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二章 忘れてた過去が……

4 ちょっとした興味

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 翌月曜日。抱き潰されてない俺は元気ハツラツ、ツヤツヤで出勤。メンタルはズタボロだけどね!

「おはようございます。木村さん」
「おはようございます」

 先に来ていた木村さんと簡単な進捗チェックしながら朝礼まで話し合う。

「あれ?今日は眠そうじゃないね」
「あのね、木村さん。いつも!俺は眠そうじゃありません!」
「嘘つくなよ。月曜はいっつもまぶたがむくんでるだろ」
「そんなことありません。えーと、ここですが……」

 よく見てんなあ。まあ木村さんは普段一緒にいることが多いから仕方ないけどさ。俺たちは朝礼後本格的に調整を始めた。

「じゃあ分担して俺がここ、楠木さんはここ」
「はい。終わり次第資料と連絡ちょうだいね。俺が工場に手配するから」
「はい。分かりました」

 昼前にはなんとかなった。顧客が突然面倒臭いこと言い出してなあ。工場は予定が狂って怒るしもうね。

「さて、こんなもんかな。昼からよろしくね」
「はい!」

 和樹は朝礼後に役員会議、そしてミーティングに次ぐミーティング。なんか重なってるんだってさ。一緒にご飯行けないな。
 仕方ねえ、適当に買って食べるかとブレイクルームのミニコンビニみたいなところで、パンとコーヒーを買って窓際のカウンターに座った。

「うーん……」

 特に美味くもないパンを齧りつつニュースなんかを読んで、お気に入りの動物の動画見てたらあっという間に時間が来た。休憩時間の経つ早さは異常だよまったく。仕方なくオフィスに戻って出かけた。
 
 木村さんに迷惑かけるとマズいからな。なんとか夕方前には連絡入れた。
 それから元々俺担当の会社に出向き仕事して、またオフィスに戻り、先に戻ってた木村さんと仕事。やっと終わって和樹の机を見れば何もない。そりゃあそうだ、外は真っ暗定時二時間オーバーだ。
 そんな週のスタート。金曜まで忙しくて和樹と話す余裕もなかった。

「朝おはようって言って終りとかたまにあるけど、俺寂しい」

 俺はいつも通り和樹の膝、スッポリ胸に入るこの位置がいい。和樹より体格か一回り小さいからのベストポジションだ。

「かわいいこと言うもんじゃない」
「だってさ、週末しか会えないんだよ?せっかく同じ会社で同じチームなのに。朝しか顔見ないとか……つまんない。それに……まあそれはいいや」

 和樹がピクッとした気がして顔を上げたら、あれぇ?会社の時のニコニコだよ?この、なに考えてるか分かんないこの笑顔は……コワッ

「智」
「はい」
「それってなに?」

 俺は平静を装い……出来てるかは不安だがなにもない顔を作って、

「言いたくありません」

 やだぁ……笑顔のまま迫力が増してくるじゃあありませんか。

「和樹は知らなくていい。今のは俺の失言だから」
「ほほう、僕に隠しごとか。いい度胸だな」
「ゔっ……」

 和樹は怖いが言う気はない。これは俺と彰人あきとの問題だから。それに終わったことなんだよ。

「言え」
「イヤッ!」
「んふふ……強情だな」

 俺は胸に顔をくっつけた。

「これは和樹に関係ないから!」
「それは僕が決める」

 いやいや……人には言いたくないこともあるんだよ。それに彰人と俺の話し聞いても楽しくねぇだろ。

「言わない。忘れて」
「フン……いいだろう。なら代わりにしゃぶって」
「へ?」
「ムカついて勃った」
「はあ?どんなエロスイッチだよ!」

 ガバッと起き上がって怒鳴った。

「僕は暇ならいつでも智を抱いていたい。休日はエロしか考えてない生き物だよ。知ってるくせに、今更なに言ってんだか」

 それこそあなたが何言ってんの?それ口にするか?

「和樹。さっきまでしてたよね?」
「うん、それがなに?」

 うっ……回数減らさせてるから体力余ってるんだね。

「聞いた俺がバカでした」
「分かればいい。ほら」

 俺は膝から降りて床にぺたんと座ると、掴みだしていた。あはは……すげぇ勃ってる。

「なんでこんなにすぐ勃つの?」
「智が近くにいるから」

 そうですか。俺は口に入れてネロネロ。本気で勃ってるじゃねえか。和樹は俺の頭に手を置いて上を向かせる。

「なに?」
「見てたい。僕のを咥えて蕩けんのをさ」
「そう」

 俺が余計なこと言ったからだけどさ。セックスとか疲れないのか?あれだけしてんのにさ。少ないと言っても三回はしてるんだぞ?俺が三回イッてんのとは違うけどさ。俺の回数は甘イキ入れたらもう数えるだけムダ。

「智…アッそこもっと」
「うん」

 ウッ…アッとか和樹は声を殺したりしない。ここは俺の好きなところ。気持ちいいよって教えてるようなこの声はゾクッとする。

「和樹は声我慢しないよね」
「ハァハァ…して得するの?見栄張ってなんの得があるんだよ。気持ちいいものは気持ちいい。だろ?」
「うん」

 自分に正直な和樹が好きだ。いい男の喘ぎ声の心地いいことこの上ない。

「棹を擦るな。口だけでしてくれよ」
「なんで?」
「すぐイキたくない」

 はーい。先を丁寧に舐めたり吸ったり。穴周りはいいよね。俺も好き。

「いい……ハァハァ……」
「ふふっ」

 穴に舌を入れて……ここ柔らかいよね。

「ううっはあッ…ッ」

 いい声、俺も勃ってきた。

「もうダメ。咥えてて」
「うん」

 咥えるとグボグボと腰を振ってハァハァと。

「アアッ……ンッ」

 頭を掴む指に力が入ってドピュッ。なんとなく出るまま飲んだ。うっすいね。

「萎えるまでそのままで」
「うん」

 俺はネロネロと舐めてると柔らかくなって口から離した。

「あーよかった」
「ふふっ」

 和樹のちんこしまってまた膝に跨った。

「和樹キスして」
「あ、ああ」

 和樹のキスは気持ちいい。少しでもね。僕の味がするのがちょっと嫌だなとか言いながら。

「智、話す気になった?」
「プハッ?ならねえよ」
「そう。ならお尻出して」

 あ?なんだそのセリフは!

