41 / 83
三章 自分を知ること
10.こんな時間もいいのかな
しおりを挟む
ジョナサンが扉を開けると、きゃあって叫び声。何事?カミーユはその声にビクッとして固まった。
「ライリー黙れ」
「父様はどうでもいいや。兄様、カミーユ様!早く!」
「ああ、うん」
さあさあとソファに座らされた。テーブルには先程のワインと、他も。簡単なツマミとフルーツがある。メイドはこんな突発は慣れているようで、普通に給仕している。まあ、慣れるか。
「兄様は甘いお酒が好きって聞いたから、ジャーン!これ全部甘いんだよ!」
ワゴンにたくさんのボトルがある。当然見たことないレベルのものばかりだ。
「すごいね。こんなに種類あるんだ」
この国の甘いワインと他国のもの。コレは甘くないけど、東の国のお酒だよって。僕は一本手に取ってみた。
「ラベル読めないね」
「うん。コレはさすがに僕も読めない」
お米からのお酒だそう。果物以外からも作れるのか。
「コレはビール。フルーツや香辛料の香りが付いている麦を発酵……だと思う。あとなんか草。苦いんだけど美味しい」
少しずつ飲んでみよう!って試飲会みたいになった。僕らはどれも飲んだことはないから、色と香り味と楽しんでいた。
「ねぇねぇどれがよかった?」
「そうだなあ、貴腐ワインはどれも美味しいよ。この金色のラベルのは甘すぎかな。食事にはキツい」
「ほうほう。コレは最も北国のものだね。その分甘い。食前に飲むのがいいかもね」
「うん」
他は?カミーユ様は?とずっと喋ってる。止まらない……
「キャル分かっただろ。延々に喋ってるぞ」
「ええ、ここまでとは思いませんでした」
カミーユの隣に座ってライリーは楽しそうだな……というか、カミーユが楽しそう。
「カミーユに友だちは?」
「いますが、年に数度会えば良い方ではないですかね」
「同じ属性の友だちいるのか」
「はあ……聞いた事ないです」
ふたりできゃあ!うわあとか本気で楽しそう。こんなに騒いでるカミーユはあまり……いや初めて見た。
「お前はふたりの邪魔だからこっちに来い」
「はい」
よく分からないけど盛り上がっているから、僕は父上の隣に座った。
「年が離れてるのによく話題が合うな」
「あ~なんだろうな。奥様会もここまで騒がないが、似たようなもんだ」
このお酒はあの食べ物と合いそうだよ?とか、ライリーの趣味の話しと、ひとところにとどまらず、流れるように議題が変わってく。
「僕をもてなす会のはずたけど、まあいいか」
「忘れたろ。ライリーはいつもこんなだよ」
父上とふたりで飲みながらライリーたちを眺めた。楽しそうに抱き合ったり、手を繋いでそうだよねえ!とか。
「酒飲むとお前はフィデルとよく似た匂いがする」
「そうですかね」
「うん」
体温が上がるから、番を誘う匂いは出てしまう。仕方ないものだよ。
「お前は匂いは似なかったなあ。俺は柑橘系の甘さだから」
「そうですね。僕は花のような感じですかね」
この匂いは属性関係なく、先祖の誰かに似るんだ。一族の匂いだから、近いんだけど少しずつ違うのが普通。このご時世、血の繋がりが全くない家から伴侶を娶るなどない。
遡れば貴族はどこかでみんな身内。近いか遠いだけだ。
きゃあきゃあと楽しむふたりを見てると、僕まで楽しいような気分にしてくれる。カミーユが爆笑して涙流してるのなんて始めてし、弟は止まらない……すごい。
「ライリーはいつもこれ?」
「ああ。ここまでではないがこんなだな」
「カミーユと気があったんですかね」
「そうだろうな。ここまで楽しそうなのは俺も初めて見る。夫や家族ではここまでならない」
「ふーん」
父上は慣れているのかいつもの光景だという感じ。なら僕んち来ない?明日でもさってカミーユは誘われてる。
「キャル。行ってもいい?」
「どうぞ」
ああ?ってライリーが頬を膨らませた。
「兄様も来るんだよ!」
「ええ?」
僕が父上を見るとまあいいだろう、俺も行くさって。
「いいのですか」
