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幼なじみと隣の席の女の子

おはようの一言が言いたくて

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「送るぞ、送るぞ!」

 夏休み初日の朝……前日の夜からずっと悩んだ挙げ句、俺は遂に綾波にメッセージを送る事にした。
 あれから期末試験やらで結局メッセージは送っていない、学校で話しているのにわざわざ送るのってどうなんだろうとか、勉強の邪魔かな? 迷惑かなと考えてしまい送れなかった。

『おはうよう!』

 そして考えた挙げ句、もうこれしかないっていう完璧な文面、朝の挨拶というメッセージを、朝を待ち綾波に送った。

 誰がヘタレだ、緊張するんだよ! こう言う事を俺は殆どした事ないんだから。

 俺はメッセージを送ると、そのままスマホの画面を見つめる……見つめる……見つめ!

 メッセージの横に既読マークが付く。

「おお!」
 もうそれだけで嬉しい、綾波と繋がっているって事実だけで嬉しい気持ちになる……そして、今起きたのかな? 起こしちゃったかな? どんな格好で寝てるのかな?
 等と俺の想像が進む……そして!

『おはよ(*´ω`*)』
 綾波からのメッセージが返ってくる。

「ふ、ふおおおおお!」
 俺はスマホを持ちながらベットの上で転げ回った。
 す、すげえ、綾波と、あの綾波と家で繋がってる。家に居て話せる。夏休みでも話せる。
 俺は昨晩考えていた通り、さらにメッセージを送った。

『ごめん起こしちゃった?』
 送ると直ぐに既読が付く。
 もう俺はこれだけで大興奮状態に。

『だいじょうぶいv(・∀・*)』
 可愛い顔文字一緒に返信が来る……俺も、俺も何か顔文字を! そう思い慌てて入力し送信した。

『よかった((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル』
 
「あああああああ、間違えた! け、消しかたって」
 しかし直ぐにまた既読が付いてしまう。

『なぜ震える( ・`д・´)』

『ごめん間違えた(;ω;)慣れてない』

『あはははは(  ̄ー ̄)ノいいって事よ』

 ヤバい楽しい、楽しすぎる。
 でも、あまり送るのも……でも、やめ時がわからない……既読スルーしないと終わらない、どうすれば良いの?
 そう思っていたら綾波がそれを解決するメッセージを送ってくる。

『ごめーーんご飯食べるね』
 ウサギが謝っているスタンプがメッセージに続く。

「そうか……成る程」

『いってらっしゃい~~』
 俺はそう送ってスマホから目を離し、ベットに寝転び目を瞑った。

「疲れた……でも……楽しかった」
 こういう事がずっとやりたかった……実際やってみて何か通じ合う気がした。
 雪乃とは恐らくこういう事足りなかったのでは? 
 だからあんな勘違いを……でも、本当に勘違いだったのか? 俺はあれからずっと悩んでいた。
 誰に対しても優しかった雪乃、しかし、極端に揉め事を嫌っていた。
 その揉め事を起こさせない様に、平気で嘘もつく……。
 だから今回も……そうなのかも知れない……。

 なんにせよ、俺は今綾波に夢中なんだ……綾波とのやり取りに……夢中なんだ。
 ずっとしたかった……こういう事が、ずっとしたかった。

 雪乃には感じないドキドキを、俺は今もの凄く感じている。体感している。
 
「そうか……ひょっとしたら……これが……恋なのか?」
 乙女か! と自分に突っ込む。でも思えば雪乃が好きという俺の気持ちは、家族が好きという気持ちに似ている気がする。大好きなお姉ちゃんとか大好きな妹とずっと一緒にいたい、構って欲しい……という様な……そんな気持ち……。

 そこで俺はハッとした。

「そうか……雪乃は俺を……俺の事をそう思っているのか?」
 だから俺に頼る……俺を利用する。今までもずっとそうだった……。家族に頼るのと同じ感覚。
 
 雪乃は俺の妹であり姉なんだ……。俺にとって雪乃は家族なんだ……。
 
 そして……雪乃もそう思っている……。

 そして──それは……つまりは……。

「──やっぱりあれは、本当の事なんだ……雪乃は俺の事を……キモいって思っている」
 俺はそう……確信した。
 
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