上 下
14 / 104
一章 双子の王と王弟 

14.あれから僕は

しおりを挟む
 二人と番になってから四ヶ月が過ぎた。国の成り立ちからこの国の王室の事や貴族の事、産業、国にどんな部門があり何をやっているかなど一通りの物を学んだ。中身は自国のリンゲルとさほど変わらないようだった。……真面目に学校に行ってて良かったとこれほど思ったことはなかったね。そしてリンゲルは何でも隠さず民に開示してた事に驚いた。イアサントでは貴族、裕福な民ぐらいしか国内の細かい事は勉強しないらしい。改めてファンダル王の懐の大きさを感じた。

「ルチアーノ様は飲み込みが早くてと座学の教授が褒めてました。もう教えることはなく補足くらいだと。やはり私の見立ては狂いはなかったですね」
「あはは……教え方が上手いんだよ。僕の力じゃない」
「ふふっご謙遜を。マナー、ダンスの先生も最初は……と言ってましたがもう完璧と太鼓判です。まあ、ダンスはまだ教わってないものもありますから、後二ヶ月頑張って下さいませ」
「うん……頑張るよ」

 もの凄く必死だった。王になるからじゃなくて二人の迷惑になりたくなくて。せめて隣に立った時に見劣りしないようになりたかったんだ。

 ある日執務見学だと二人の執務室に行ったことがあったんだ。見惚れるほどの姿で仕事してた。凛々しく的確な指示で皆が動いて……あれを見たら僕は自分が恥ずかしくなったんだ。何で僕がって心のどこかに残っていた甘えに気がついたら。

 子供の頃に親がいなくなって、哀しみの中でも明日はやってくる。やらなければならない事は押し寄せるんだ。それに立ち向かった二人……なんと強いんだろうと改めて思ったし、僕も二人の番なんだもの、隣に立てるくらい強くならなければと心に誓った。

「ふふっいい顔になりました……元から王族の様ですね」
「何をレオンス……目が毒でも入って腐った?」
「腐ってません。お二人の執務室の見学あたりでしょうか?あの頃からあなたは変わりましたね。立ち居振る舞いから雰囲気も変わりました」
「そうかな……僕自身では分からないけどね」
「ええ。オドオドしていたものは無くなり……ふふっ仕えるのに相応しい御仁になりました」

 褒め過ぎだよレオンス。僕は照れくさくなったけどそれだけやったと言う自負もある。今日からは新たな先生に王としての職務諸々の教わる。国を知らねば動けないからね。いわゆる帝王学だ。座学の中にも多少触れてるけど全然足りない。

「ルチアーノ様、そろそろ時間です」
「うん。行くかな」

 立ち上がり二人でカトレア棟から北の王族の執務エリアに移動し、連絡通路すぐのいつもの部屋に到着。中には四十後半くらいのひげを蓄えた素敵なおじ様って感じの方がいた。ニコッと微笑むと、

「まずお掛け下さい」
「はい」

 僕はいつもと同じ目の前の席に着く。

「お初にお目にかかります。私はリシャールと申します。双子が王子の頃に私が同じものを教えました」
「初めましてリシャール先生、よろしくお願いします」

 軽く頭を下げながら挨拶をすると、

「敬語や……」

 僕はすぐに遮った。ずっと勉強や魔術を習って来て思う所が出来たからだ。

「先生。私は今生徒です。あなたに教えを請う立場です。いくら王族といえど敬うのが筋ではありませんか?僕はこの四ヶ月色々教わってそう思いました。ですのでこの場では敬語を使います。他で会ったならばやめますので」

 ふふっと優しげに微笑んで、

「貴方は何という……その姿勢があればきっと良い王になられるでしょう。では手元の教科書を開いて下さい」
「はい!」

 座学の時間に帝王学が入っているから負担はないはずなんだけど……これはキツい。一から十まで何も知らない。省の名前くらいで……団長や大臣の名前、どんな貴族がいるか公爵、子爵、男爵、侯爵……とか血筋とか?一緒くたに貴族と思って生きて来たから目眩がする。大体自分の土地の子爵様しか顔は知らなかったしね。領地の管理の仕方も直轄地と貴族管理ではやり方も何もかも違う……うふふ。死ぬ。

「なんだルチアーノ目が死んでるぞ」
「うん……帝王学が辛い」

 今日はしない日だから三人で川の字に寝てる。二人が僕にキスしたり撫でたりしなから。

「あ~あれな。馴染みがないお前は辛いな」
「あっても面倒くさいよ?ジュスラン」
「だよなぁ……誰それとの繋がりとかもあるしな。代が変わるとお前誰だ?ってヤツも出て来てそいつの事覚え直しだしな」
「そうそう、世代が違うと学園の時に顔合わせてないし何も知らない場合ありだから」
「え?王族の人も学校通うの?」

 ふふっとステファヌがチュッとしながら、

「行くさ。貴族の顔とか繋がりとか見て知るのも勉強だしね。勉強だけだったら行く必要はないけどな。社交は仕事なんだよ。だから練習も兼ねてるんだ」
「あはは……僕してないよ。王様無理なんじゃないかな……」
「そんな事はない。その為に俺たちがいるんだよ。大船に乗ったつもりで構えていればいい。お前が困らないように立ち回るからな」

 ジュスランも微笑んで、

「そうだぞ?勉強はしてくれ。キチンと覚えなくてもいいんだ、やってる内に身につくから。それよりも俺たちの夫、妻だという威厳みたいなものを身に付けて欲しい。もう出来てるけどな」
「うん……頑張る」

 ジュスランは僕に頬ずりしながら、

「本当に急に変わったよな。ほれぼれする時があって俺ぼ~っと見てる時あるくらい」
「俺も……」
「ありがと」

 ステファヌがチュッチュッしながら、

「魔法の制御はどうだ?上手く行ってる?」
「うんそれはね。近衛騎士さんの鍛錬に顔出して怪我したのとか治して練習してる。実践が一番身につくね。今までは自分の手とか足とか?を少し切って練習してたんだ。それでね、先生が他人に使えるとお墨付きをくれたから実践的にと近衛団長にお願いしてやってるんだよ」

 二人してゲッって。

「それ先生の指示か?」
「違うよ僕の自主練。早く出来るようになりたくてね」

 二人はげんなりした顔してため息。

「はあ……やめてくれよそういうのは。身体傷付けるとか……怪我しちゃうのは仕方ないけど自分でするのはやめて」

 二人ともものすごく嫌そうな顔で言うもんだから苦笑いしながら、

「うん、今はしてない。騎士さんの怪我の治療で間に合ってるよ」
「本当か?どれ……」

 ジュスランが僕のパジャマを捲って確認し出した。

「ないよ傷なんか!大丈夫だから!」
「ほんと?」

 パジャマに頭入れて見てるんだか舐めてるんだがもう。

「うん。あなた達のキスマーク以外はね」
「んふふっならいい。乳首かわいい……ちゅう……」
「あん!やめて!ジュスラン!」
「やめろ!ジュスランしたくなるから!」
「ちぇっ……」

 強く吸われると頭を抜いてくれた。寝よっかとステファヌが部屋の灯りを消してサイドテーブルの灯りだけになった。

「ねえルチアーノ。三人でセックス出来ないかな?」
「え……?それ僕だけ責められるんでしょ?」

 二人に責められたらすぐに昇天して……僕おかしくなるんじゃ?

「やめろよジュスラン。ルチアーノの負担がデカいよ。それに間違って噛んで出した時誰の子か分からんだろ?」
「むぅ確かに。二人で出してればそうだな。俺の子かお前の子か……二重紋じゃ分からんし個人の資質で文様は変わるからな。でも鑑定すれば分かるぞ?」

 はあ……とステファヌはため息。

「今鑑定出来るのアンセルムだけだろ?世代に一人居る訳じゃない。アンセルムに何かあったら鑑定する者はいなくなるんだぞ?」
「いる間ならいいじゃん」
「はあ……ちんこの脳みそ頭に戻せよ」
「あ~あ、きっと楽しいと思ったんだけどね。残念だ」

 僕は乱れた現場を想像して……挿入されながらしゃぶって愛撫されて……げふんっ!ちょっと興味が……ねぇ。ついポソっと、

「噛めない様にしてなら……ありなのかな?ふむ……」

 やだぁルチアーノ乗り気!なら今からする?とジュスラン。

「それは無理。うなじ隠せないもん」

 ステファヌもいやらしい顔になり、

「アンセルムに相談してみるか……」
「なあ?したいだろ?交代だとさ溜まる時あって、でも夜伽とはしたくないしで困ってるんだよ、俺のちんこはね」

 ああ……と納得げな表情。

「そうだな。まあ今すぐにはどうにもならんから寝るよ!でもジュスランは盛りすぎだからね!俺も同じだけど我慢してんの!お前も我慢しろ!」
「我慢したくないなあ……ルチアーノも双子だったらよかったのに……」
「僕一人っ子。あはは」

 二人に抱かれて……布団いらないくらいに温かくて幸せで……こうやって寝るのは僕の至福の時だ。綺麗な双子にこんなに愛されて……国を出なくてはならかったあの時の不安と寂しさは死にそうだったのにね。こんな幸せが待っているとは思わなかった。二人にチュッとして僕も目を閉じた。

 そうそう、僕が来てすぐにレオンスがヨハンにお金送ってくれたらしい。借金返して余るくらい送ったそうだ。この間ヨハンから手紙が来て書いてあった。

 僕がいなくなってから一人で頑張っていたそうだが、ヨハンの幼なじみのトラ族のイーサンが手伝うようになって何とかやれてると。

 ごめんね、僕から手紙は出せなかったんだ。今の状況を話せなくて……いつかそちらにも僕の事聞こえてくると思うからその時まで待ってね。そして本当にごめんなさい。今までありがとう……ずっと忘れないよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!

ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

純情将軍は第八王子を所望します

七瀬京
BL
隣国との戦で活躍した将軍・アーセールは、戦功の報償として(手違いで)第八王子・ルーウェを所望した。 かつて、アーセールはルーウェの言葉で救われており、ずっと、ルーウェの言葉を護符のようにして過ごしてきた。 一度、話がしたかっただけ……。 けれど、虐げられて育ったルーウェは、アーセールのことなど覚えて居らず、婚礼の夜、酷く怯えて居た……。 純情将軍×虐げられ王子の癒し愛

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

処理中です...