「ああ、どうせあいさつにも行くし」
「やったー!カミーユいいって!」
「うん。なら……」
ライリーは、すぐに僕らはどうでもいいと言わんばかりにカミーユと話し出した。
「妻が元気だと華やぐんだよ家がな。花が咲いたように賑やかで明るくなる」
「ええ」
屋敷でもそれは言われた。キャル様が来てから華やいで楽しいとメイドも側近もね。カミーユは寂しかったんだろうなあ。
笑いすぎて咳き込んでるよ。それほど楽しいならここに来た意味があったね。
僕らふたりは完全に蚊帳の外。
「あちらの家族はなんだ。うちに比べれば堅苦しいと思う」
「いや……コレ許してるあなたが問題なだけでしょうよ」
「そうか」
先触れもあったもんじゃなく来るし、気がついたら帰ってるし。ライリーが好き勝手やっているのを父上は咎めない。ちょっと嫌な顔するくらいだから、そりゃこうなるさ。
「お前の屋敷にも魔法陣設置するからな」
「え?」
「え?じゃない。家族なんだから行き来はしたいだろ」
「はあ。うちに来てくださるんですか?」
「は?」
行くでしょって。本当は一緒に住みたいくらいなのを我慢してるのに、行くに決まってるって。……ふふっ嬉しいかも。
「ありがとう存じます」
「感謝される事ではない。当たり前なんだよ」
「はい。なら僕も来ます」
「ああ、待っている」
ふたりともさすがに疲れたのか、勢いがなくなってきた。目がうつろで抱き合ってるし。
「カミーユ、僕あなたが好きだ。兄様抜きでも遊ぼ?」
「うん。いる間は遊ぼうね」
「うふふっ大好き兄様。あ~ねむ」
カミーユにもたれているうちにズルズルと滑り落ち、抱きとめていると側仕えが抱き上げた。
「そろそろお開きな。連れてけ」
「はい」
ライリーの側仕えは一礼すると部屋を出ていった。カミーユはそれを見送ると僕に向き直って、
「ごめんねキャル。あんまりにも楽しくて」
「いいよ。僕らも戻ろう」
「うん」
父上も俺も戻ると立ち上がった。
「楽しかった。また明日な」
「はい。おやすみなさいませ」
父上は手をひらひらさせて側近たちと出て行った。
「ボクラも行こう」
「うん」
ふらふら千鳥足のカミーユを支えながら部屋に戻った。
「お風呂は?」
「入る」
「少し休んでからにしようよ。フラフラだろ?魔法にする?」
「やだ!」
「はいはい。なら歩いて」
「うん…うっ……歩いたら酔いが回る……ヒック」
困ったもんだね。まあ、移動がある訳じゃなしいいか。僕が支えてる間にメイドが服を脱がせた。
「ほら」
「う…ん」
「浴槽入ると良くないから、身体だけ洗ってね」
「うん……」
メイドは心配そうになって、僕に目配せを送ってきた。
「キャル様、あの……」
「僕が支えてるからちゃちゃっと洗って」
「はい」
メイドは早く手を動かして洗ってくれた。無理して入らなくてもいいのになあ。
「ねえお尻も」
「え?」
「したいの!……くふぅ……」
「だそうだ」
指入れてしたフリしとけと小声で。メイドはうんって頷いた。したくて風呂か、でもねぇ。
「あ…う…んぅ…」
「ちょっとでいいから」
「はい」
体を流して脱衣所のメイドにカミーユを渡した。
「寝かせておいて」
「はい」
くふぅ…うぅ……酔っぱらって声が漏れていた。もうダメそうね。
「さて、僕はゆっくり入ろ」
湯船に浸かりふう。
ライリーか……頻繁に会えそうな人が近くにいるのは、カミーユも嬉しいか。あれほど仲良く出来るんだからね。カミーユにとってはいい出会いだったんだろうなあ。
「さてと、流してくれ」
「はい。こちらへどうぞ」
洗って貰いながらガイナスは嬉しそうな顔をした。
「あんなカミーユ様初めて見ました。キャル様との結婚は、カミーユ様にとって幸せなものなんだって。よかったと感じます」
「そう思う?」
にっこり笑って僕にありがとうって。
「いつも寂しそうだったんです。笑うのはご兄弟が来た時だけでしたから。それが弾けるように笑われて、あんなに酔っ払って」
「そうか」
「そうです」