「ヤダ!夜出来なくなるよ。いいの?」
「チッ……」

 チッ?チッだと?

「あのさあ。和樹も俺に話してないことあるでしょ?お互い様なんだよ。俺にも話したくないことはあるの」

 ムッスーっとして渋々って感じで、

「……ああそうだな。僕が恋人いない時はアプリとか店で引っ掛けて男食いまくってたとかな」
「……え」

 まあなあ、このセックス好きが自家発電で耐えられる理由わけねえんだよ。こんないい男ならいくらでもだろう。

「男を買ったこともある」
「そ、そうなんだ……」

 俺はない。する人いなきゃいないでよかったから。和樹は俺を抱きながら呟いた。

「せっかくだからワンナイト極めようとか思った頃もあったんだ。気に入った人はおかわり。でも途中で虚しくなって辞めた」
「あはは……」

 僕は下半身に関してかなりだらしなくて、智が思ってるような人じゃないんだって言う。

「なんでこんなに性欲強いんだと思わないでもないけど、恋人は特別欲が出る」
「それも和樹なんでしょ?」
「うん」
「今はそんなことしてないんでしょ?ならいい。俺は見た目通りイケメンでもないし弱くて……」

 智は弱くなんかないし、かわいいよって。

「ありがとう」
「うん」

 あ、そうそう聞きたいことあったんだ。

「ねえ聞いていい?」
「なに?」
「うちの給料でここに住めるの?高いでしょう」

 あー……と俺をキツく抱き締めたかと思うと、スッと力が抜けた。

「うちは本当に普通のサラリーマン家庭で、特別お金があるような家庭じゃない」
「うん」
「でも母方の実家が手広く事業やってて」
「へえ」
「ここは従兄弟の持ち物で安く借りてるんだ」

 母方の家はかなりの資産家で事業も色々やってる本気の金持ちだそう。

「テポ・デ・オルキディアグループって知ってる?」
「うん知ってるよ。全国にホテルやリゾート作ってるよね。他も……え?」
「そこが母の実家だ」
「えーー!」

 これはマジで言いたくなくて黙ってたんだ。僕自身がお金ある訳じゃないからねと苦笑い。

「本当はあちらに就職しろと言われてたんだ。爺さんがうるさく言ってたんだけど、僕は逃げた。兄は喜んで就職して今は……沖縄?のデカいホテルの支配人だよ」

 あそこの……どの地方に行っても駅前にあるビジネスホテルと、リゾートと共にゴージャスホテルの……他もしてた気がする。

「あの、よく……逃げられたね?」
「うん。いとこの蒼士そうじが味方に付いてくれてなんとかね」

 彼は母親の兄の子で、子供の頃から仲がいいそうだ。和樹が大学時代にゲイと気がついた時にも相談に乗ってくれたんだそう。

「あれは子供の頃から自分がゲイと気がついてたんだ。僕は知ってたけどね」
「そうなんだ」
「こんなこと相談できるのはあいつしかいなかったから」

 仕事で成功してるのは「しないとマズいから」だそうだ。普通に過ごしてたら「そんな体たらくならホテルを手伝え」ってお祖父さんが言ってくるからなんだって。

「母方の会社は半分は身内が役員で一族経営なんだよ。今時はいいと言えるかは分からないけど、上手くいってるからね」
「へえ……」

 お父さんも若い頃からそのホテル勤務だったそう。今でもだけど、都内で支配人しててお母さんも同じ。だから家に両親がいなかったんだよって。

「だから和樹は身のこなしがきれいなんだ」
「あ~うん。一族に組み込むつもりで母方の祖父母に躾けられたからね。父方はなにも言えずでね」

 だろうねってかお父様さん強い。そんなおうちからお嫁さん貰おうなんて……俺なら怖くて出来ない。

「和樹はお父さんの強さが遺伝してるのかな?」
「どっちもだろ。母さんがかなり強く迫ったらしいから」
「ほほう……すげぇ」

 俺そんな家の人と付き合って大丈夫なの?本気で庶民よ?どこに出しても恥ずかしい庶民よ?呆然として膝から降りた。床に腰抜かしたみたいに座り込んで見上げたまま。俺……どうしよう。

「智?」
「あ、うん」

 俺ここにいていいの?俺はただ和樹がなんでこんな所に住めるか興味があっただけで、こんな展開とは思わなかったんだ。
 確かにうちの会社はいいおうちの子はたくさんいるけど、ここまでは中々いないだろ。和樹は頭をワシャワシャ掻いて、

「僕の隠しごとはこれでなにもない。お前も話せよ」
「……は?」
「だから隠しごとはもうないの。お前の番だよ」
「え?」

 この流れで彰人のこと話すの?なんの冗談だよ。にっこり微笑む和樹を見上げて、開いた口が……どうしよう。話すの?マジで?頭が混乱してアウアウして……俺の魂は旅支度を始めた。

 なあ、体も連れてってくれよ……











     
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