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三章 イアサント王国の王として
9.緊急会議
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いたたた……腰が痛い!うおっ?体中キスマークじゃん!イレールが起こしに来て自分の身体を見て驚いた。はぁ消すか……手を合わせた所でジュスランにグッと握られて、
「消す気だろ?」
「え?当然でしょ?」
「消すなよ」
無理言わないで。腕とか首とかすごいよ?
「不仲かと疑われたのを払拭出来るのに」
「は?消しても分かるよ!」
「そうか?イヤイヤ……な?」
「イヤ!」
手を組んだ方がやり易いだけだからね。む~ん。よし消えた!
「ルチアーノ!ふん、もう一度付けるからいいさ」
「あん!やめて!」
「俺もつけるぅ!」
二人に、あ……気持ちいい……ハァハァ
「やめ……て…よ気持ちいい……」
「だろ?もう一戦するか?」
うつ伏せにされてズクンッ!ちんこ堪んない……ああ……イレールごめ……
「おはようございます。お二人も起きましたか?お風呂のしたく……うわおぅっあの!すみません!」
カーテンを開けていたイレールが走って逃げた足音……あははと二人は楽しそうに笑う。何だかこの笑い声が幸せだ、いつもと一緒。グチュグチュと擦れて気持ちい……
「ほらイケよ!」
ドンッと奥に突っ込まれて……うぐっ!ジュスランのちんこマジいい……
そんな朝を迎えている頃、ランベール王国の海上で漁をしている者たち。
「なあ、あの船どこの?」
「うん?あ~見たことねえな。上から見てみろよ」
「おう」
漁師は羽を出して舞い上がった。
「ん~どこのだろ?見たことない形だぞ?エブラールのでもエヴァリスでも……なんだ……ん?」
「どうした?」
「なんか人が動いてねぇんだよ。寝てるにしちゃおかしい。ちっと近づいてみる」
「気を付けろよ!」
「ああ!」
バサバサと羽ばたき更に舞い上がるとスーッと近づいた。小さな漁船に血を吐いて四人が倒れていた。どう見ても死んでいると分かる苦悶の表情。すぐに自分の漁船に戻り、
「ヤバい!死んでるんだ血を吐いて!見たことない服着てた!衛兵に知らせないと!俺このまま飛んでくから危険かもだ早く戻れ!」
「わ、分かった!」
この漁師の報告でランベールの衛兵が数人現地調査のためにその海域に行くと、確かに小舟に四人血を吐いて死んでいた。
「これは……奥に船影は見えるか?」
「いえ……他はいません!」
「舟に縄を!曳航する!毒があるやも知れぬ!防壁を舟に張れ!」
「はっ!」
衛兵数名で縄を引きながら港に戻った。すると港にはベルンハルト、騎士団長他が来ていた。
「どうだ?」
「報告のとおりです!」
「ふん」
ベルンハルトは小舟に近づき中を覗いた。
「ドナシアンの上級貴族だ。顔に見覚えがあるな」
「では……」
「ああ何かあって逃げたんだろうが既に毒を盛られてたんだろう。遅れて回る毒かな?」
何があるか分からぬからとエトヴィンが防壁を張った上で焼却した。ドームの中が炎に包まれ煙が白に変わり何も無くなった事を確認、防壁を解いた。
「不味いな。イアサントに亡命でもする気だったのか……」
「でしょうな、あれは公爵家の者です」
「ふふんっ」
不敵な笑いをベルンハルトは浮かべた。イアサントは受け入れないよ。ドナシアンを憎んでいるからねと。
「当然我が国でもね!あはは」
と楽しそうに笑った。そう、ランベールも被害を受けていたのだ。行商に行ったキャラバンを襲う行為が横行し、捕虜や奴隷になった者が虐待の末に死んでいるのを苦々しく思っていた。正式に苦情も出しているがのらりくらりで対策を取らないのだ。なんとか逃げ帰った者の聴取でその様子も詳しく知っている。
ムチで殴られ飯すらまともに与えられず重労働、使い物にならなくなると魔物や戦の肉の壁として最前線に出されて……なんと酷い事を平気で出来るんだ、あの国の資質らしく王侯貴族、庶民に関わらず残忍な者が多い。政策に異を唱えればその場か政治犯として目を背けたくなる拷問の末、死が待っている。そんな国だから他国に逃げる者が後を絶たない。
「なあビルベルト、あの国と国交断絶するか」
「はあ……すぐには難しいかと」
う~んと唸り、
「だよなあ……これさもう待ったなしだと僕は感じるんだよ。公爵までもこれではね」
「ですね。皇子のどちらが勝ったとしても国内が荒れるのは予想出来ます。立て直すためにこちらに……まあまず近場でしょうが早ければ今年中に、遅くとも数年でしょうな」
だよねぇと足元の石を拾い海に投げた。
「契約中の取引が終わり次第商人には取引禁止の命を。あの国に立ち入りを禁ずると発令してくれ。半年の猶予は出す。それ以降の禁を破った取引で何があろうと国からの保証もしないと」
「はっ」
帰るぞと騎士団長エトヴィンを残し護衛騎士と共に飛び立ち城に向かった。
その連絡がイアサントに来るのは早かった。翌日には届いたのだ。大臣級のみを集めた会議を休日だが僕の名で開いた。
「この様な報告がランベール王国ベルンハルト様のサイン入りで昨夜ランベールの使者より急ぎと届きました。偽物ではありません。私アンセルムが確認いたしました」
誰も口を聞かなかった。う~んと唸ったり、大きなため息を吐く者、頭を抱えて目の前紙を何度も読む者………
「どうするアンセルム」
「どうするも……亡命者が来ても受け入れる気は更々ありませんから我が国はね。他国にでも行ってもらうように手配するのみです」
「だな。ドナシアンの辺りにある魔力を持つ国はどれくらいある?」
アンセルムがジュスランの質問に、
「ええ、歩いて一週間以内の隣国が二つ。ひと月くらいの国が一つ。三月かかる国が三つ、その一つが我が国です。他よりも我が国は魔力量が格段に多いですね……」
フンとステファヌは鼻を鳴らし、
「隣国は王国とは名ばかりの属国だろう?」
「ええ……既に宰相以下大臣はドナシアンの貴族に入れ替わり、元々の貴族は自分の領地を守り意見もしないようです」
頭の後ろで手をくみ天を仰いだ。
「まあそうなるわな。殺されたら損だし。あの二国は牧歌的で国民を大切にするいい王がいたんだが、数代前から入れ替わり今では……だな」
「はい、ドナシアンとほぼ変わらず国民もドナシアン移民が大半を占めています」
この場にいる皆は苦々しい顔になり、ナタナエルが、
「報告は既にしておりますが、王族の争いは激化しています。味方だという者も信用が出来ないのでしょう、粛清が進んでいます。そしてドナシアン王国の近隣諸国は戦支度に余念がありません。魔力量の少ない国も魔石などで何とかと防御を高めています」
「そうか……」
僕は何も発言出来なかった。こんな事分からないもの。だけど僕が出来る事はあるはずだ。その時皆の力になるんだ。
「どうドナシアンが出るかは分からない。こちらから手を出す理由はないのだから先手を討つ必要もない。今以上の警戒と準備を通常業務と並行してくれ」
「はっ!」
皆との意思疎通を果たし会議は終了。農林省ガストン、保健省テオフィルが残った。
「ルチアーノ様、我が農林省は国境近くが多いため他国との接点も多く何かと情報が入って来ます。外務省とは違う庶民の肌感覚と申しましょうか」
「うん」
優しく微笑んでガストンは続けた。
「行商の者たちは不穏な空気を感じていると騒いでおります。ドナシアン近隣は武器武具を買い漁る貴族も多くなっており、一部の商人は戦禍に巻き込まれない辺りまで逃げると店を畳む者も出て来ているそうです」
「そんなにか。近隣は略奪ほか何でもありでやられそうだもんな」
ジュスランは嫌そうな顔で言う。
「保健省の方にも上がっております。ドナシアン向けの医薬品の輸出が増えているとギルドから。怪我用のポーションが大量発注されており冒険者らが薬草から魔獣まで薬の材料集めに精を出しているとか」
はあ嫌だ。戦の足音が聞こえるようだね。
「ねえ……僕はなにすればいいと思う?ガストン、テオフィル」
ガストンは微笑み、
「ふふっルチアーノ様はドンと構えて微笑んでいて下さいませ。その時が来るまで。貴方しか扱えないオーブの使用その時までね。貴方が慌てると皆が不安になりますから」
「そうですよ!私はルチアーノ様を愛でてるだけで幸せですから!……あっ」
テオフィルの発言にジュスランたちがギロって睨んだ。
「嫌だなぁお二人とも。ルチアーノ様の人気知らないんですか?城を歩いてるのを見かけると今日一日幸せになるなんて言われるくらい慕われてますよ!」
「何だそれは?」
可愛らしくていつも笑顔で愛らしく、下々の者にまでお声がけ……下働きの者から大臣までデレデレです!と。
「コワッ!一人で絶対歩くなよルチアーノ。魔が差すヤツがいてもおかしくない!」
「ふふっそんな人はいないでしょ?ねえガストン?」
え?とモジモジ……コワッ!隣のテオフィルもんふふっと?
「子を作る気はなくてもお召の招待状出しても?」
「いえ……それは」
「ですよね!うはは!」
テオフィル何を……二人とも四十代で子供は沢山いるんだよ。前王由来の子も既にいる。でも目がマジな気も?
「お前らはもう子が産める歳じゃないだろ?」
「いえ……それはそれ、これはこれですよステファヌ様。抱くだけなら……ね?」
「お前ら殺されたいか?」
「ですから我慢してます!」
はあ……とジュスランはこんなのが城中にいるんだよ。気を付けろと念押し。
「あのさ、聞いていい?僕の何がそんなに?」
二人は嬉しそうに可愛いこの姿が乱れた時を思うとさぞやといやいや……理由はなくてただ惹かれるのですと。匂いも姿も仕事中の凛々しさも全て愛しく見えるのですと言う。
「おおコワッ!俺たちには言わなかった事を」
「え?お二人は……綺麗だけど可愛くないしちんこ振りまいて小汚い。招待状なくとも寝たいと言えばあの頃は二つ返事で受けて下さったでしょ?」
グッと二人は詰まった。そうなのね……
「だが小汚いは言い過ぎだ!」
あははとみんなで笑いどんな小さな変化でも報告しますねと二人は会議室を出て行った。
「はあ……世間は不穏でいっぱいで城もお前を狙う奴らで不穏とは……」
「全くなあ……人たらしルチアーノ。困ったヤツだ」
え?僕が悪いの?違うでしょ!アンセルムが調べてた時にアデラールもそうだったそうですよって教えてくれた。
「アデラールはしこたまお酒飲まされて襲われた事もあったそうです」
「へえ……怒らなかったのかな?」
「そりゃあ……でもアデラールはお召に応じない王族でしたからそれもあったとは思いますよ」
ほほう……
「だから祝賀会とかには必ず秘薬を塗ってたそうです。イアサント他が心配してね」
「まあそうだよね……今貴族にアデラール直系の家ないもんね」
「ええ、どうしてもイアサント以外と寝たくなかったようですね」
と言う事はそれ以外は誰かと寝ることもなかったんだ……性欲抑えるの大変では?
「どうなんでしょう、次に聞いてみては?」
「うん……答えるかは不明だけど」
まあ、ルチアーノは周りに気を付けてくれよと言われ、残りの仕事しようぜジュスランの声で会議室を出て執務室に向かった。
「消す気だろ?」
「え?当然でしょ?」
「消すなよ」
無理言わないで。腕とか首とかすごいよ?
「不仲かと疑われたのを払拭出来るのに」
「は?消しても分かるよ!」
「そうか?イヤイヤ……な?」
「イヤ!」
手を組んだ方がやり易いだけだからね。む~ん。よし消えた!
「ルチアーノ!ふん、もう一度付けるからいいさ」
「あん!やめて!」
「俺もつけるぅ!」
二人に、あ……気持ちいい……ハァハァ
「やめ……て…よ気持ちいい……」
「だろ?もう一戦するか?」
うつ伏せにされてズクンッ!ちんこ堪んない……ああ……イレールごめ……
「おはようございます。お二人も起きましたか?お風呂のしたく……うわおぅっあの!すみません!」
カーテンを開けていたイレールが走って逃げた足音……あははと二人は楽しそうに笑う。何だかこの笑い声が幸せだ、いつもと一緒。グチュグチュと擦れて気持ちい……
「ほらイケよ!」
ドンッと奥に突っ込まれて……うぐっ!ジュスランのちんこマジいい……
そんな朝を迎えている頃、ランベール王国の海上で漁をしている者たち。
「なあ、あの船どこの?」
「うん?あ~見たことねえな。上から見てみろよ」
「おう」
漁師は羽を出して舞い上がった。
「ん~どこのだろ?見たことない形だぞ?エブラールのでもエヴァリスでも……なんだ……ん?」
「どうした?」
「なんか人が動いてねぇんだよ。寝てるにしちゃおかしい。ちっと近づいてみる」
「気を付けろよ!」
「ああ!」
バサバサと羽ばたき更に舞い上がるとスーッと近づいた。小さな漁船に血を吐いて四人が倒れていた。どう見ても死んでいると分かる苦悶の表情。すぐに自分の漁船に戻り、
「ヤバい!死んでるんだ血を吐いて!見たことない服着てた!衛兵に知らせないと!俺このまま飛んでくから危険かもだ早く戻れ!」
「わ、分かった!」
この漁師の報告でランベールの衛兵が数人現地調査のためにその海域に行くと、確かに小舟に四人血を吐いて死んでいた。
「これは……奥に船影は見えるか?」
「いえ……他はいません!」
「舟に縄を!曳航する!毒があるやも知れぬ!防壁を舟に張れ!」
「はっ!」
衛兵数名で縄を引きながら港に戻った。すると港にはベルンハルト、騎士団長他が来ていた。
「どうだ?」
「報告のとおりです!」
「ふん」
ベルンハルトは小舟に近づき中を覗いた。
「ドナシアンの上級貴族だ。顔に見覚えがあるな」
「では……」
「ああ何かあって逃げたんだろうが既に毒を盛られてたんだろう。遅れて回る毒かな?」
何があるか分からぬからとエトヴィンが防壁を張った上で焼却した。ドームの中が炎に包まれ煙が白に変わり何も無くなった事を確認、防壁を解いた。
「不味いな。イアサントに亡命でもする気だったのか……」
「でしょうな、あれは公爵家の者です」
「ふふんっ」
不敵な笑いをベルンハルトは浮かべた。イアサントは受け入れないよ。ドナシアンを憎んでいるからねと。
「当然我が国でもね!あはは」
と楽しそうに笑った。そう、ランベールも被害を受けていたのだ。行商に行ったキャラバンを襲う行為が横行し、捕虜や奴隷になった者が虐待の末に死んでいるのを苦々しく思っていた。正式に苦情も出しているがのらりくらりで対策を取らないのだ。なんとか逃げ帰った者の聴取でその様子も詳しく知っている。
ムチで殴られ飯すらまともに与えられず重労働、使い物にならなくなると魔物や戦の肉の壁として最前線に出されて……なんと酷い事を平気で出来るんだ、あの国の資質らしく王侯貴族、庶民に関わらず残忍な者が多い。政策に異を唱えればその場か政治犯として目を背けたくなる拷問の末、死が待っている。そんな国だから他国に逃げる者が後を絶たない。
「なあビルベルト、あの国と国交断絶するか」
「はあ……すぐには難しいかと」
う~んと唸り、
「だよなあ……これさもう待ったなしだと僕は感じるんだよ。公爵までもこれではね」
「ですね。皇子のどちらが勝ったとしても国内が荒れるのは予想出来ます。立て直すためにこちらに……まあまず近場でしょうが早ければ今年中に、遅くとも数年でしょうな」
だよねぇと足元の石を拾い海に投げた。
「契約中の取引が終わり次第商人には取引禁止の命を。あの国に立ち入りを禁ずると発令してくれ。半年の猶予は出す。それ以降の禁を破った取引で何があろうと国からの保証もしないと」
「はっ」
帰るぞと騎士団長エトヴィンを残し護衛騎士と共に飛び立ち城に向かった。
その連絡がイアサントに来るのは早かった。翌日には届いたのだ。大臣級のみを集めた会議を休日だが僕の名で開いた。
「この様な報告がランベール王国ベルンハルト様のサイン入りで昨夜ランベールの使者より急ぎと届きました。偽物ではありません。私アンセルムが確認いたしました」
誰も口を聞かなかった。う~んと唸ったり、大きなため息を吐く者、頭を抱えて目の前紙を何度も読む者………
「どうするアンセルム」
「どうするも……亡命者が来ても受け入れる気は更々ありませんから我が国はね。他国にでも行ってもらうように手配するのみです」
「だな。ドナシアンの辺りにある魔力を持つ国はどれくらいある?」
アンセルムがジュスランの質問に、
「ええ、歩いて一週間以内の隣国が二つ。ひと月くらいの国が一つ。三月かかる国が三つ、その一つが我が国です。他よりも我が国は魔力量が格段に多いですね……」
フンとステファヌは鼻を鳴らし、
「隣国は王国とは名ばかりの属国だろう?」
「ええ……既に宰相以下大臣はドナシアンの貴族に入れ替わり、元々の貴族は自分の領地を守り意見もしないようです」
頭の後ろで手をくみ天を仰いだ。
「まあそうなるわな。殺されたら損だし。あの二国は牧歌的で国民を大切にするいい王がいたんだが、数代前から入れ替わり今では……だな」
「はい、ドナシアンとほぼ変わらず国民もドナシアン移民が大半を占めています」
この場にいる皆は苦々しい顔になり、ナタナエルが、
「報告は既にしておりますが、王族の争いは激化しています。味方だという者も信用が出来ないのでしょう、粛清が進んでいます。そしてドナシアン王国の近隣諸国は戦支度に余念がありません。魔力量の少ない国も魔石などで何とかと防御を高めています」
「そうか……」
僕は何も発言出来なかった。こんな事分からないもの。だけど僕が出来る事はあるはずだ。その時皆の力になるんだ。
「どうドナシアンが出るかは分からない。こちらから手を出す理由はないのだから先手を討つ必要もない。今以上の警戒と準備を通常業務と並行してくれ」
「はっ!」
皆との意思疎通を果たし会議は終了。農林省ガストン、保健省テオフィルが残った。
「ルチアーノ様、我が農林省は国境近くが多いため他国との接点も多く何かと情報が入って来ます。外務省とは違う庶民の肌感覚と申しましょうか」
「うん」
優しく微笑んでガストンは続けた。
「行商の者たちは不穏な空気を感じていると騒いでおります。ドナシアン近隣は武器武具を買い漁る貴族も多くなっており、一部の商人は戦禍に巻き込まれない辺りまで逃げると店を畳む者も出て来ているそうです」
「そんなにか。近隣は略奪ほか何でもありでやられそうだもんな」
ジュスランは嫌そうな顔で言う。
「保健省の方にも上がっております。ドナシアン向けの医薬品の輸出が増えているとギルドから。怪我用のポーションが大量発注されており冒険者らが薬草から魔獣まで薬の材料集めに精を出しているとか」
はあ嫌だ。戦の足音が聞こえるようだね。
「ねえ……僕はなにすればいいと思う?ガストン、テオフィル」
ガストンは微笑み、
「ふふっルチアーノ様はドンと構えて微笑んでいて下さいませ。その時が来るまで。貴方しか扱えないオーブの使用その時までね。貴方が慌てると皆が不安になりますから」
「そうですよ!私はルチアーノ様を愛でてるだけで幸せですから!……あっ」
テオフィルの発言にジュスランたちがギロって睨んだ。
「嫌だなぁお二人とも。ルチアーノ様の人気知らないんですか?城を歩いてるのを見かけると今日一日幸せになるなんて言われるくらい慕われてますよ!」
「何だそれは?」
可愛らしくていつも笑顔で愛らしく、下々の者にまでお声がけ……下働きの者から大臣までデレデレです!と。
「コワッ!一人で絶対歩くなよルチアーノ。魔が差すヤツがいてもおかしくない!」
「ふふっそんな人はいないでしょ?ねえガストン?」
え?とモジモジ……コワッ!隣のテオフィルもんふふっと?
「子を作る気はなくてもお召の招待状出しても?」
「いえ……それは」
「ですよね!うはは!」
テオフィル何を……二人とも四十代で子供は沢山いるんだよ。前王由来の子も既にいる。でも目がマジな気も?
「お前らはもう子が産める歳じゃないだろ?」
「いえ……それはそれ、これはこれですよステファヌ様。抱くだけなら……ね?」
「お前ら殺されたいか?」
「ですから我慢してます!」
はあ……とジュスランはこんなのが城中にいるんだよ。気を付けろと念押し。
「あのさ、聞いていい?僕の何がそんなに?」
二人は嬉しそうに可愛いこの姿が乱れた時を思うとさぞやといやいや……理由はなくてただ惹かれるのですと。匂いも姿も仕事中の凛々しさも全て愛しく見えるのですと言う。
「おおコワッ!俺たちには言わなかった事を」
「え?お二人は……綺麗だけど可愛くないしちんこ振りまいて小汚い。招待状なくとも寝たいと言えばあの頃は二つ返事で受けて下さったでしょ?」
グッと二人は詰まった。そうなのね……
「だが小汚いは言い過ぎだ!」
あははとみんなで笑いどんな小さな変化でも報告しますねと二人は会議室を出て行った。
「はあ……世間は不穏でいっぱいで城もお前を狙う奴らで不穏とは……」
「全くなあ……人たらしルチアーノ。困ったヤツだ」
え?僕が悪いの?違うでしょ!アンセルムが調べてた時にアデラールもそうだったそうですよって教えてくれた。
「アデラールはしこたまお酒飲まされて襲われた事もあったそうです」
「へえ……怒らなかったのかな?」
「そりゃあ……でもアデラールはお召に応じない王族でしたからそれもあったとは思いますよ」
ほほう……
「だから祝賀会とかには必ず秘薬を塗ってたそうです。イアサント他が心配してね」
「まあそうだよね……今貴族にアデラール直系の家ないもんね」
「ええ、どうしてもイアサント以外と寝たくなかったようですね」
と言う事はそれ以外は誰かと寝ることもなかったんだ……性欲抑えるの大変では?
「どうなんでしょう、次に聞いてみては?」
「うん……答えるかは不明だけど」
まあ、ルチアーノは周りに気を付けてくれよと言われ、残りの仕事しようぜジュスランの声で会議室を出て執務室に向かった。
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