上 下
75 / 104
四章 イアサント共和国 筆頭国イアサント王国

9.少し回復してきたかな?

しおりを挟む
「ぐう~……んかぁ……」

 僕が目覚めると二人は爆睡していた。僕が悪夢のたびに叫んだりして眠りを邪魔するからね。ごめんね、ジュスランの頬を撫でてチュッステファヌにも……

「大好きだよ、二人とも」
「ならもっとキスして?」

 首掴まれてんちゅうう……?起きてたの!まあいいかステファヌん~……ねろねろと……あふん……

「ルチアーノどうだった?」
「ハァハァ……うん。イアサントの過去を見せてもらったんだ」
「あ?いつ頃の?」
「ん~?成人前辺りからここに来る出発の日までかな?」

 ガバッと起き上がり僕をぎゅうっと抱いてワナワナ……

「あの野郎……俺のルチアーノに何しやがるんだ!」
「ステファヌ?」
「何ともないか?具合は?」
「うん、特に……でもほら」

 今のキスで勃起したのを見せた。

「うお!治ったのか?」
「うん……やり方とかは不味いけどまあ……」

 あったことを話して聞かせた。

「あ~……やり方他にねぇのか。それはまあ仕方ないと割り切るか、嫌だが。ちんこは魔力もらったからか?」
「だろうと思う。でも心の疲れからだから休めって。記憶を見せたのは人の心の醜さも知らないと理解出来ないし、分からないでは対処もし辛いからって」

 う~ん……とステファヌは唸って黙った。その間にうるせえぞとジュスランが起きて彼にも説明したらワナワナ……

「どうしてそういう事するんだよ……俺たちにはないかわいらしさがなくなったら……ヤダ!」
「ジュスランありがと。でも僕は変わらないよ。イアサントと同調したから彼の哀しさや辛さも、アデラールが心の支えのようになっていたのも感じた。二人と同じように支え合ってる部分があったんだ」

 そしてね、親に拒絶される苦しみがよくわかったよ。僕は親にあんな目で見られたら……ボロボロと涙が溢れた。

「あの目はキツかったろ」
「うん……存在を否定どころか死ねと……親がだよ?我が子に……」

 イアサントはそこまでだったのか。なら俺たちより辛かっただろうと想像はつくなと二人。

「俺たちも父上に見えてない時あったと話しただろ?あの時の孤独感は今でもトラウマだ。母はまあそれなりにかわいがってくれてたから余計辛かったよ」

 横になって抱き合いながら三人で話した。

「家族でいるのに孤独を感じるのはかなりきついんだ。一人ぼっちよりもきついと思う」
「うん、俺は父上が死んで二人になった時の孤独の方が楽だったよ……」

 うんうんと聞いてボロボロと泣いた。そう言えば僕は今まで辛かったのに泣いてはいなかった気がする。感情まで動かなくなっていた事に今気がついたよ。そろそろ夕食の時間だから帰ろうとジュスランが抱っこしてくれた。

「歩けるよ?降ろして」
「いい。甘えろよこんな時ぐらい」
「いや……階段長いし?」
「俺が代わるから心配するな」

 ならおんぶがいいと降ろしてもらってジュスランの背中に乗った。

「これなら最後まで歩けるな」
「んふふっ広い背中が安心する」
「そうか?」

 とても温かくてゆさゆさ揺れて……ねむ……

「ルチアーノ着いたぞ!」
「ジュスラン寝てる」
「え?」

 振り向くとくぅ~とか聞こえる。

「自分で寝ることが出来なくなってたから、俺たちが気が付かないで起きている時間も多かったのかもしれないな」
「そうだな、寝てるはずなのに目の下真っ黒で、起きて少しすると何でもない顔にしてたなあ。魔法で目の下のクマ消してたんだろう」

 俺には出来ないがルチアーノはなんか変な魔法使うんだよなぁ。

「ああ、あれ原理が分からんと出来ないんじゃねえの?」
「キスマーク消すのもさ。あれは医者とかの心得がないと出来ないはずなんだよ」
「ああうん、ポーションなら消えるけどな」

 ルチアーノの部屋に入るとイレールがどこか具合が!とか騒ぐからシーってベッドに運んで寝かせた。夕食までもう少しくらい寝かせておくか。

「ご自分で寝られたんですか!……はあ。少し良くなったのですかね」
「ああ、多分イアサントの魔力とか色々だな。感情も動いていた」
「本当ですか!死霊系の魔物見たいな虚ろな顔になってたから……よかった」

 イレールはグズグズと泣き出した。

「お前は本当にルチアーノ好きだな」
「グスッええ!大好きですよ。こんなかわいい生き物初めて見ましたもの!」
「生き物はやめろ。まあ、レオンスも似たような事言ってるしな」

 戦の前は本当にコロコロと表情が変わって愛らしくて……まあ童顔なのもありますが、三年前と何も変わらずかわいらしいまま。私は私生活に密着してますから余計ですよと嬉しそうだ。

「ありがとな。これからもルチアーノを大事にしてやってくれよ。俺たちはお前らならと付けたんだ」
「ええ!お二人は元々学友ですし、信頼されてるのは嬉しかったですから、任せて下さいませ!」

 起きるまで暇だしと俺はお茶飲みながらイレールに聞いてみたかった事を問うた。

「お前さ、俺たちが王になった途端に敬語しか話さなくなったしよそよそしい。もう友達じゃないと一線を引いたのか?」

 はあ?とイレールは首をブンブンと振った。

「公私を分けてるだけですよ。アンセルム様のように私は切り替えが上手く出来ないんです。敬語と砕けた口調の使い分けが出来ないのは場所によってマズいでしょう?ですからですよ」
「そうか……ならよかったよ。王になったら家臣だからと心のどこかで切られたのかと思ってた」

 ステファヌもうんうんと。

「お二人はもう!今だけですよ?」

 そう言うとゴホンと咳払いしてこちらを見た。

「じゃあ二人は俺たちのこと、どう思っている?家臣と思っているだけなのか?」
「いや、なんだろうな。家臣ではあるけど友達のつもりがあったかな」

 ステファヌはそう答えた。俺は?どう思っていたんだ?う~ん………

「まだお互い番がいなかった頃、遊んでくれてたじゃん?」
「ああ……若かったしヤリたい盛りだしな。お前と一緒にいれば金がかからんし?キレイどころ用意してくれるから楽しくはあったね」
「あはは、そんな事思ってたか」

 当たり前だろ?我が家は貧乏だったんだ、あの頃はな。親が片方死んでしまって父はは障害が残り寝たきりで、領地運営も出来なくなってたんだ。領地自体も人が減って収入減でヤバかったんだよ。俺が働きだして持ち直したんだと笑う。

「そんなだったか?」
「そんなだったの!小遣いなんか雀の涙だったんだ。夜伽どころかメイドまで減らしたんだぞ?」
「そうか……国も金なかったけど元々の持ち物だからまあな」

 イレールはふんと鼻を鳴らした。

「あの頃から俺は変わってはいないつもりだ。まあ番や子も出来て環境は変わったけどな。お前らもルチアーノ様が来てそんな事もしなくなって落ち着いた。お互い成長したけどあの頃のバカ騒ぎしてた頃と俺は変わらない。良き友で力になれる家臣のつもりだ」
「ありがとう。なんだかみんなが遠くに感じてたんだ。あの怒涛の時代を過ぎたあたりから余計な」

 あの頃は取り繕ってる余裕なんぞなかったからな。まあ落ち着けば家臣らしくはするよと、昔と変わらない横柄な感じで腕組してしゃべるイレールがなんだかな……あはは。

「何がおかしい?」
「いやな……俺の悪友のままだと思ってさ」
「ああ、俺らの悪友だよ。うん、あはは」
「当たり前だろ?人の中身なんざそう変わらんよ」
「だよなあ、うはは!」

 ガチャリとドアの開く音がして振り向くとルチアーノが目を擦って出て来た。

「楽しそうだね。イレールの素は珍しい」
「あはは。二人とはまあ悪さもたくさんした仲なんですよ」
「そうなんだ?今度聞かせてね。僕のど乾いたんだけど」
「はい、こちらに座って!」

 イレールは急に側仕えらしくお茶を淹れてルチアーノに差し出した。

「ありがとうイレール」
「いいえ、は!クッキーが!」

 はあ……美味しいとそのまま飲んで嬉しそうなルチアーノ。

「あの……吐き気は?」
「うん?ああ、出ないね?おお!」
「よかったな、ルチアーノ」
「うん、ステファヌ」

 やつれてはいるが以前と変わらないかわいい笑顔にホッとした。これから少しずつ治って行けばいい。仕事なんぞ俺たちがこなせばいいんだからな。……後体力的にいつ抱けるかだけだ。

 俺もステファヌもかれこれどのくらい我慢して……ふん、絶倫の俺たちが我慢なんか出来るわけもなく、夜伽を召喚している。側仕えに抜いて貰うだけでは既に無理が来てな。だが、やはり性処理なだけでなあ、ルチアーノとの交わりとは違い興奮も愛しさもない。ついベトナージュで貰ったお香の出番か!と考えたが、あれは脳みその毒だしなあ。本能剥き出しの獣と化すから使うのはためらう。

 もう少し頑張るかな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 ハッピーエンド保証! 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります) 11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。 ※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。 自衛お願いします。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!

ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

処理中です...