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二章 忘れてた過去が……
2 サプライズの……
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「木村さん今日◯社行きます?」
「うん。午後に行くよ」
「よかった!」
俺前回間違って契約書渡すの忘れてファイルに二枚同じのがあったんだ。ボケにもほどがあって、PDFの契約書以外ねえんだけどって連絡来たんだ。
「コレ、申し訳ないんですが担当の山田さんに渡して貰えますか」
俺は契約書のファイルを渡した。
「ああ、原本の契約書ね。ふむ、楠木さんらしくないミスだね。疲れてる?」
「い、いえ!すみません。次の訪問先が押してて気になってしまって」
「ふーん」
不審げに俺をジロジロ見て、ムフッと笑った。
「君たちは大丈夫だとは思うけど、夜も程々とに」
「ウッ!違いますよ!」
あははと手を振って行ってくると出て行った。木村さんは途中入社の方で四十くらいだけど俺と社歴は同じ、ふたりで組んてやってるんだ。彼はそつなくこなす優秀な方で俺は頼りっぱなしでね。
木村さんを見送ったドアを見てたら後ろからクスクスと聞こえた。
そう、俺たちが手を繋いでるのを見てた人がいてあっという間に広がった。和樹も否定せず悪いか?と開き直ってね……
恋バナの広がり方って異常だよね。それも若くして出世してる課長で、狙ってる女性が多かったのも災いした。
もうね、この階のフロアは全員知ってる状態。セクハラになるから強くはみんな聞いては来ないけど、恥ずかしいのは恥ずかしい。
「木村さんナイス!」
「やっぱり若いって……」
とか、ヒソヒソ聞こえる……違うんだよ!本当にうっかりミスなの!大体失敗したの金曜日!エッチしてないの!とは言えない。
「楠木さん、これ頼まれてたの出来ました」
「あ、はい。ありがとうございます」
「うふふっいいえ~」
「……」
なんにも反応したくない。これはクラークの方に頼んでた書類だな。よし!コレ持って出よう。恥ずかしくてここにいたくなくてカバンに書類関係を詰めて上着を羽織った。
「課長俺も出て来ます」
「うん。頼むね」
「はい。行ってきます」
そのやり取りだけでキャッと声が上がった。
「君たち、いじめないでよ」
「あ、はい……」
和樹の反応にみんなニヤニヤ。いたたまれず俺は外に急いだ。みんなドラマみたいなこと起きないかな?とかヒソヒソしてるのは知ってる、そんなもんはねえよ。もうね、会社が安心出来なくなりつつあるんだよ。変に緊張して疲れるんだってのを週末和樹に訴えた。
「初めだけだよ。みんなすぐ飽きるから」
「そうかもしれないけど、チキンの俺には相当負担なんだよ」
「辛くて別れたくなった?」
フフンと微笑み俺の頬を撫でる。
「なるわけねえだろ!なに言うんだよ!」
ならいいとチュッ。僕の智は僕が守るからドンと構えてろって。
「ほんと?」
「うん。目に余るようならね」
「信じていい?」
「信じてくれ」
「うん」
今日は立膝の中に入って抱かれてた。仕事がないからね。んっ……あっ…
「和樹、キスは早いよ。まだお昼」
「いいじゃない」
「夜にお尻が持たなくなる」
「あ~……それは辛いかな」
なら出掛けるかって聞かれたけど、忙しくて今週はなんにも考えてなかった。
「いま桜が満開だってニュースやってたろ?」
「うん。あちこち咲いてるね」
「桜見に散歩するか」
「ああ、いいね」
近くには名所はないけど電車で少しって出掛けた。隅田川あたりに行こうって。
「美味しいカフェがあるんだ」
「ふーん」
川沿いは人が多くて宴会してる人もたくさん。ちょうちんとかもぶら下がってて屋台も出ていた。この景色は春だねえと思う。
「きれいだね」
「うん。満開は過ぎてるから桜吹雪が美しい」
ハラハラと降り注ぐ花びらが春風に吹かれ舞い上がる。なんてキレイなんだろう。花見なんていつ以来だ?
「ねえ和樹、これソメイヨシノだよね」
「ああそうだね。あそこに蕾が付いてる木があるだろ?八重桜か大島桜だと思う。十日も待たずに咲き始めるはずなんだ。あれさ、花びら多くてピンクのマシュマロみたいだよね」
「え?」
「夜のライトアップで僕はそう見えた」
「あはは」
甘いもの好きの和樹らしい例えだなって笑ってしまった。ココアにマシュマロ入れると美味しいよね?とか言って川沿いを歩いていると、ここだとカフェに到着した。だけど、満席に見えるよ?和樹は構わず店員さんに声を掛けた。
「予約の一ノ瀬です」
「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」
「智、来いよ」
「うん」
中に入ると白い石膏壁に黒の柱、落ち着いた店だなあ。奥の予約席に座って、
「和樹、さっきの今でどうやって予約が取れたんだよ。こんなに混んでるのに」
ああそれねって。友だちにここ美味いよって教えてもらってて、ずいぶん前に予約してたらしき。
「せっかくだから桜の満開に合わせたんだ。智と来ようと思ってね。まあ、散っても八重が咲いてるかなって思ってね」
「な、なんにも言ってなかったろ!」
んーっとサプライズ?まあ、智が行きたいところがこの日だったらキャンセルするつもりだったと。
「まあ……俺は予定とかあんまりないけどね」
「ふふっ僕に全振りしてるからな」
「グッ……そうだよ」
メニューも決まってたのか注文もしてないのに、アフタヌーンセットらしき三段のアレと紅茶のポットが出てきた。
「うわっ美味しそう」
「だろ?智はかわいいの好きだろ」
「うん!俺自分の部屋に流行りのぬいぐるみたくさん枕元に並べてるんだ」
「うちにも少し持ち込んでるもんね」
ポットからお茶を注ぐ和樹に、
「あ、嫌だった?」
「いいや。構わない」
お茶をどうぞと言われて一口、美味しい。ケーキやサンドウィッチ、キッシュを食べながら、なんでもない会話を楽しんだ。
「んふふっ」
「なんだよ」
なんか楽しくて笑ってしまった。
「俺和樹とお出かけ好きなんだ。前は気後れしてたけど、今は楽しい」
「ふーん。前と今はなにが違うんだ?」
ん?とケーキを口に運びながら、そうだな。変な気負いがなくなってるんだ。勉強だからとか、和樹に嫌な思いをさせないようにしなきゃとか。そんなことを考えなくなったんだ。
「ふふん。元々いらなかったんだよ。そんな気持ちはさ。僕と楽しめばよかっただけなんだよ」
「分かってる。俺はもう気にしないことにしたんだ。怒られてもそれもいいかなって」
そう言って和樹を見た。それでいいよって微笑んでくれた。
「智がなにしてもいい。僕はそのまんまの智でいいんだ」
「うん」
うっとりする笑顔は俺に安心をくれる。付き合って一年がとうに過ぎていて、和樹の安定感に俺はどっぷり。年上の貫禄で愛してくれる心地よさにいつもふわふわしていた。
「智、口にクリーム付いてるぞ」
「ふえ?」
「ほらナプキン」
「ありがとう」
焦って口元を拭いた。話に夢中になると手元があやしくなるよね。
「部屋なら舐めてあげるんだけどね」
「あ?恥ずかしいこと言うなよ!」
「いつもしてるだろ?」
「そうだけど……」
ううっ……この余裕かましておかしなこと言うの慣れない。
外での和樹は通り過ぎる人が二度見するほどかっこいいんだ。手足が長くてスラッとしてて、男でも見惚れるくらい。
顔は少しかわいい感じで、全体に整っている。髪の毛はサラサラだから少し固めて後ろに流しててね。
俺はどこにでもいる男だよ。普通の中の普通。でも和樹は俺の笑顔はとても素敵だと褒めてくれる。本当に幸せそうに笑うんだと言ってくれる。その言葉だけでいいんだ。
「そろそろ帰るかな」
「うん」
会計して外に出るとまだ明るく、宴会が遠くに見えた。
「浅草に行くか」
「なにしに?」
「あげまんじゅう食べたい」
「ゲッいま甘いの食べただろ」
見上げるとにっこりして、
「帰ったら食べたくなるんだよ」
「はあ……和樹甘いもの好きだよね。酒飲みのくせにさ」
「ふふっ別にいいだろ」
ダラダラと駅に向かいながら話してて、結局浅草の仲見世に行ってあげまんじゅう買って、人形焼きも買って、芋ようかんも。どんだけ買うんだよ!
「いいだろ?平日少しずつ食べるんだよ」
「腐るよ!」
「いや、このくらいすぐだ」
「マジか……」
普段も食ってるらしいのは知ってた。会社でお菓子とかもらうと嬉しそうにすぐ食べるし、部屋のゴミ箱に団子とかどっかのお菓子の袋とか捨ててあるんだ。
「よく太らないね」
「うん。智と夜に運動もしてるし、筋トレもしてるからね」
「さようで……」
一個食べよって袋から出してむしゃむしゃ。マジかよ。
「智も食べる?」
「今はいらない」
「そう?美味しいのに」
見てると胸焼けする。神様は不公平だよね。こんな美貌に才能、健康な体をひとりに授けるとはさ。俺にもひとつくらいくれてもバチは当たらんだろうよ。
「なんでブスッとしてんの?食べたかった?」
「違う!」
ため息しか出ない。でも隣で美味しそうに頬張るこの男は俺のもの、だからいいや。神様は才能はくれなかったけど和樹を俺にくれたから。俺は和樹にしか聞こえないくらいの声で、
「帰ったら抱いて」
「ん?どうした?そんなこと言ったことないだろ」
「そんな気分なの!」
「おう!寝かせないからな」
「うん」
やたら素直で不気味と驚いた顔で言われた。俺もしたい時があるの!言わなくてもしてくれるけど、言いたい時もあるの!和樹が欲しくなる時もあるんだ。小さな声で言い訳をした。
「あはは。だからお前が好きなんだ。なんてかわいいんだろうな」
「あの、ただ好きだって気持ちが強くなる時があるんだ。触れて欲しくなるんだ……」
「そうか」
「うん」
ちょっとしたお散歩だったけど楽しかった。帰りにご飯食べようって。はあ?どんだけ食うんだ?俺腹減ってないけど付き合って少し食べた。
そして休憩がてらテレビを観ていると、いいかって言われて抱かれた。
抱いて欲しくて抱かれてるからそれは気持ちよくて、事が終わるとやっぱり尻は限界を迎えた。でも満足できて嬉しかったし、和樹は興奮しまくって激しくてよかった。が、回数は減らして下さい。多すぎるよ。
「うん。午後に行くよ」
「よかった!」
俺前回間違って契約書渡すの忘れてファイルに二枚同じのがあったんだ。ボケにもほどがあって、PDFの契約書以外ねえんだけどって連絡来たんだ。
「コレ、申し訳ないんですが担当の山田さんに渡して貰えますか」
俺は契約書のファイルを渡した。
「ああ、原本の契約書ね。ふむ、楠木さんらしくないミスだね。疲れてる?」
「い、いえ!すみません。次の訪問先が押してて気になってしまって」
「ふーん」
不審げに俺をジロジロ見て、ムフッと笑った。
「君たちは大丈夫だとは思うけど、夜も程々とに」
「ウッ!違いますよ!」
あははと手を振って行ってくると出て行った。木村さんは途中入社の方で四十くらいだけど俺と社歴は同じ、ふたりで組んてやってるんだ。彼はそつなくこなす優秀な方で俺は頼りっぱなしでね。
木村さんを見送ったドアを見てたら後ろからクスクスと聞こえた。
そう、俺たちが手を繋いでるのを見てた人がいてあっという間に広がった。和樹も否定せず悪いか?と開き直ってね……
恋バナの広がり方って異常だよね。それも若くして出世してる課長で、狙ってる女性が多かったのも災いした。
もうね、この階のフロアは全員知ってる状態。セクハラになるから強くはみんな聞いては来ないけど、恥ずかしいのは恥ずかしい。
「木村さんナイス!」
「やっぱり若いって……」
とか、ヒソヒソ聞こえる……違うんだよ!本当にうっかりミスなの!大体失敗したの金曜日!エッチしてないの!とは言えない。
「楠木さん、これ頼まれてたの出来ました」
「あ、はい。ありがとうございます」
「うふふっいいえ~」
「……」
なんにも反応したくない。これはクラークの方に頼んでた書類だな。よし!コレ持って出よう。恥ずかしくてここにいたくなくてカバンに書類関係を詰めて上着を羽織った。
「課長俺も出て来ます」
「うん。頼むね」
「はい。行ってきます」
そのやり取りだけでキャッと声が上がった。
「君たち、いじめないでよ」
「あ、はい……」
和樹の反応にみんなニヤニヤ。いたたまれず俺は外に急いだ。みんなドラマみたいなこと起きないかな?とかヒソヒソしてるのは知ってる、そんなもんはねえよ。もうね、会社が安心出来なくなりつつあるんだよ。変に緊張して疲れるんだってのを週末和樹に訴えた。
「初めだけだよ。みんなすぐ飽きるから」
「そうかもしれないけど、チキンの俺には相当負担なんだよ」
「辛くて別れたくなった?」
フフンと微笑み俺の頬を撫でる。
「なるわけねえだろ!なに言うんだよ!」
ならいいとチュッ。僕の智は僕が守るからドンと構えてろって。
「ほんと?」
「うん。目に余るようならね」
「信じていい?」
「信じてくれ」
「うん」
今日は立膝の中に入って抱かれてた。仕事がないからね。んっ……あっ…
「和樹、キスは早いよ。まだお昼」
「いいじゃない」
「夜にお尻が持たなくなる」
「あ~……それは辛いかな」
なら出掛けるかって聞かれたけど、忙しくて今週はなんにも考えてなかった。
「いま桜が満開だってニュースやってたろ?」
「うん。あちこち咲いてるね」
「桜見に散歩するか」
「ああ、いいね」
近くには名所はないけど電車で少しって出掛けた。隅田川あたりに行こうって。
「美味しいカフェがあるんだ」
「ふーん」
川沿いは人が多くて宴会してる人もたくさん。ちょうちんとかもぶら下がってて屋台も出ていた。この景色は春だねえと思う。
「きれいだね」
「うん。満開は過ぎてるから桜吹雪が美しい」
ハラハラと降り注ぐ花びらが春風に吹かれ舞い上がる。なんてキレイなんだろう。花見なんていつ以来だ?
「ねえ和樹、これソメイヨシノだよね」
「ああそうだね。あそこに蕾が付いてる木があるだろ?八重桜か大島桜だと思う。十日も待たずに咲き始めるはずなんだ。あれさ、花びら多くてピンクのマシュマロみたいだよね」
「え?」
「夜のライトアップで僕はそう見えた」
「あはは」
甘いもの好きの和樹らしい例えだなって笑ってしまった。ココアにマシュマロ入れると美味しいよね?とか言って川沿いを歩いていると、ここだとカフェに到着した。だけど、満席に見えるよ?和樹は構わず店員さんに声を掛けた。
「予約の一ノ瀬です」
「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」
「智、来いよ」
「うん」
中に入ると白い石膏壁に黒の柱、落ち着いた店だなあ。奥の予約席に座って、
「和樹、さっきの今でどうやって予約が取れたんだよ。こんなに混んでるのに」
ああそれねって。友だちにここ美味いよって教えてもらってて、ずいぶん前に予約してたらしき。
「せっかくだから桜の満開に合わせたんだ。智と来ようと思ってね。まあ、散っても八重が咲いてるかなって思ってね」
「な、なんにも言ってなかったろ!」
んーっとサプライズ?まあ、智が行きたいところがこの日だったらキャンセルするつもりだったと。
「まあ……俺は予定とかあんまりないけどね」
「ふふっ僕に全振りしてるからな」
「グッ……そうだよ」
メニューも決まってたのか注文もしてないのに、アフタヌーンセットらしき三段のアレと紅茶のポットが出てきた。
「うわっ美味しそう」
「だろ?智はかわいいの好きだろ」
「うん!俺自分の部屋に流行りのぬいぐるみたくさん枕元に並べてるんだ」
「うちにも少し持ち込んでるもんね」
ポットからお茶を注ぐ和樹に、
「あ、嫌だった?」
「いいや。構わない」
お茶をどうぞと言われて一口、美味しい。ケーキやサンドウィッチ、キッシュを食べながら、なんでもない会話を楽しんだ。
「んふふっ」
「なんだよ」
なんか楽しくて笑ってしまった。
「俺和樹とお出かけ好きなんだ。前は気後れしてたけど、今は楽しい」
「ふーん。前と今はなにが違うんだ?」
ん?とケーキを口に運びながら、そうだな。変な気負いがなくなってるんだ。勉強だからとか、和樹に嫌な思いをさせないようにしなきゃとか。そんなことを考えなくなったんだ。