ならば僕にも多少の価値はあったんだね。誰かにとって価値がある。ふふっちょっと嬉しい。お風呂を上がって部屋に戻ると、メイドが風呂上がりの水を用意していた。
「お酒が抜けるって、こちらのメイドが持ってきました。どうぞ」
「ふーん」
ゴクリ。うん普通に果物の味がしてうま……あ?グラスを眺めてしまった。
「変な苦さがあるような……微妙なお味」
「こちらでは深酒の時に飲むそうですよ。薬草が少し混じっているそうです」
「ふーん。まあいい」
ゴクゴク飲みきった。ぷはあ。冷たいだけで美味しく感じるよ。苦いけど。
「カミーユにも飲ませた?」
「はい。あの様子では苦しいかと思いまして」
「ありがとう」
「いいえ。幸せそうなカミーユ様に、我らはキャル様に感謝しています」
「そうか」
目を閉じると眠い……くらっとめまいに似た感じがして……ぐう。
「……さま……キャル様」
「んあ……なに?」
肩を軽く揺すられて?なんだよ。
「寝室に参りましょう。ここで寝られますと風邪引きますよ」
「あ~……ふう」
仕方ないと立ち上がり寝室へ。扉を開けると薄明かりに照らされたカミーユだけど、何だろなこの寝相は。ほぼ大の字で、暑いのかパジャマも捲りあげて、ズボンに片手つっこんでるし。
「色気も何もないな」
足元に布団を蹴り出してるから引っ張って、隣に寝転んだ。少し寝息も大きいな、飲みすぎたよ全くもう。手の位置を戻してよし寝るか。
僕はサイドテーブルの魔石に触れ、灯りを消す。部屋は暗くなり、月明かりのみになった。
「ふう。なんか現実感ないな……」
心がこの変化について行ってるようで、そうでないようで……今までのことがゆらゆら目の裏に思い出された。まあ、なるようになるさと思うことも大事なんじゃないと今は思う。
目を閉じると、酔いもあって思考は混濁していった。
「ライリー黙れ」
「父様はどうでもいいや。兄様、カミーユ様!早く!」
「ああ、うん」
さあさあとソファに座らされた。テーブルには先程のワインと、他も。簡単なツマミとフルーツがある。メイドはこんな突発は慣れているようで、普通に給仕している。まあ、慣れるか。
「兄様は甘いお酒が好きって聞いたから、ジャーン!これ全部甘いんだよ!」
ワゴンにたくさんのボトルがある。当然見たことないレベルのものばかりだ。
「すごいね。こんなに種類あるんだ」
この国の甘いワインと他国のもの。コレは甘くないけど、東の国のお酒だよって。僕は一本手に取ってみた。
「ラベル読めないね」
「うん。コレはさすがに僕も読めない」
お米からのお酒だそう。果物以外からも作れるのか。
「コレはビール。フルーツや香辛料の香りが付いている麦を発酵……だと思う。あとなんか草。苦いんだけど美味しい」
少しずつ飲んでみよう!って試飲会みたいになった。僕らはどれも飲んだことはないから、色と香り味と楽しんでいた。
「ねぇねぇどれがよかった?」
「そうだなあ、貴腐ワインはどれも美味しいよ。この金色のラベルのは甘すぎかな。食事にはキツい」
「ほうほう。コレは最も北国のものだね。その分甘い。食前に飲むのがいいかもね」
「うん」
他は?カミーユ様は?とずっと喋ってる。止まらない……
「キャル分かっただろ。延々に喋ってるぞ」
「ええ、ここまでとは思いませんでした」
カミーユの隣に座ってライリーは楽しそうだな……というか、カミーユが楽しそう。
「カミーユに友だちは?」
「いますが、年に数度会えば良い方ではないですかね」
「同じ属性の友だちいるのか」
「はあ……聞いた事ないです」
ふたりできゃあ!うわあとか本気で楽しそう。こんなに騒いでるカミーユはあまり……いや初めて見た。
「お前はふたりの邪魔だからこっちに来い」
「はい」
よく分からないけど盛り上がっているから、僕は父上の隣に座った。
「年が離れてるのによく話題が合うな」
「あ~なんだろうな。奥様会もここまで騒がないが、似たようなもんだ」
このお酒はあの食べ物と合いそうだよ?とか、ライリーの趣味の話しと、ひとところにとどまらず、流れるように議題が変わってく。
「僕をもてなす会のはずたけど、まあいいか」
「忘れたろ。ライリーはいつもこんなだよ」
父上とふたりで飲みながらライリーたちを眺めた。楽しそうに抱き合ったり、手を繋いでそうだよねえ!とか。
「酒飲むとお前はフィデルとよく似た匂いがする」
「そうですかね」
「うん」
体温が上がるから、番を誘う匂いは出てしまう。仕方ないものだよ。
「お前は匂いは似なかったなあ。俺は柑橘系の甘さだから」
「そうですね。僕は花のような感じですかね」
この匂いは属性関係なく、先祖の誰かに似るんだ。一族の匂いだから、近いんだけど少しずつ違うのが普通。このご時世、血の繋がりが全くない家から伴侶を娶るなどない。
遡れば貴族はどこかでみんな身内。近いか遠いだけだ。
きゃあきゃあと楽しむふたりを見てると、僕まで楽しいような気分にしてくれる。カミーユが爆笑して涙流してるのなんて始めてし、弟は止まらない……すごい。
「ライリーはいつもこれ?」
「ああ。ここまでではないがこんなだな」
「カミーユと気があったんですかね」
「そうだろうな。ここまで楽しそうなのは俺も初めて見る。夫や家族ではここまでならない」
「ふーん」
父上は慣れているのかいつもの光景だという感じ。なら僕んち来ない?明日でもさってカミーユは誘われてる。
「キャル。行ってもいい?」
「どうぞ」
ああ?ってライリーが頬を膨らませた。
「兄様も来るんだよ!」
「ええ?」
僕が父上を見るとまあいいだろう、俺も行くさって。
「いいのですか」
「ああ、どうせあいさつにも行くし」
「やったー!カミーユいいって!」
「うん。なら……」
ライリーは、すぐに僕らはどうでもいいと言わんばかりにカミーユと話し出した。
「妻が元気だと華やぐんだよ家がな。花が咲いたように賑やかで明るくなる」
「ええ」
屋敷でもそれは言われた。キャル様が来てから華やいで楽しいとメイドも側近もね。カミーユは寂しかったんだろうなあ。
笑いすぎて咳き込んでるよ。それほど楽しいならここに来た意味があったね。
僕らふたりは完全に蚊帳の外。
「あちらの家族はなんだ。うちに比べれば堅苦しいと思う」
「いや……コレ許してるあなたが問題なだけでしょうよ」
「そうか」
先触れもあったもんじゃなく来るし、気がついたら帰ってるし。ライリーが好き勝手やっているのを父上は咎めない。ちょっと嫌な顔するくらいだから、そりゃこうなるさ。
「お前の屋敷にも魔法陣設置するからな」
「え?」
「え?じゃない。家族なんだから行き来はしたいだろ」
「はあ。うちに来てくださるんですか?」
「は?」
行くでしょって。本当は一緒に住みたいくらいなのを我慢してるのに、行くに決まってるって。……ふふっ嬉しいかも。
「ありがとう存じます」
「感謝される事ではない。当たり前なんだよ」
「はい。なら僕も来ます」
「ああ、待っている」
ふたりともさすがに疲れたのか、勢いがなくなってきた。目がうつろで抱き合ってるし。
「カミーユ、僕あなたが好きだ。兄様抜きでも遊ぼ?」
「うん。いる間は遊ぼうね」
「うふふっ大好き兄様。あ~ねむ」
カミーユにもたれているうちにズルズルと滑り落ち、抱きとめていると側仕えが抱き上げた。
「そろそろお開きな。連れてけ」
「はい」
ライリーの側仕えは一礼すると部屋を出ていった。カミーユはそれを見送ると僕に向き直って、
「ごめんねキャル。あんまりにも楽しくて」
「いいよ。僕らも戻ろう」
「うん」
父上も俺も戻ると立ち上がった。
「楽しかった。また明日な」
「はい。おやすみなさいませ」
父上は手をひらひらさせて側近たちと出て行った。
「ボクラも行こう」
「うん」
ふらふら千鳥足のカミーユを支えながら部屋に戻った。
「お風呂は?」
「入る」
「少し休んでからにしようよ。フラフラだろ?魔法にする?」
「やだ!」
「はいはい。なら歩いて」
「うん…うっ……歩いたら酔いが回る……ヒック」
