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二章 イアサントとアデラールとオーブ
7.どうしよう
しおりを挟む大きな手が頬を撫でている。気持ちいい……
「ルチアーノ気が付いたか?」
「ん……?イアサント様……」
「ふふっアデラールを抱けたようで良かったよ」
彼の立膝により掛かる形で抱かれてた。ええと返事しながら視線を股間に落とすとヤッた後でデロデロ。そして消えないお腹のイアサントの紋。
「イアサント様……お腹に……」
「ああ、子が出来たな」
「はあ……戻れば消えますか?」
「ん?消えないな」
「ふえ?今なんと?」
「ルチアーノと俺の子だ。大切に育ててくれ」
優しく抱きしめ愛しそうに腕が回る……僕は背中に嫌な汗が流れた。耳元で、
「悪いとは思ったがお前から少しアデラールの魂を抜いた」
「え?魂……って」
顔を上げて隣を見ると僕より少し年上の僕……いやアデラールだな。
「ルチアーノありがとう。お前のお陰で兄様とまた一緒になれた。感謝する」
「はあ……」
嬉しそうに見つめ合う二人。なんと幸せそうなんだろう。
「あのな、我らの魂はオーブの中にある。だから供給の度に会う事が出来るんだよ。双子とお前で供給すれば双子も来る事が可能だ。まあなんだ、文句はその時に聞くと伝えてくれ」
「はい……」
二人とまだ子供も作ってもいないのに他の人の子を妊娠とか。なんで……どうしよう。弁解の言葉すら思いつかないよ。
「そんな顔するな。番と子を作る前なのは悪かったが、オーブがそこまで減ったらこうするしかなかったんだよ」
と、なぜ抱いたかの説明をしてくれた。番になり交わらないと一気に魔力を移せないらしい。大体現代の魔力持ちは魔力少なすぎとイアサントは文句タラタラ。彼らが生きている頃の平均的貴族の魔力は五十万くらいあるのが普通だったそうだ。って事は庶民が今の双子と同じくらいかすごい。
お前の魔力は現代では多いが俺の十分の一しかなく、アデラールは俺の倍だと教えてくれた。交わる事で僕の記憶が見えたんだと。マジか……何見たんだろ?そんで現代人の魔力はなぜ減った?
「でな。ここまで減って随分経ったようだから満タンに供給してもすぐ無くなるからな。土地が俺たちの生前まで戻るには半年か一年か……毎月来なさい」
「え?毎月?」
「そうだ、それくらいでオーブは空になるはずだ。ん~お前は産んだら双子とカジミールの子に任せろ」
それで移した後のお前の魔力量だがと、
「今はアデラールと同等二百万だ。でな、双子はお前と交われば俺と同等百万までは引き上げられるからたくさん交われ」
一回では無理だがそのうち上がるからと言われた。
「そうすればまた今まで通り十年に一回ですみますか?」
「うん、ルチアーノなるよ……」
ふわっとイアサントの膝に寄り掛かる僕をアデラールは抱いてごめんねって、だめな父でごめんねって……泣き出した。
「苦労させてごめん……無理やり騎士団長にしたのを怒ってたよね。母上が可哀想と泣いてたのに無理やり……ごめんね」
あれ?誰の感情なの?彼の子供の?その景色が見えるし感情も伝わる。大好きな母上の子を優先して欲しかったのにって。俺はリンゲルでは異質な子供なのにって強く思っていたのが伝わる。確かにリンゲルの獣人や人族の番は一人だけ。彼は二人の子ではない自分の存在が辛かったという思いが伝わる。なのでアデラールにそれを伝えた。
「やはりそう思っていたか。あの子は本当に僕の妻に懐いていてね。そして僕を嫌っていたんだよ」
嫌って?……違うと思うな。
「う~ん、怒っていたし父上可哀想とどこか思っていたのかな?本当に好きな人と一緒にいられないから。母上を愛しているのは分かってたけど、どこか寂しそうなのも知っていた。俺を見る目が時々哀しげでそれも嫌で、自分の存在も何もかも嫌だと思っていた時に猫族の彼に一目惚れ。頭が限界に達して彼に溺れて……」
「そう……」
ふふっと微笑むアデラール。するとイアサントの胸に抱かれ、
「もう時間だ。次に来た時に話を聞かせておくれ。リュシアンの子、ルチアーノ」
「はい」
「またすぐ会えるよ。愛しいリュシアンの子……」
……チアーノ!起きてくれ!
「あ……ジュスラン……」
「はぁ……ルチアーノどこか具合悪い所は?」
「ん……ないけど……まず供給してからね」
起き上がり台に手を置くと身体から魔力が吸い取られていった。ものすごい勢いだな。だけどイアサントが言うように魔力量が多いから気を失うこともなく楽だった。そしてオーブは満タンになり表面だけではなく中も虹色に輝く液体のようなものが溜まっていった。これでよし!
「アンセルム完了です。ですがオーブは減り過ぎてしまっていて土地に吸われるのも早く来月には空になります。なので半年か一年くらい毎月供給してその後は十年一回でいいそうです。まあ、俺たちに会いたければ細かく供給でも好きにしろと言われました」
は?……それは誰の?と驚いた顔したけどここでは何なので部屋でゆっくり説明しますと供給の間を出て僕の部屋に移動。イレールがお茶を用意し部屋を出るとアンセルムが防音障壁を張った。
はあ……いいにくいのもあるけど隠せはしないしね。僕は供給の間であったことを話し始めてそして……僕はシャツを捲り二人にお腹の紋を見せた。
「マジか……それ本当にイアサントの紋だ……イアサント王国の家紋はこれを元に好きだったカトレアの花と混ぜてるんだ……クソッイアサント殺す!」
「もう死んでますアデラールもね。無理だよジュスラン」
冷静に突っ込むアンセルムと泣きそうな顔のステファヌ……
「それしか方法がなかったとしても……俺のルチアーノを抱くとは……もう一度殺せるなら殺したい!はあ……でもさ、本当に五百年も待つほど愛してたんだねイアサント」
うんとみんな彼の一途な愛には言葉にならなかった。
「ですが解決の目処は立ちました。そして二人が供給出来なかった理由も分かりましたしね」
そう、アンセルム"と"供給すればよかったたけなんだよね。初期の五人の子の誰かと一緒にやる、それだけ。だから台が五個なんだそうだ。一人でやるには王族イアサントの家系だけなんだけど、五人の子孫二人以上ならアンでもノルンでも関係なく供給出来るそうなんだ。……何だそれとは思ったけどオーブを作る時王族に不測の事態を想定してそうなってるらしい。
イアサントとアデラールのノルンの子孫が万が一途絶えたりした時の安全策。それとオーブを浮かせてるのアンセルムの先祖のカジミールの特殊技能だそうで聞きたければ来いと。でも感覚的なもので説明は難しいかもね、うははと言っていたのを伝えたら……
アンセルムからブツッと何かが切れる音がしたような?表情が変わったよ?
「クソ先祖……書き残して置いてくれればこの様な事には……ルチアーノ様にも迷惑を掛けることもなかったのに殺すぞ!カジミール!!」
「お前もか……もう死んでるって」
そんなやり取りを聞きながらアンセルムの言葉を反芻した。そうなんだ……もう僕の価値は長くて一年でなくなる。イアサントの子を産もうが他に元々の五人の子の貴族がたくさんいるんだものね……確かに僕の魔力は多いけどみんなで力を合わせればもう……
この国に……彼らに僕は必要ないと思うと目からボタボタと大粒の涙がとめどなく溢れた。この半年楽しかったし二人が大好きで……王様には未練はないけど二人には未練だらけだ。これからどうしよう。一人で生きていけるかな……辛くて三人のやり取りの声が遠くに感じられて……哀しくて……
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