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一章 神様はいじわるだけど

11.否定する!

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「あー広翔?」
「千広は俺がきっと、今よりもっと幸せにする!」
「あ、あのね?」
「大丈夫俺を信じて」
「いや、あのね?」
「なんも心配いらないよ」

 ゔっ……変な正義感?庇護欲?なんだろう。そんな物が芽生えたようだ。ぎゅうぅて抱きしめて大丈夫だよって。うん、否定しよう、そうしよう。

「広翔!聞いて!」
「あ、うん」

 きょとんとした広翔を睨みながら深呼吸。スーハースーハー

「僕はそれを望んでない!今で充分なの!光の下に行きたいわけじゃない!」
「なんで?」
「なんでって。みんながみんなヒーローや勇者になりたいんじゃないんだよ!僕はモブでいいの!」
「ええ……」

 あからさまにしゅんとしてしまった。燃えてた分がっかりが目に見えるようだ。

「広翔。人には自分の中のちょうどいいがある。光の中の人を引き立てる、支えるのが得意な者もいるんだよ」
「それは分かるよ。でも同じ場所に立ったほうが楽しいよ?」
「ふう。僕は見て分かるように受け身なんだ。そこらの女の子よりかもしれない」

 愛されてると強くなる。前提に相手の気持ちを必要とするような弱さがあるんだ。……言ってて悲しい。自立出来てないみたいだ。

「自分ひとりだとなんも出来ない。ただ生きてるって感じになっちゃうんだ。愛されてると強くなれる、そんな弱さがあるんだ」

 のめり込む趣味も推しもない。推しは彼だよ!やだ……嫌われちゃうかも。

「自分でも分かってるんだ。寂しい生き物なんだよ。広翔がなんでこんな僕が好きなのか、未だに分かんない時がある」

 驚いたのか無言に。
 そうだよなあ僕の見た目もそんな……どこにでもいそうだし、仕事もそこそこ。友だちも多くはない。いるのかいないのか存在感の薄い僕を、よく見つけたもんだと思う。

「千広は昔の御簾みすの奥の姫みたいなんだね?」
「は?聞いてた?」
「うん。内助の功みたいな……旦那さんに仕える……とはちょっと違うけど、愛されて輝く?」
「あ~……そうね。それに近いかもね」

 姫なんていいもんじゃない。愛してくれる者がいなけりゃジメジメな生き物だよ。客先だけだよ、お金出る分は電飾纏ったように光るよ。でも、それだけだ。心の中でブツブツと悪態を付いていた。

「なら、俺は目いっぱい愛すから俺のために輝いてよ」
「はあ?」
「いいよ。外では光んなくて。俺の前だけスポットライト浴びたみたいになってよ」
「へ?」

 そっか。ちーちゃん俺と付き合ってからかわいさに磨きがかかってると思ってたけど、そっか俺の愛情で輝いてたんだねって。

「広翔、前向きすぎ」
「いいじゃん。エッチの時もすげぇエロいんだ。始めの頃とは雲泥の差だよ?あれも初々しくてよかったけど」
「バッバカ!」

 ちーちゃんはエロ話すると、真っ赤になるの変わんなくてかわいいんだ。なのに昨日なんて俺の上でそれはもう。んふふって。

「それは忘れて」
「やだよ。今晩も俺を楽しませてよ」
「いや……」
「俺の愛撫ですぐ乱れるから大丈夫」
「ううっ……」

 否定出来ないのが悔しいし、すごく恥ずかしい。抱っこしようってギュッて締め付けてくる。

「千広は俺のだ。俺が千広の光になる。だから俺を愛して」
「うん……なんで嫌いにならないんだよ」
「なる理由ないだろ?俺しか見ないって千広が言ったんだよ?」
「え?ええ!」

 愛されると輝く。その人の光の反射かもしれないけど光るって。他にもっと愛してくれる人が現れれば、その人を好きになれば俺はいらなくなるかもしれないけど、そんなことは俺がさせない。

「そっか……そう取れるよね」
「うん。俺はちーちゃんの推しでいるよ。アイドルよりずっと愛を伝えるし、抱くし」
「そう……」

 興奮して否定しなきゃって気持ちばかりで、何言ってるんだろう僕。でも嘘は言ってない。

「ひろちゃん。ずっとこの腕にいさせて……」
「うん」

 ちーちゃんの愛の言葉は嬉しいよってキスしてって。チュッてした。

「ちーちゃん。俺はちーちゃんが陰気臭いとは思わない。笑顔のかわいい俺の恋人だよ」
「うん。ひろちゃんが現実に気がつくまで側にいる」

 そんな日は来ねえよって。俺は……あっそうだ。元彼は見た目はよく似てた。中身がわがままなだけで、ちーちゃんによく似てたよって。あんまり嬉しくない気も……

「好みなんかそうそう変わらないんだ。写真見る?確か……」

 そう言うと倉庫にしてる部屋に行ってしまった。あはは……持ってるんだ。いや、学生時代の彼なら、まああるか。

「これだよ」

 受け取って見ていると、この人って指を指した。

「ん~似てないけど?」
「雰囲気だよ。写真じゃ分かりにくいかな?別のも見てよ」
「うん」

 何枚か見て行った。華やかな雰囲気で、広翔以外とも肩組んで楽しそうに笑っている。

「広翔と同じような華やかな人だね」
「うん。ちーちゃんは正反対かもしれないけど、見た目は似てない?」
「似てるかぁ?この華やかな雰囲気で全く似てる気がしないけど?」
「そう?」

 僕から一枚取ってしげしげ。うーんと唸る。

「俺の記憶がおかしいのか?こんなだったっけ?でも背格好は似てる」
「うん。それはね。でも彼のほうが華奢だ」
「あんまりかわ……るわ。ちーちゃんのほうが抱き心地はいい」
「やめろ!」
「中もいいし」
「本気でやめろ!」
「褒めてるのにぃ~」

 まるで僕が体で好かれてるみたいじゃないか!

「そうだよ?性格と体、どっちも好き。ちーちゃんも俺のちんこ好きでしょ?」
「やめてぇ……」
「ねえ?」
「好きだよ!体もこんな意地悪なところも好きだよ!」

 頭抱えて丸くなった。何言い切ってんだよ。全部好きって言っちゃってるだろこれじゃあ。

「ふふんいいな。ちーちゃんの俺への言葉がゾクゾクする」
「言わせるからでしょ!」
「前は言ってくれなかったよ?」

 広翔は僕を抱き寄せてソファに横になり上に乗せた。あったかい……広翔の匂い好き。

「ちーちゃん」
「なに?」
「俺のおっぱい好きでしょ」
「は?」
「撫でてる」
「うっ」

 ふっくら張りのある胸は、最初の頃から好きだった。かわいい乳首も小さな乳輪も……

「乳首はやめて。くすぐったい」
「うん」

 でも触っていた。Tシャツの上からだけど。

「マジでくすぐったい」
「吸ってみる?」
「やーだーちーちゃんがエロい」
「じゃあやめます」

 何言ってんだ僕。どうしたんだろう、最近変だよ。広翔のエロが感染ったのか?立ってる乳首を人差し指でくりくり。

「あははホントやめて。俺がしてやるよ」
「それはいらない」
「なんで!」

 目を閉じて胸全体を揉んだ。柔らかい筋肉。触ると反応して硬くなったりする。

「千広したいの?」
「違う。触りたいだけ」
「そう」

 そう言えば相手の体に興味なんて……ちんこはまあ当然で愛撫とかも。見た目キレイであればそれでよかった。意識して触りたいとかなかったな。手はよくいじってたけど。

 胸の音……少し触ったから早い。目を閉じてドキドキと……とても幸せな……気分。





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