44 / 69
四章 領主として俺
6.街づくりスタート
しおりを挟む
今日から街づくりが始まった。
「オスバルド様お願い致します」
「はい、エリオス様。私以外の者はサムエル、ベラコス、ビダルが中心になってやります。他二名は補佐です」
「かしこまりました。この図面でお願いします。資材はここを切り倒した木材、あちらに見える崖から石材はお願いします。足りない分は言ってください」
「はい」
オスバルド他はみんなでまずは整地だと一斉に木を切り倒していった。うん、手を振って歩いてるだけだけどね。スパーンスパーンと木は倒れ、補佐の人が集めて積み上げてく。連携が取れててすごい。
「街道からここまでの道も整備が必要ですね。それと山に向かう道も」
「ええ。お願いします」
小一時間で何もなくなって広場が現れた。うちの魔法使いは全部の整備に二ヶ月かかったけど……
「あはは。そこまでかかりませんよ。材料集めにどれだけ時間が掛かるかですね。ここは森の中ですから木は充分かと。あとは石ですかね」
「そうですね。道から建物までだから」
近場だけで足りるか?
「地面も探します。ですがあまりやると地盤によろしくないので、領地境の山脈にでも探しに行きますよ」
「すみません。お手数ですがお願いします」
これだけ大規模な造成だが、お金はいつもの給金だけでいいそうだ。ロドリグ様ありがとう。
「すごいね」
「ああ。これが魔力量の違いなんかな」
「後は長年の経験でしょ」
「そうだな」
セリオと鮮やかに景色が変わっていくのを見ていた。
ドナシアンは百年前の戦の後、数ヶ月で街を作り変えたと聞く。どれだけの魔法使いがいたのやら。人族は計り知れない。
「上手く行ってるか」
「あっロドリグ様。はい」
「そうか。俺の魔法使いは優秀だから早く出来るはずだ。ギルドにすぐに来れるよう手配しておけよ」
「はい」
「それと魚もこっちでも売るんだろ?」
「ええ」
ならエゼキエーレにもちゃんと連絡しろ。あちらは人が少ないんだから、漁師を増やして運搬の人足も増やせって。
うん。そこは抜かりない。俺は出向いてお願いしている。が、王様は俺の話にみるみる顔色が悪くなり……
「街を増やすのですか……ほほう……」
「魚をそちらにもお願いしたいのです」
うふふっと微笑み、完全に青くなった。ごめん。
「ですので、運搬はこちらで人族を雇いました。馬車の騎獣を出せる者を何人か」
「ほう……ならばなんとか。漁はどうにかなりそうなんですが、運ぶ者がいませんので」
変な汗をかいてたけど気を取り直したようだ。
「我が領で運送業の給金を出せるようになり、他国からも働きに来る者が増えたんです」
「そうですか。ようございますね」
うちの国は元々魅力がなく人族はあまりどころか来なかった。特殊な魔法使いが必要だとたまに大店が雇うくらいでさ。最近は外を知ったドミンクスの人が少し来てるんだ。
あそこはうちと変わらない貧乏国。鎖国をやめたと言ってもそれほど人は外に出ないし、入っても行かない。長い鎖国で民は変化を嫌うようになってたんだ。でも外に憧れを持つ者もいる。
「あそこは仕方ないと思います。入れば二度と出れない政策の期間もありましたからね」
「俺も中が全てになってしまう気持ちは分かります」
うちもここも鎖国しなくても似たようなもんだから。
「ふふっそうですね」
マンセル様は苦笑い。あなたのお陰で人が動くようになって、くま族以外も見かけるようになりました。魚好きなイタチとかカワウソとか。
「そうですか。賑やかになってきたんですね」
「はい。あなたの魚がここからの魚だって気になる方が観光にも来てくれて……本当になんとお礼を……グスッ」
目頭をマンセル様は抑えて。
「マンセル……」
「うん。すまないジレール。こんな日が来るなんて思ってなかったんだ。質素が当たり前のこの国に……エリオス様のところの赤い服を着てるくまが……そんなお金が民に……」
「ええ……」
ジレール様も涙ぐんでよかったねって。
俺の知らんうちにロドリグ様の魔法使いも来てて、街を整備したり、農家の家を立て直したり。家の隙間風が!なんてこともなくなり冬暖かく過ごせているそう。
「こちらは冬寒くなるんですよ。雪が降るなんてところまでは寒くはないのですが、海風が強く山に吹きつけるんです」
「それは大変ですね」
「はい。その強い風が建物を壊してしまい王宮では中々直してあげられず」
魔法使いがいないに等しかったそうだ。くま族は王様でも魔力量十万ない。庶民はもうね……
「自国の魔法使いがいなくともロドリグ様が派遣してくれています。病もケガも心配は少なくなりました」
「ほほう……」
ひとり城付きで出向だそう。当番制で何ヶ月かに一回交代しているそうだ。
「よかったですね」
「ええ、いつか自分の国で雇えればと考えています」
「きっとすぐですよ」
「はい。エリオス様が頑張ってくれればですかね?」
「あはは。頑張ります」
なんてことがあったのを報告した。
「ならばよい」
「はい」
こんな僅かな時間で地面は整地され平らになって行った。
「はや……」
「だろう?ふっ」
エリオスって不安そうな声。
「こんなに凄いとなんか見返りって言われたらどうしよう」
「ああ。俺たちは捧げたくはない」
「猫族の夜伽探しとく?」
「そうだな……父上に見繕って貰うか?」
「うん。一応相談を……」
俺たちはヒソヒソと不安を消す話し合い。
「聞こえてるぞ。んなことは言わん。適当に自分で物色する。まあお前らの気が変わるのであれば嬉しいがな」
「ゔっ。変わりません。俺はセリオがいれば」
「僕も!」
フンと鼻を鳴らし、
「気長に待つよ」
「……待たなくていいです」
街の開拓は始まった。
「オスバルド様お願い致します」
「はい、エリオス様。私以外の者はサムエル、ベラコス、ビダルが中心になってやります。他二名は補佐です」
「かしこまりました。この図面でお願いします。資材はここを切り倒した木材、あちらに見える崖から石材はお願いします。足りない分は言ってください」
「はい」
オスバルド他はみんなでまずは整地だと一斉に木を切り倒していった。うん、手を振って歩いてるだけだけどね。スパーンスパーンと木は倒れ、補佐の人が集めて積み上げてく。連携が取れててすごい。
「街道からここまでの道も整備が必要ですね。それと山に向かう道も」
「ええ。お願いします」
小一時間で何もなくなって広場が現れた。うちの魔法使いは全部の整備に二ヶ月かかったけど……
「あはは。そこまでかかりませんよ。材料集めにどれだけ時間が掛かるかですね。ここは森の中ですから木は充分かと。あとは石ですかね」
「そうですね。道から建物までだから」
近場だけで足りるか?
「地面も探します。ですがあまりやると地盤によろしくないので、領地境の山脈にでも探しに行きますよ」
「すみません。お手数ですがお願いします」
これだけ大規模な造成だが、お金はいつもの給金だけでいいそうだ。ロドリグ様ありがとう。
「すごいね」
「ああ。これが魔力量の違いなんかな」
「後は長年の経験でしょ」
「そうだな」
セリオと鮮やかに景色が変わっていくのを見ていた。
ドナシアンは百年前の戦の後、数ヶ月で街を作り変えたと聞く。どれだけの魔法使いがいたのやら。人族は計り知れない。
「上手く行ってるか」
「あっロドリグ様。はい」
「そうか。俺の魔法使いは優秀だから早く出来るはずだ。ギルドにすぐに来れるよう手配しておけよ」
「はい」
「それと魚もこっちでも売るんだろ?」
「ええ」
ならエゼキエーレにもちゃんと連絡しろ。あちらは人が少ないんだから、漁師を増やして運搬の人足も増やせって。
うん。そこは抜かりない。俺は出向いてお願いしている。が、王様は俺の話にみるみる顔色が悪くなり……
「街を増やすのですか……ほほう……」
「魚をそちらにもお願いしたいのです」
うふふっと微笑み、完全に青くなった。ごめん。
「ですので、運搬はこちらで人族を雇いました。馬車の騎獣を出せる者を何人か」
「ほう……ならばなんとか。漁はどうにかなりそうなんですが、運ぶ者がいませんので」
変な汗をかいてたけど気を取り直したようだ。
「我が領で運送業の給金を出せるようになり、他国からも働きに来る者が増えたんです」
「そうですか。ようございますね」
うちの国は元々魅力がなく人族はあまりどころか来なかった。特殊な魔法使いが必要だとたまに大店が雇うくらいでさ。最近は外を知ったドミンクスの人が少し来てるんだ。
あそこはうちと変わらない貧乏国。鎖国をやめたと言ってもそれほど人は外に出ないし、入っても行かない。長い鎖国で民は変化を嫌うようになってたんだ。でも外に憧れを持つ者もいる。
「あそこは仕方ないと思います。入れば二度と出れない政策の期間もありましたからね」
「俺も中が全てになってしまう気持ちは分かります」
うちもここも鎖国しなくても似たようなもんだから。
「ふふっそうですね」
マンセル様は苦笑い。あなたのお陰で人が動くようになって、くま族以外も見かけるようになりました。魚好きなイタチとかカワウソとか。
「そうですか。賑やかになってきたんですね」
「はい。あなたの魚がここからの魚だって気になる方が観光にも来てくれて……本当になんとお礼を……グスッ」
目頭をマンセル様は抑えて。
「マンセル……」
「うん。すまないジレール。こんな日が来るなんて思ってなかったんだ。質素が当たり前のこの国に……エリオス様のところの赤い服を着てるくまが……そんなお金が民に……」
「ええ……」
ジレール様も涙ぐんでよかったねって。
俺の知らんうちにロドリグ様の魔法使いも来てて、街を整備したり、農家の家を立て直したり。家の隙間風が!なんてこともなくなり冬暖かく過ごせているそう。
「こちらは冬寒くなるんですよ。雪が降るなんてところまでは寒くはないのですが、海風が強く山に吹きつけるんです」
「それは大変ですね」
「はい。その強い風が建物を壊してしまい王宮では中々直してあげられず」
魔法使いがいないに等しかったそうだ。くま族は王様でも魔力量十万ない。庶民はもうね……
「自国の魔法使いがいなくともロドリグ様が派遣してくれています。病もケガも心配は少なくなりました」
「ほほう……」
ひとり城付きで出向だそう。当番制で何ヶ月かに一回交代しているそうだ。
「よかったですね」
「ええ、いつか自分の国で雇えればと考えています」
「きっとすぐですよ」
「はい。エリオス様が頑張ってくれればですかね?」
「あはは。頑張ります」
なんてことがあったのを報告した。
「ならばよい」
「はい」
こんな僅かな時間で地面は整地され平らになって行った。
「はや……」
「だろう?ふっ」
エリオスって不安そうな声。
「こんなに凄いとなんか見返りって言われたらどうしよう」
「ああ。俺たちは捧げたくはない」
「猫族の夜伽探しとく?」
「そうだな……父上に見繕って貰うか?」
「うん。一応相談を……」
俺たちはヒソヒソと不安を消す話し合い。
「聞こえてるぞ。んなことは言わん。適当に自分で物色する。まあお前らの気が変わるのであれば嬉しいがな」
「ゔっ。変わりません。俺はセリオがいれば」
「僕も!」
フンと鼻を鳴らし、
「気長に待つよ」
「……待たなくていいです」
街の開拓は始まった。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします
muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。
非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。
両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。
そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。
非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。
※全年齢向け作品です。
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
召喚先は腕の中〜異世界の花嫁〜【完結】
クリム
BL
僕は毒を飲まされ死の淵にいた。思い出すのは優雅なのに野性味のある獣人の血を引くジーンとの出会い。
「私は君を召喚したことを後悔していない。君はどうだい、アキラ?」
実年齢二十歳、製薬会社勤務している僕は、特殊な体質を持つが故発育不全で、十歳程度の姿形のままだ。
ある日僕は、製薬会社に侵入した男ジーンに異世界へ連れて行かれてしまう。僕はジーンに魅了され、ジーンの為にそばにいることに決めた。
天然主人公視点一人称と、それ以外の神視点三人称が、部分的にあります。スパダリ要素です。全体に甘々ですが、主人公への気の毒な程の残酷シーンあります。
このお話は、拙著
『巨人族の花嫁』
『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』
の続作になります。
主人公の一人ジーンは『巨人族の花嫁』主人公タークの高齢出産の果ての子供になります。
重要な世界観として男女共に平等に子を成すため、宿り木に赤ん坊の実がなります。しかし、一部の王国のみ腹実として、男女平等に出産することも可能です。そんなこんなをご理解いただいた上、お楽しみください。
★なろう完結後、指摘を受けた部分を変更しました。変更に伴い、若干の内容変化が伴います。こちらではpc作品を削除し、新たにこちらで再構成したものをアップしていきます。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
狼くんは耳と尻尾に視線を感じる
犬派だんぜん
BL
俺は狼の獣人で、幼馴染と街で冒険者に登録したばかりの15歳だ。この街にアイテムボックス持ちが来るという噂は俺たちには関係ないことだと思っていたのに、初心者講習で一緒になってしまった。気が弱そうなそいつをほっとけなくて声をかけたけど、俺の耳と尻尾を見られてる気がする。
『世界を越えてもその手は』外伝。「アルとの出会い」「アルとの転機」のキリシュの話です。
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
僕のユニークスキルはお菓子を出すことです
野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。
あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは??
お菓子無双を夢見る主人公です。
********
小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。
基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。
ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ
本編完結しました〜
婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》
クリム
BL
「婚約を破棄します」相手から望まれたから『婚約破棄』をし続けた王息のサリオンはわずか十歳で『婚約破棄王子』と呼ばれていた。サリオンは落実(らくじつ)故に王族の容姿をしていない。ガルド神に呪われていたからだ。
そんな中、大公の孫のアーロンと婚約をする。アーロンの明るさと自信に満ち溢れた姿に、サリオンは戸惑いつつ婚約をする。しかし、サリオンの呪いは容姿だけではなかった。離宮で晒す姿は夜になると魔獣に変幻するのである。
アーロンにはそれを告げられず、サリオンは兄に連れられ王領地の魔の森の入り口で金の獅子型の魔獣に出会う。変幻していたサリオンは魔獣に懐かれるが、二日の滞在で別れも告げられず離宮に戻る。
その後魔力の強いサリオンは兄の勧めで貴族学舎に行く前に、王領魔法学舎に行くように勧められて魔の森の中へ。そこには小さな先生を取り囲む平民の子どもたちがいた。
サリオンの魔法学舎から貴族学舎、兄セシルの王位継承問題へと向かい、サリオンの呪いと金の魔獣。そしてアーロンとの関係。そんなファンタジーな物語です。
一人称視点ですが、途中三人称視点に変化します。
R18は多分なるからつけました。
2020年10月18日、題名を変更しました。
『婚約破棄王子は魔獣に愛される』→『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』です。
前作『花嫁』とリンクしますが、前作を読まなくても大丈夫です。(前作から二十年ほど経過しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる