると、熊のような男が立っていた。
もじゃもじゃのヒゲが半分ほど顔をおおい、獣の毛皮の服を着ている。
右手には大きな斧を持ち、こちらを訝しげに睨んでいる男はたしかに人のようだ。
身長は二メートルほどなので、熊が斧を持って歩いていると表現するのがピッタリ来る。
「えっと、どちら様ですか?」
「それはこっちのセリフじゃ若いの。そんな物騒な武器を持って何をやっている?」
「あっ・・・これは違うんです。けして怪しい者のじゃなくてですね」
そう俺は万が一のことを考え、手にはエクスカリ棒ならぬトゲバットを持っていた。
ここの住人からしたら強盗だ。急いでトゲバットをしまう。
「あはは・・・なんだか見解の相違があったようですみません。私は七星ワタルと言いまして、馬車で旅をしているものです」
熊男は、精霊馬車を一瞥する。
「確かに立派な馬車を持っているようだが、行商人か?」
「まぁそんなようなものです。この小屋で休ませてもらおうと」
「どこに行くのか知らんが、一人で妖魔の森を抜けていくつもりなのか?」
「い、いえ二人で・・・まぁそうです」
この熊男がウェンディを見えているかわからない。妖精が見える人は稀だとウェンディが言っていたので、積極的に教えるのはやめておいたほうが良いだろう。
「あの、この小屋はなんですか?」
「ここは木こり小屋だ。俺達木こりのための小屋だ。めったに使わないがな」
「あなたはここに住んでいるんですか?」
「まさか。仕事がある時しか使わんよ」
「そうですか」
ここの住人ではないようだ。
「とりあえず中に入れ。茶でも出してやる」
「あ、ありがとうございます・・・」
まさか食われたりしないよな。俺は熊男の巣穴・・・木こり小屋に足を踏み入れた。
一台の馬車が森の中の街道を進んでいる。
アトランティスでは一般的などこにでも居るような馬車。
ただ、よく見ると御者台に乗っている青年は元は上質であったと思われるシャツとズボンを身にまとい、時折何もない空間に話しかけているので不審に思う人がいるかもしれない。
「やっと精霊馬車の本来の使い方ができるな」
「ただ移動してるだけだけどね」
妖魔の森を彷徨い、ようやく見えた街道。俺とウェンディは街道に出ると早速、馬と荷台を呼び出し乗り込んだ。
ウェンディはすぐに街道に出られるようなことを言っていたけど、結局二週間くらい森の中を彷徨ってしまった。妖精基準のすぐはあてにならない。
精霊馬車は、特に操縦技術を必要とせず、荷台に繋がっている馬(精霊)に俺の意思を伝えるだけで動いてくれる。
地球では、トラックを運転して配送の仕事をしていたけれど、流石に馬車を扱ったことはない俺にとってありがたいことだ。
「なぁこの街道はミルフィーユ王国に続いているんだよな」
「ミルフィーユ王国まではだいぶ距離があるけれど、繋がっているはずよ。森を出れば人族がいるから聞いてみればいいわ」
ウェンディの話によれば、この街道は妖魔の森の外縁部を通っている。流石に森を突っ切る道を作ることは危険なので、比較的安全な外側に道を作ったそうだ。
すぐに森を抜けて村に行けると言っているが妖精基準なので安心できない。
また、二週間くらいかかったらどうしよう。
「俺達、森の中を突っ切ってきたんだよな。しかも、野宿までしていたけど・・・かなり危険だったんじゃ」
「風の精霊エアロ様の眷属の私が付いていたから、安全だったでしょ?」
「どこが安全だっただ!?何度も死にかけたじゃねーか」
「それは、ワタルが変な詠唱するわ、勝手にナッシーウッドに突っ込むわ、全部自分のせいでしょ!」
ワーワーギャーギャー
じゃれ合うことしばし
精霊馬車の扱いにも慣れてきた頃(特に何もしてないが)、街道の脇に一軒の小屋が見えてきた。
「みろ!ウェンディ!小屋だぞ!」
「人がいるかもしれないわね」
地球で言う所のログハウスのような作りの小屋。この世界に来て初めて人がいる痕跡を見つけた俺はテンションが上がる。
洗濯物など人が生活している様子がないので、誰も住んでいないのかもしれない。
誰かいたら情報収集かな?
とりあえず確かめてみるか。
小屋の前に馬車を停め、馬に待っているように伝えた。特に繋げる必要もないので便利である。
「ご、こめんくださ~い。どなたかいらっしゃいませんか?」
なんだか飛び込み営業を思い出すな。
小屋の扉の前で声をかけたが、中には誰も居ないようだ。
「ウェンディ誰もいないみたい・・・」
仕方なく帰ろうと俺がウェンディの方を振り返ると
「ギャァァァ!ウェンディが熊になった!!!」
腰を抜かして後退る俺の前に熊がいた。
「なんだ~?強盗か~?」
「熊がしゃべったーー!ウェンディが突然変異したのか!?」
ウェンディはやっぱりおもしろ妖精だったのか?
ゲシッ
「誰が熊よ!落ち着きなさい!人族よ」
「ん?ウェンディ?・・・あれ?」
俺の頭に蹴りを入れているウェンディが指差す方を見ると、熊のような男が立っていた。
もじゃもじゃのヒゲが半分ほど顔をおおい、獣の毛皮の服を着ている。
右手には大きな斧を持ち、こちらを訝しげに睨んでいる男はたしかに人のようだ。
身長は二メートルほどなので、熊が斧を持って歩いていると表現するのがピッタリ来る。
「えっと、どちら様ですか?」
「それはこっちのセリフじゃ若いの。そんな物騒な武器を持って何をやっている?」
「あっ・・・これは違うんです。けして怪しい者のじゃなくてですね」
そう俺は万が一のことを考え、手にはエクスカリ棒ならぬトゲバットを持っていた。
ここの住人からしたら強盗だ。急いでトゲバットをしまう。
「あはは・・・なんだか見解の相違があったようですみません。私は七星ワタルと言いまして、馬車で旅をしているものです」
熊男は、精霊馬車を一瞥する。
「確かに立派な馬車を持っているようだが、行商人か?」
「まぁそんなようなものです。この小屋で休ませてもらおうと」
「どこに行くのか知らんが、一人で妖魔の森を抜けていくつもりなのか?」
「い、いえ二人で・・・まぁそうです」
この熊男がウェンディを見えているかわからない。妖精が見える人は稀だとウェンディが言っていたので、積極的に教えるのはやめておいたほうが良いだろう。
「あの、この小屋はなんですか?」
「ここは木こり小屋だ。俺達木こりのための小屋だ。めったに使わないがな」
「あなたはここに住んでいるんですか?」
「まさか。仕事がある時しか使わんよ」
「そうですか」
ここの住人ではないようだ。
「とりあえず中に入れ。茶でも出してやる」
「あ、ありがとうございます・・・」
まさか食われたりしないよな。俺は熊男の巣穴・・・木こり小屋に足を踏み入れた。
20
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!
京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。
戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。
で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】
皆様どうぞよろしくお願いいたします。
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる