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五章 未来を考えた領地運営とは

10.魔力供給をね

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 遅い朝を迎えた。
 隣にはスースーと眠るセリオ。かわいい。

 だけど休みに入ってせっかくだから、イアサントにでも行くかと計画を立て始めたはいいが、どうにもだるい。
 以前だったらやっほーいと喜々として動いたはずなのになあ。楽しみでないのとは違うんだ。セリオともいたしてもいるから病ではないとは思う……思うね。セリオも心配して相談してこいって。

「で、俺のところか」
「はい」

 困った時はロドリグ様。もう俺の定番。

「普段と変わらず生活は出来てるし、困った事はないが、やる気が弱いか」
「はい」

 彼の執務室で話していると、引き出しからなにか出してほれと渡された。魔石?あ、魔力測定の。

「測ってみろ」
「はい。グッ」

 握り込んで手を開いて数字を見た。はあ?あまりの数字に固まった。

「貸せ」
「あ、ああ。はい」

 彼に魔石を渡した。すると眉間にシワでため息。

「お前二十五万くらいだよな」
「はい」
「十五万くらいになっているぞ」
「はい……なんで?」

 椅子の背もたれにボスっと倒れ込んで腕組み。

「病み始めてるんだよ。魔力が不安定になるのはその証拠で前兆だ。俺が魔力渡して増やしても問題解決にはならないが、気休めにはなるな」
「ふえ?俺病気?」
「なりかけ」

 なんで……俺ムリした覚えはないけど?楽しく仕事してたし……

「気が付いてなかっただけだろう。お前ここに来て休みは取ったか?」
「いえ。休日もなんだかんだ短時間仕事したりは。ドナシアンにいったり、エゼキエーレに行ったりで仕事は休んでますけど」

 バーカと。

「それは仕事だろ。執務室にいなかっただけだ」
「城で舞踏会とか兄弟でお茶会とかもしてましよ?」
「足らなかったんだろ」
「ゔっ」

 椅子から立ち上がりおいでっていうと寝室に連れ込まれた。

「とりあえず俺と寝ろ」
「はい?」
「これは……まあ地味~な特殊技能だが、王族の一部にセックスで魔力を渡せる者がいるんだよ。それが今世代は俺」
「え?」

 ベッドに横にされ脱がされながら説明してくれる。いや、まず説明をしてくれ。

「どうせするんだから先でも後でもいいだろ」
「はい?」

 俺を脱がせると、自分も全部脱いでお布団を掛けて抱き寄せられた。
 王族の血にたまに出る能力者なんだそう。魔石を介さなくてもあげられるんだって。魔石も自分で溜めたものしか受け付けない。俺は溜めてない。

「へえ。医者の治療とは違うんですよね」
「ああ」

 あれは傷や病を治しているのであって、魔力をあげているのではない。魔力の作用だと。

「純粋に……あっ…んっ」

 触るな。頭に入らない。

「普段お前と寝て多少は渡していたはずなんだ。あんまり疲れなかったろ」

 えーっと。そう言えば夜帰ってそのまま仕事とか……

「確かに。そのまんまセリオを抱いたことも……」
「だろう」

 人族何でもありだな。やはり魔物の種類か。不審な目で見てしまった。

「なんだよ。これはドナシアンの始祖の能力の先祖返りなんだ」
「ハァハァ……あん」

 気持ちよくなって……匂いに酔ってきた。

「今回は意識して流すから受け取れ」
「うっ…ああ……はい……」

 お尻が……あ…グッ!

「ソコダメ!」
「解さないとノルンのお前は入れられないから」
「で……出ちゃうぅ……くうっ!」

 もう俺お尻だけでイケちゃうように。なんでだよ。

「楽しめばより一層な」
「ふえ?」

 ズクンっとうつ伏せにされて押し込まれた。うおっ!身体があったかい……気持ちよくて朦朧とする。身体に魔力が巡るのが分かる。

「くうっ……!ああっロドリグっ」
「ハァハァ……いいだろ。俺も……はあ」

 堪んない快感だ。いつもより……ああ……押し込まれるたびにくうっ意識がゆらゆらする。

「出すから!グッ」
「ああ……あうっ!ぐああっ」

 全身に震えが!精液の魔力か?お尻から入り込んで……うんうぅ……っ気持ちい…い……世界が真っ白だ……あふん……


「あっ……んっ息苦し!」
「起きた?」

 クチュっと舌が離れた。……意識飛んでる時に襲うな。息苦しくて目が覚めただろ。

「何して」
「ん?まだしたくて」
「そう。あれ?くっ!」

 抜いてなかったのかよ!あう…やだぁ気持ちいいよぉ。グチョグチョと……堪んねえ。
 何度かいたしてホカホカの身体で俺は呆然と天井を見ていた。

「はあ……お前いい。アンの者とは違うんだが堪んねえ」

 呟くような言葉がロドリグ様から漏れた。

「俺なんでこんなに気持ちいいの……」
「前にも言ったろ?少しあるアンの部分が反応してるんだよ。誰しも片方の属性が少しあるんだ」

 そっか。アンの属性が持つ気持ちがロドリグ様を求めるのか。思い出した。

「あれ?少し身体が楽かな?気のせいか」
「だろう?まだ完全には病んでないから、ゆっくり過ごして、たまに俺に抱かれに来い。旅行にも行って気分変えて、仕事の事は考えないでな」
「うん」

 そんな感じで時々ロドリグ様に抱かれながら過ごして出発の日が来た。

「ここは俺とフィトが頑張るから元気に帰ってこいよ」
「ああ。よろしく頼むな」
「エリオス樣、イアサントはきれいだよ。ドナシアンとはまた違ってね」
「楽しんでくるよ。父上もお金くれたから」

 うふふっまたもらっちゃった。大使館の泊まりじゃ新婚旅行じゃないだろって。感謝しかない。

「じゃ行ってくる!」
「おう!気を付けてな」

 屋敷のみんなに見送られて騎獣で飛び立った。今回はラインハルトとその部下の方たち。ロドリグ様が貸してやるって。
 お前の騎士は仕事を長く離れると困るだろってさ。

「悪かったなラインハルト」
「いいえ。私も久しぶりにイアサントに行けますから」

 彼はイアサントからロドリグ様に付いて来た騎士だそうだ。ここにいる者も。

「ほう。国を離れるのは辛くなかったのか?」
「多少は。ですが家族も連れてきましたし、そんなにはね」
「ふーん」

 俺ならどうしたんだろう。国を離れるかあ。同じ共和国で、イアサントの飛び地のような国で親戚もたくさん。それでもなあ。

「イアサントとドナシアンの貴族は行き来は多いんですよ。王は元は同じ王族ですし、あの国の再生時にたくさん身内が行って作ってますから」
「でもなあ。俺は不安になりそうだ」

 エリオス樣はここのみの国で育ちましたから、我らとは違いますよ。それが当たり前と思って生きていれば、そんなもんと納得できるんですよと笑う。

「そうか。そういうものか」
「ええ。そんなものです」

 景色を楽しむように飛んでいた。初めてこの辺りを飛んだ時は認識するくらいであんまり見れてはいなかったんだ。

「草原と大きな川と森。こんな景色だったんだね」
「ああ。必死過ぎて分からなかったよ」

 森を抜けると。あ?

「ユーリ様の街か?」
「みたいだね」

 俺とセリオは驚いた。ここ草原しかなかったから。途中もきれいな街道はあったけどさ。

「こちらはアルムニアに一番近い街ですね」
「こんなに人がいるのか」
「はい。色んな国に行く中継地になってますから」
「ほう」

 上空を飛びながら街を見た。街道があちこちに出来てる。街はもろドナシアン。でも仕事の者が多いように見えるかな。

「あちらの少し大きい屋敷が領主代理の家です」
「うん」

 ロドリグ様の屋敷より少し小さいだけだな。屋敷の雰囲気はよく似ている。

「あちらはユーリ様もお泊まりになりますからね」
「ああ。それで立派なのか」

 ここまで三時間。お昼をここで食べてまた出発。この次の街が宿泊地になっている。

「美味しかったね」
「本当にな。うちの野菜とは思えなかったよ」

 ユーリ様の地は色んな国の店があった。問屋が多くは感じたけどそれでもね。

「なあ、ラインハルト」
「はい」

 何もない森を飛びながら、

「イアサントはなんで調理法が豊かなんだ?」
「ああ。ベトナージュから持ち込んだようですよ。ルチアーノ様の頃に」
「はあ。あの英雄何でもしてるんだな」

 あの方は他国への街道の整備、希薄な関係の国との国交も整備しましたねって。魔物の発生の抑制方法とか。悪く言えばバケモンですと笑った。

「庶民からとは思えんな」
「ふふっ双子の力も大きかったようですが、発案は彼のようですね」

 政治の抜けを見つけるのが上手いか。かあ~

「王になるべくして生まれたような人だな」
「王族以上の王でした。今の平穏も彼の功績ですから」
「ああ」

 貴族から見たイアサント、ドナシアンの話なんかしながら次の中継地に夕方には着いた。

「ハァハァ……ポーション飲む」
「セリオお疲れ」

 泊まる予定の宿屋の前に降り立つと、疲れ果てたセリオは腰からロドリグ様特製ポーションを取り出してグビグビ。

「くはあ!生き返った!」
「俺もだ。疲れたけどなんかスッキリしてる」
「ならよかった」

 一日掛けてここまで。ドナシアンまではまだまだ遠いが、次は猫族の国に行くんだ。
 ドナシアン経由だと遠回りになるとラインハルト。だから明日はそちらに向かう。
 どんな国だろうか。俺たちと何が違って何が同じか考えるとわくわくする。

「エリオス僕お腹すいた!」
「おう。宿屋に入ろうぜ」
「うん」

 翌日に疲れを残さないように休まないとな。だが、ちょっと国から離れただけなのに気分はいい。空気の匂いも街の様子も違うのが楽しく感じるんだ。
 旅は始まったばかり。せっかくなら楽しまなくちゃな。うん。






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