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二章 緑の精霊竜として

8 かわいい!

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 クオールの提案を受け入れ、次の発情期を迎えやりまくった。寝食忘れてやりまくったんだ。ここまでして出来ないとは言わせねえとばかりにね。

「あのさ、どのくらいで妊娠が分かるんだっけ?」
「ひと月後くらいですかね」
「そっか……」

 僕は多少の公務をこなしながらその日を待った。そして……なんともない。毎日つわりは?と確認しても食事は美味しいんだ。クソッこれ出来てねえな!

「まだちょうどひと月ですよ。心配なら侍医を呼びましょうか?」
「そうして!ミレーユ」

 侍医のヨルクは魔力を通したり色々して検査してくれた。結果は?

「リシャール様、赤ちゃんですが、お腹にお見えではありませんね」
「マジか!嘘でしょ?」
「いいえ。気配がございません」

 嘘でしょ……一週間やりまくったのに。侍医のヨルクは発情期にすれば確実に出来る物ではございません。排卵日ではございますが、何回か挑戦してもらわないとですねと、優しげな声で残酷なことを……シクシク

「赤子に民も貴族もございません。出来やすい人は一発ですが、普通は一年通していたした結果ですよ」
「はい……あまりに期待してましたので残念でなりません」

 ヨルクはそうですなあ。あんまりストレス溜めてガツガツやっても出来にくいですから、発情期の四日目五日目に試したらいいかと。一番盛りますから、そこが排卵の時期かと思われています。ですからねって。

「はい……頑張ってみます」
「ええ。思い詰めてもいけません。穏やかな気持ちで臨んで下さいませ」

 そして次の発情期。

「リシャール……」
「なに?」
「俺我慢できないと思う」
「いいよ?来て」

 ロベールの目はギラついて股間は待てないのか先から漏れてる。僕も同じでお尻からは溢れてる。

「ロベール赤ちゃんちょうだい」
「ああ。そんなに欲しいなら受け取れ」

 愛撫もなにもなく僕に跨りずくんと押し込まれた。いい……堪んない快感が全身に走り腰が反る。

「この濡れてるのに入れるのは堪らない。中もいつもより熱くて……ハァハァ我慢出来ない」
「うん。ロベール来て」

 四日目五日目と仕事を休んで子作りに励んだ。

「さすがにキツい匂いになってますね」
「ごめん。本気で赤ちゃん欲しくて」

 クオールは朝窓を開けながら、ケホケホと咳き込み、出来るといいですねって。うんとヨレヨレになりながら返事した。そしてひと月後、侍医のヨルクを呼びつける。

「はいはい。では診ますね」
「はい!」

 今回は少しだるいし浮腫んでるような気もするから、きっとね。そんなにガツガツしなかったし。

「ふむふむ……なにか核のような……たぶんいますね」
「やった赤ちゃん!」

 結婚して二年弱、とうとう赤ちゃんだ!ヨルクに暴れちゃ駄目ですと叱られた。

「まだこのまま育つか分かりません。生まれるまで半年ですから、つわりが始まるまで油断は出来ません。そしてつわりが終わるまでは安静に。公務もお休みして下さいませ」
「はい!」

 そこまで過ごせれば後は大丈夫。半年後を楽しみにねって笑った。んふふっ楽しみーッそして三日後……

「ミレーユ気持ち悪い」
「耐えてくださいませ。二週間くらいですから」
「うん」

 僕は自分のベッドに横たわっていた。うんうん唸ってうるさいかし、ロベールの迷惑になるからね。そしてロベールのシャツとか枕とかを持ち込んでいた。巣作りだ。匂いがないと不安になるんだもん。

「寝てないのでしょう?少し寝ましょうね」
「うん」
「服も増やしますか?」
「うん」

 ロベールの服を増やしてもらい、眠りの魔法をミレーユが掛けてくれて眠る。でも二時間もすると気持ち悪くて目が覚める。食事も欲しくなくて果物だけを少し食べて耐えていた。

「リシャール様、お肉も野菜も召し上がって下さい」
「でもねヨルク。食べるとオエッてなるんです」

 そうだろうけどもと苦笑い。

「ゆっくり時間がかかってもいいですから、スープなどで栄養を取って下さい」
「はい」

 それと気休めの吐き気止めの薬湯です。効く人と効かない人の差が激しいですが、ないよりマシでしょう。置いておきますねって。つわりは病気ではないから我慢ですよって。

「みんなこんなになるの?」
「そうですなあ。大体こんなですね。まあひたすら食べたくなる人もいるし、リシャール様と同じように食べられなくなる人。そしてなにも出ない人、最悪入院する人と様々です」

 僕は標準だから後一週間頑張りましょうって。一応栄養補助の砂糖菓子を用意しました。甘いからお湯に溶かしても、そのままでも食べなさいと。

「はい。ならひとつ」

 口に入れると角砂糖なんだけどなんだろう……なんとも言えない毒の香り……あの発情期の毒のような香りがちょっとする。

「薬草が混ざってますから似た香りがしますかね」
「まあ、アレよりずっと美味しいからいいかな」
「あはは。リシャール様が毒とかいって広めたから若い方があれを「毒の薬」とか呼ぶ流行りが出来てますよ」
「本当ですか」
「ええ」

 いやね。確かに毒のような不味さですけど、高価な薬草や魔力も使われてる良い薬なんですよ?あれの中にとても苦い物と、臭い薬草が含まれてて、それが全体を「毒っぽく」するんですと説明してくれた。

「抜いたらダメなの?」
「全く効かなくなります。あのふたつが主成分と言ってもいいくらいなんです。代替は探し続けてますが、どの国も見つけていません。いつかを期待して下さいませ」
「はーい」

 そして診察から十日後。肉美味い!野菜格別に美味い!朝からガツガツ食べていた。何食べてもこの世のものとは思えないくらい美味しい。

「リシャール、ヨルクに言われたろ?妊娠中は体がむくみやすいから食べすぎると太るって」
「はーいおかわりは控えます」

 ロベールに見張られて、あんまり食べられなかった。つわり明けに思いっきり食べてて、兄嫁のラウリル様にやめさせろと言われたそうだ。自分も食事が美味しくて、アルフレッドにうるさいって怒鳴って食べてたら、本気で太って後が大変だったそう。お腹だけぽっこりになって、妊娠前のズボンが全部履けなくなっていたそうだ。それは不味い。

 それでなくとも僕は能力に疑問が付くのに姿まで残念とか、ロベールが罰ゲームみたいになるもん。余計ヘルナー一派の残党に何言われるやら。

「ミレーユ。おやつ小さいし少ない」
「太りますからね」
「はい……」

 なんか野菜スティックがあるんですけど?お茶会にあるまじきおやつ……後はナッツとフルーツだけ。小麦粉や卵のお菓子はどこ!

「ありません。リシャール様お顔が丸くなって来ましたから」
「ゔっ……」

 翌日はピクルスとか塩漬けの野菜も増えた。お茶会の楽しみが根こそぎ消えた。料理長のオレンジのチョコレートケーキは?カスタードクリームたっぷりのフルーツタルトがおおぅ……

「リシャール様はそれほど太ってはいないのですが、むくみが強く出てるそうなんです。だから甘いものしょっぱいものとか駄目で、味を薄くしろと、ヨルク様から指導が入りました。体質でしょうね」
「はい……」

 お庭のガゼボで野菜スティックを見て呆然としていると、あはは私と同じ目にあってますねとラウリル様。後ろにはオリバー様。相変わらずおふたりとも美しい。
 僕は最近食堂に行ってないんだ。みんなと同じものが食べられないから目に毒でね。今日は気分転換でガゼボでお茶をしてたんだ。

「食事の時会わなくなったから心配してました。少し……浮腫んでますね」
「ええ。産めば治るって言われましたけど」

 それはそうだよって。もう少しだから頑張れって。一緒にいい?って、どうぞと三人でお茶会。おふたりは自分の時の話をして下さった。

「あんまり気負わなくても大丈夫。神経質に考える方がよくないですよ」
「分かってるんですけど、赤ちゃん楽しみなくせに欲望にも負けてしまって……あはは」

 それとねってオリバー様が大きなカゴをくれた。布が掛けられていて、取ってみてって。布を取ると、うわーっ

「オリバー様の手作り?」
「うん。僕得意なんだ。だからあなたの竜の背の小花とか野草を刺繍しました」
「なんて素敵なの……」

 かわいいエプロンとか靴下にミトン。僕出来ないからお店に発注してたんだ。えへへ

「ありがとうございます」
「いいえ。こんなことぐらいしか出来ないから」
「私からはこれ」

 ラウリル様からは小箱をもらった。箱を開けると僕の瞳の色の、青い宝石の揺れるピアスだった。

「赤ちゃんだけでなくあなたにもね」
「ありがとうございます。とても嬉しいです」

 アンの兄弟がいなかったから、こんな気遣いがあるなんてと感動した。兄上はまあね、脳筋で今の状況を理解しないのか、差し入れだと街の有名お菓子屋さんのお菓子セットをくれた。食えねえんだよ!仕方なく空間魔法のお部屋にペイッ産んでから食うしかねえ。一瞬兄の嫌がらせかと思ったもん。兄嫁様からは赤ちゃんのケープが届いたんだ。かわいい編み物のでね。兄上だけがクソ。

「もうすぐだよね。冬に生まれるから歩く頃には夏だ。いい季節に赤ちゃんを外に出せるから楽しみだね」
「ええ。もう毎日楽しみです」

 それから一時間くらい他愛もない話をしてまたねって。ふたりともいい人過ぎた。アンの兄弟ってこんななんだね。なんて素敵な関係だろう。結婚してよかったと本気で思ったもん。そして二ヵ月後に割と安産で産まれた。

「リシャール様、一見お腹へっこんだだけみたいに感じますが、魔力も体力も失ってます。三週間はベッドで過ごして下さい。食事もここでね」
「はい」

 その後は普段通りでいいですが、夜の方は次の発情期が来るまで不可。自分でするとかもなしですよ?と念を押された。特にロベール様、夫は長い間出来ないから辛いでしょうが、大切な奥様ですから我慢してって。

「そこはバッチリ!俺我慢得意だから」
「嘘つけぇ!」

 と、アルフレッド様たち。朦朧と好みの文官を抱き締めてたろ!って。

「いやあれは……リシャールと間違ってさ」
「まあ、あの子が抑制剤飲むのが遅れたらしいから仕方ないが、あのくらいのほんのりした匂いに負けるなんてだらしない」
「クッ……言い訳しません」

 市井の浮気第一位、妻の妊娠中から出産後にかけてだそう。お金のある人はお店へ、それ以外は……あはは。まあ、大半の人が我慢するのが普通だ。旦那様にしてやれることは色々考えればあるから。まあ、浮気する人はどちらも足りないんだろうけどね。

「ロベール」
「ごめん……」

 そして三ヶ月後もすると赤ちゃんはとてもかわいくなった。あんまり夜中に泣かなくなってね。乳母はこの子は大人しいてすねって。

「そう?リーンハルト大人しいってさ」
「ンーッ」

 声を掛けるとバタバタと手足を動かして反応するんだ。もう食べちゃいたいくらいかわいい。でもこの子が生まれてすぐに僕は魔力を流し小花を探した。でもそんな印は出なかったんだ。アンリ様も来てくれて、普通の子どもだと言ってくれた。よかった僕は不安だったんだ。

「火竜に変身出来るかはだいぶ先にしか分からないが、この子はノルンだ」
「おおっ」

 赤ちゃんの性別は本当に分からない。育てばそりゃあね。でもアンリ様は鑑定出来るんだ。

「ノルンだってさ」
「ああ、俺によく似ている」
「うん」

 白金はロベールで巻き毛は……僕の血だね。どんな子になるかなあってとても楽しみだったんだ。産んでからの僕はほとんど子ども部屋に常駐した。離れたくなくてね。てもそろそろロベールがキレる頃だし、解禁も近いだろうってヨルク様。そして久しぶりに夜、子ども部屋ではなく、ロベールの部屋に向かった。








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