「ふふん。元々いらなかったんだよ。そんな気持ちはさ。僕と楽しめばよかっただけなんだよ」
「分かってる。俺はもう気にしないことにしたんだ。怒られてもそれもいいかなって」
そう言って和樹を見た。それでいいよって微笑んでくれた。
「智がなにしてもいい。僕はそのまんまの智でいいんだ」
「うん」
うっとりする笑顔は俺に安心をくれる。付き合って一年がとうに過ぎていて、和樹の安定感に俺はどっぷり。年上の貫禄で愛してくれる心地よさにいつもふわふわしていた。
「智、口にクリーム付いてるぞ」
「ふえ?」
「ほらナプキン」
「ありがとう」
焦って口元を拭いた。話に夢中になると手元があやしくなるよね。
「部屋なら舐めてあげるんだけどね」
「あ?恥ずかしいこと言うなよ!」
「いつもしてるだろ?」
「そうだけど……」
ううっ……この余裕かましておかしなこと言うの慣れない。
外での和樹は通り過ぎる人が二度見するほどかっこいいんだ。手足が長くてスラッとしてて、男でも見惚れるくらい。
顔は少しかわいい感じで、全体に整っている。髪の毛はサラサラだから少し固めて後ろに流しててね。
俺はどこにでもいる男だよ。普通の中の普通。でも和樹は俺の笑顔はとても素敵だと褒めてくれる。本当に幸せそうに笑うんだと言ってくれる。その言葉だけでいいんだ。
「そろそろ帰るかな」
「うん」
会計して外に出るとまだ明るく、宴会が遠くに見えた。
「浅草に行くか」
「なにしに?」
「あげまんじゅう食べたい」
「ゲッいま甘いの食べただろ」
見上げるとにっこりして、
「帰ったら食べたくなるんだよ」
「はあ……和樹甘いもの好きだよね。酒飲みのくせにさ」
「ふふっ別にいいだろ」
ダラダラと駅に向かいながら話してて、結局浅草の仲見世に行ってあげまんじゅう買って、人形焼きも買って、芋ようかんも。どんだけ買うんだよ!
「いいだろ?平日少しずつ食べるんだよ」
「腐るよ!」
「いや、このくらいすぐだ」
「マジか……」
普段も食ってるらしいのは知ってた。会社でお菓子とかもらうと嬉しそうにすぐ食べるし、部屋のゴミ箱に団子とかどっかのお菓子の袋とか捨ててあるんだ。
「よく太らないね」
「うん。智と夜に運動もしてるし、筋トレもしてるからね」
「さようで……」
一個食べよって袋から出してむしゃむしゃ。マジかよ。
「智も食べる?」
「今はいらない」
「そう?美味しいのに」
見てると胸焼けする。神様は不公平だよね。こんな美貌に才能、健康な体をひとりに授けるとはさ。俺にもひとつくらいくれてもバチは当たらんだろうよ。
「なんでブスッとしてんの?食べたかった?」
「違う!」
ため息しか出ない。でも隣で美味しそうに頬張るこの男は俺のもの、だからいいや。神様は才能はくれなかったけど和樹を俺にくれたから。俺は和樹にしか聞こえないくらいの声で、
「帰ったら抱いて」
「ん?どうした?そんなこと言ったことないだろ」
「そんな気分なの!」
「おう!寝かせないからな」
「うん」
やたら素直で不気味と驚いた顔で言われた。俺もしたい時があるの!言わなくてもしてくれるけど、言いたい時もあるの!和樹が欲しくなる時もあるんだ。小さな声で言い訳をした。
「あはは。だからお前が好きなんだ。なんてかわいいんだろうな」
「あの、ただ好きだって気持ちが強くなる時があるんだ。触れて欲しくなるんだ……」
「そうか」
「うん」
ちょっとしたお散歩だったけど楽しかった。帰りにご飯食べようって。はあ?どんだけ食うんだ?俺腹減ってないけど付き合って少し食べた。
そして休憩がてらテレビを観ていると、いいかって言われて抱かれた。
抱いて欲しくて抱かれてるからそれは気持ちよくて、事が終わるとやっぱり尻は限界を迎えた。でも満足できて嬉しかったし、和樹は興奮しまくって激しくてよかった。が、回数は減らして下さい。多すぎるよ。
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