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六章 そして行き着いた

8 ナムリス復活

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 そして四ヶ月が過ぎた。ナムリスは毎晩決まった時間に錯乱状態になり、扉や窓を叩き割ろうとして無言で大暴れ。仕方なく騎士に中にいてもらって朝まで警護してもらっていた。

「なんだろうスッキリする……?」

 ナムリスの目覚めの一言。

「おはようナムリス」
「おはようキャル。かすみがかかったような気分でいたんだが、今朝なくなったんだ」
「ほんと?」
「ああ」

 僕は喜びのあまり居間に走り込んで騎士に侍医を呼んで!と頼んだ。そして診察の結果は。

「ふむ。キャル様、あなたの匂いを強く出して貰えますか?」
「え?どうやるの?」
「エロいことでも考えて下さらば」
「へい……」

 ナムリスとの閨を思い出して……っと。むわ~んと放出。

「旦那様どうですか?」
「……ちんこ痛い……お!勃ってるぞ!」

 ズボンを引っ張って確認してる。

「完治と考えていいでしょうな」
「やったあ!」

 もう大丈夫だとは思いますが、なにかあればお声がけをと、侍医はニコニコ出て行った。

「なあキャル。俺どうしてたんだろう……記憶が不鮮明で…あんまり覚えてないんだ」

 呟きながらナムリスは外をチラッと見て驚愕した。

「なんで葉っぱが黄色いんだ!てか寒いぞ」
「そりゃあクソババァが死んで四ヶ月経ちましたから」
「え……そんなに経ったのか。それとキャル、いくらなんでも母をクソババァはないだろう」
「クソババァで充分です。あなたをここまでおかしくさせて、僕から奪おうとするやつなんざババァでも贅沢です」

 はあ?って目を丸くして、盛大に笑った。

「おかしいですか?」
「あはは……すまなかったな。お前少し痩せたか」
「ええ、あなたを失いたくなくて頑張りましたから。セックスも四ヶ月してませんし、自分の屋敷にも帰ってません」
「え……ごめん」

 まあいいや、僕のナムリスが戻ったから。

「ナムリス……」
「うん」

 僕は抱きついてキスをチュッと軽くすると舌が…んふん……あふっ………

「ごめん。そしてありがとう」
「ううん…あん」

 そのまま抱かれたが体力不足のため一回でナムリス撃沈。僕も寝不足で弱ってハァハァ……ムリ。

「嘘だろ……ハァハァ……体がだるい……」
「四ヶ月部屋からほぼ出ずに寝てたんですから当たり前ですぅ……ハァハァ…」
「そうか……そうだったな…薄っすら思い出した……ハァハァ…」

 腹減った…ものすごく腹が……とお腹をさする。

「急に食べると吐きますよ」
「分かってるよ」
「それと僕は一度帰りますね。カミーユが待ってるから」
「あっそっか……なあ、もう一晩いないか?」
「まあ、今晩までね」
「それでいい」

 復活したナムリスは以前と同じように執務室に行って、この四ヶ月の書類を必死で読んで頑張った。フェルナンや文官にも謝罪してね。その間僕は一度屋敷に帰ってヘラルドに明日帰ると報告。

「よかった…旦那様復活ですね」
「うん」
「うちの旦那様も戻って来るんだ……よかった」

 ヘラルドはふらついてバタッも倒れた。ぎゃあ!

「ヘラルド!どうしたの!」
「眠い……旦那様の肩代わりは無理です……寝不足で死ぬ……」
「あらら……ごめん。昼食に戻ってその後来て夕食に戻ったら、明日まで戻らないからもう少しお願い」
「あーはい」

 それまで寝てこいと追い出して、文官に進捗しんちょくを聞いてやれるところまでやった。

「ゲッ!この手紙は!王の晩餐会を欠席してしまった!」
「ふふっぼくとヘラルトで出席してるから大丈夫だよ」

 手紙を握りしめていると声がして顔を上げた。

「カミーユただいま!愛してるよ!」
「キャル!」

 四ヶ月ぶりのカミーユ……いい匂い…僕の好きなりんごの香り……堪らん。嬉しくて唇を強く奪った。

「キャルし過ぎ…あん」
「ごめん。嬉しくて…愛してる。話は明日以降にね」
「ふふっうん。愛してる」

 ならぼくは邪魔にならないようにアンリたちと遊んで来ると出て行った。僕はお昼を食べに戻ったりを繰り返し深夜。

「うっ……ナム……も…」
「俺は、禁断の体力戻しの薬湯飲んだから諦めろ」

 ぎもぢいい……ナムリスの匂いにちんこに僕は耐えられず、吹き出した。いや、漏らした。

「いい……キャルとのセックスは誰よりもいい…あはは」
「あう……ぎもぢい……」

 変な薬のんだみたいだけど平気なのかな?と蕩けて回らない雀頭で思った。

「ナムリス、その変な薬……ふぐっ!」

 後ろから奥に押し込まれて気持ちよくてぺちょっと潰れた。もうムリ……ビクビクが止まらん。

「侍医にも相談したからな。ギリギリを攻めた」
「そう…なの…ね……」

 グイッと腰を捕まれ持ち上げてくるりと裏返され目が合う。

「愛してる。そしてありがとう」
「うん。ナムリス」

 いつもの…いや少しやつれてるけど、僕をどこかおちょくる余裕のある美しいナムリス。

「嬉しい……僕はクソババァから取り返したんだ……」
「お前ねぇ、その言い方はさあ」
「それだけのことをあの人はしたんだよ!死んでまで僕に嫌がらせするなんて親じゃない!」

 僕がどれだけ辛かったか……ナムリス酷いよ……愛しい人の弱った姿、僕が隣にいるのに認識してもらえない悲しさは……

「そんな気持ちは……クソババァには分からねぇんだよ!僕いがるのにあなたには見えてないことが、どれのほど辛いか!」

 いないんじゃないんだ!触れて見つめても見えてないなんて!うわーん!僕は本気で泣いた。今まで我慢したものが溢れた。ちんこ突っ込んだままだけど頭を駆け巡り泣いた。媚薬を凌駕する悲しみに泣いた。
「お前ねぇ」はクソババァを庇う言葉だ!許せん!ナムリスのばかあ!!思いの丈を支離滅裂に叫んだ。自分でもなに言ってるか分かんなかったけど、ババァムカつく、ナムリスもムカつく!は分かる。

「キャル!落ち着けよ」
「うるせえ!どれだけ僕が辛かったか分かるのか!無視されることが、目に映らないことが僕には死よりも苦しかった!こんなに苦しいのにあなたは理解してくれない!身を切られるくらい切なかったのに……うわーん!」
「……ごめんな」

 泣き叫ぶ僕を悪かったと優しく抱き寄せた。

「ナムりずぅ……ぼぐを見でぇ」
「見てる。誰よりもお前を見ている」
「ほんどぉ?グズっ」
「ああ」

 誰よりもお前を愛している。落ち着けと暴れる僕を強く、強く抱いた。

「俺の番になってくれ」
「うん……うん?」

 疑問に思ったその時痛みが!ガブッとうなじを噛まれた!
 うそ……ナムリスの魔力が流れてくる……キキョウの香りと……りんごの……あっあ…なにこれ……カミーユと違う……はう……蕩ける幸せが流れ込む……頭が真っ白だ。

「キャル?」
「う…あ……あ…」

 言葉が出ない。すごく気持ちいい……ふわふわする。ノルン同士で番になれるなんて…不思議な気分だ。

「キャル俺の声が聞こえるか?」
「うん…気持ちいい……」
「これで番成立だ。すでに番同様ではあったが、これは四賢者の特殊能力で、アン、ノルン選ばず番になれる古の能力だ」
「そう…なんだ」

 まあ聞いてくれってナムリスは勝手に話し始めたが、ふわふわした頭で聞いていた。

 四賢者が王と同等の権力を持つ公爵なのは、この能力のためだ。これは王族特有の能力で、子孫繁栄の力。
 女性がいなくなった後出現したらしい。これは王族の安定、繁栄を確かなものにする能力で、ひとりがたくさんの番を持つことが出来るもの。王の味方を確固たるものにするのに役立つそう。王族の番がいることによって、その家ごと取り込むことが出来るからなって。哀しい歴史の末に身についたもので、あの時代のアンの犠牲によるんだそう。

「へえ……」
「お前にもその能力があると思う」
「え?僕に?」
「ああ、お前俺とカミーユを番に出来ただろ」
「あ……そうだね」

 お前は俺の後を継がなければならないと思うと悲しそうに話す。これは賭けだったんだ。お前が反応しなければ、このままあちらの公爵で過ごせたんだがなって。

「本気で言ってる?」
「うん。ライリーには発現しなかったんだ。そして今世代俺の身内にはいない。お前がいるから」

 世代にひとりしか生まれないそうだ。僕がどこかで死ねばライリーから生まれるか、お前の子の誰かに発現するはずだって………え?

「たぶんアンリが候補だろう。あの子は大人の匂いが分かるからな」
「なら……こちらにアンリを……」
「あれが受け継ぐ頃に俺は死んでいる。このさき二十年はい切れるかどうか。ムリだろう」
「あ……あはは……どうすればいいの?」

 そうだなあ、今から兼任だなって。アンリがせめて二十歳を超えるまでなって。ゲッフウ長げぇよ。十年以上あるだろ……まだ王都の学校にも行ってねえのに。

「まあ、俺はまだ元気だし、ゆっくりでいい。初めはこちらの歴史、王家の成り立ちとか覚えていけばいいんだ。そしてアルカイネの公爵に十年後くらかな。そしてアンリに譲れ」

 あれぇ?僕の人生とは……自分でなにも選べず流されてないか?というか、産まれた時から決まってた?貴族は当然といえば当然だけど、僕は後出しが多すぎる!

「お前はそういうのが判明する時期に野に下ってたからだ」
「シクシク……分かってるけど」

 違う涙出て来た。僕かなり可哀想な子じゃないか?貴族から平民、また貴族。そして王族……頭がついていかない!






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