困ったもんだね。まあ、移動がある訳じゃなしいいか。僕が支えてる間にメイドが服を脱がせた。
「ほら」
「う…ん」
「浴槽入ると良くないから、身体だけ洗ってね」
「うん……」
メイドは心配そうになって、僕に目配せを送ってきた。
「キャル様、あの……」
「僕が支えてるからちゃちゃっと洗って」
「はい」
メイドは早く手を動かして洗ってくれた。無理して入らなくてもいいのになあ。
「ねえお尻も」
「え?」
「したいの!……くふぅ……」
「だそうだ」
指入れてしたフリしとけと小声で。メイドはうんって頷いた。したくて風呂か、でもねぇ。
「あ…う…んぅ…」
「ちょっとでいいから」
「はい」
体を流して脱衣所のメイドにカミーユを渡した。
「寝かせておいて」
「はい」
くふぅ…うぅ……酔っぱらって声が漏れていた。もうダメそうね。
「さて、僕はゆっくり入ろ」
湯船に浸かりふう。
ライリーか……頻繁に会えそうな人が近くにいるのは、カミーユも嬉しいか。あれほど仲良く出来るんだからね。カミーユにとってはいい出会いだったんだろうなあ。
「さてと、流してくれ」
「はい。こちらへどうぞ」
洗って貰いながらガイナスは嬉しそうな顔をした。
「あんなカミーユ様初めて見ました。キャル様との結婚は、カミーユ様にとって幸せなものなんだって。よかったと感じます」
「そう思う?」
にっこり笑って僕にありがとうって。
「いつも寂しそうだったんです。笑うのはご兄弟が来た時だけでしたから。それが弾けるように笑われて、あんなに酔っ払って」
「そうか」
「そうです」
ならば僕にも多少の価値はあったんだね。誰かにとって価値がある。ふふっちょっと嬉しい。お風呂を上がって部屋に戻ると、メイドが風呂上がりの水を用意していた。
「お酒が抜けるって、こちらのメイドが持ってきました。どうぞ」
「ふーん」
ゴクリ。うん普通に果物の味がしてうま……あ?グラスを眺めてしまった。
「変な苦さがあるような……微妙なお味」
「こちらでは深酒の時に飲むそうですよ。薬草が少し混じっているそうです」
「ふーん。まあいい」
ゴクゴク飲みきった。ぷはあ。冷たいだけで美味しく感じるよ。苦いけど。
「カミーユにも飲ませた?」
「はい。あの様子では苦しいかと思いまして」
「ありがとう」
「いいえ。幸せそうなカミーユ様に、我らはキャル様に感謝しています」
「そうか」
目を閉じると眠い……くらっとめまいに似た感じがして……ぐう。
「……さま……キャル様」
「んあ……なに?」
肩を軽く揺すられて?なんだよ。
「寝室に参りましょう。ここで寝られますと風邪引きますよ」
「あ~……ふう」
仕方ないと立ち上がり寝室へ。扉を開けると薄明かりに照らされたカミーユだけど、何だろなこの寝相は。ほぼ大の字で、暑いのかパジャマも捲りあげて、ズボンに片手つっこんでるし。
「色気も何もないな」
足元に布団を蹴り出してるから引っ張って、隣に寝転んだ。少し寝息も大きいな、飲みすぎたよ全くもう。手の位置を戻してよし寝るか。
僕はサイドテーブルの魔石に触れ、灯りを消す。部屋は暗くなり、月明かりのみになった。
「ふう。なんか現実感ないな……」
心がこの変化について行ってるようで、そうでないようで……今までのことがゆらゆら目の裏に思い出された。まあ、なるようになるさと思うことも大事なんじゃないと今は思う。
目を閉じると、酔いもあって思考は混濁していった。
1
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
かわいそうな看守は囚人を犯さなければならない。
紫藤なゆ
BL
好色な王は忠実な臣下エメラードに命じる。敗戦者スクを上手に犯して見せるように。
苦悩する騎士エメラードと、命があればそれでいいスクは、看守と囚人として毎日を過ごす。
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる