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一章 神様はいじわるだけど

7.意地悪だなあ

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 今日はふたりでお出かけ。デートとも言う。
 買いたい物はすでに買ってて、デパートの地下のお店の輸入食品を見ていた。

「千広、これ俺も関わったんだ」

 彼の手にはジャム。メジャーな国のではないから、お安いけど美味しいとポップに書いてある。

「いつ?」
「随分前かな。先輩の後くっついてただけの時。遊び以外で海外は大変だった記憶しかない」
「ふーん」

 このジャムは今や色んなところに売っているけど、でもこの国のは珍しいんだって。

「買う?」
「あはは。いらない、飽きるほど食べたから」
「そう」

 それからも商品眺めて、広翔の会社が関わっている物を見つけるたびに説明してくれる。

「多いんだね」
「そうだね。他の会社が輸入したのも多いよ。うちより上手くやっている所は多い」
「え?広翔のとこよりって……」

 彼によると、輸入はオールマイティに何でもやるところと、ピンポイントの単種類の所がある。

「単種に集中しているところには、敵わない気がする時もある。俺の能力不足ともいうけどね」
「あはは。謙遜しなくていいよ」

 謙遜じゃない、会社にも、他社にも優秀な人が多いんだよって。だろうね。

「さて帰ろっか」
「うん」

 ただ隣にいるだけで幸せを感じる。一年前にひとりぼっちで、カップルに冷たい視線を送っていた僕はもういない。時々フッと頭に前のことがよぎって女々しいのが僕。

「千広、なんか食べて帰る?」
「どうするかな」

 この辺ならいい居酒屋知ってるよって広翔が言うから向かった。少し早めだったから席は空いていてすんなり着席。

「ここ会社の人と来て美味しかったんだ」
「ふーん」

 メニューを開いて眺めた。
 最近は広翔のご飯をあんまり作ってなかった。彼の帰りが遅くて、繁忙期で仕方ないんだけど。僕も同じく忙しかった。だから一緒に御飯食べるのは、というか会うのもひと月ぶり。

「俺ビールと焼鳥と……千広モツ平気?」
「うん」

 僕はどうしようかなって見てたけど、なんか目移りして決めらんない。もう広翔と同じでいいやと注文した。

「好きなの選べばいいのに」
「うーん。品数多いとあれもこれもって思って決めらんなくなるんだよ。少ない方がすぐ決まるんだけど」
「ふーん。千広は優柔不断なとこ多いよね」
「うん。ごめん」

 いや悪くはないけど、面倒臭く考えなくてもいいんじゃないのって。

「今なら、これ気になるってだけで選べばいいじゃん」
「そうなんだけどさ。僕の悪いクセなんだ」

 実はスーパーでもウロウロしちゃって、簡単に決めてはいない。だからその時安い物を買って、後でゆっくり考えるとかも多いんだよね。

「俺はその時の気分でコレ!ってすぐ決めちゃう。悩んでる時間は無駄と思っちゃうんだ。その悩む時間を別のものに使いたい」
「それが正しいと思うよ。でも……」

 出来ればやってるよ。出来ないからこうなんだ。

「千広はでも、が多い。なんで自分に言い訳するの?」
「え?」

 ええー?初めて指摘された。僕「でも」って言ってる?そんなに言ってる?広翔は困ったちゃんだよねって。

「たぶん仕事では言ってないんだろうけど、普段多いよ。でもぉ~あっちがとか、でもねえとか。それって否定から入ってるよね?」
「そ、そう?自分じゃ気が付かなかったよ」
「だろうね」

 料理が運ばれてきて食べながら話していたけど、あからさまに後ろ向きな言動をしてたとは……モツがムニムニ……美味しいはずのお肉がゴム噛んでる気分になってきた。

「ちーちゃん、エッチの時はあんなにはっきり言うのにね」
「ブホッ!ゲホッゲホッ何言ってんの!」
「本当じゃん。キスしてとか奥ぅとか」

 人が少ないからってこんな話ぶっこむな!むせただろ!

「広翔。ここ家じゃない」
「うん。だから声小さいでしょ?ンフ」
「もう!」

 た、確かに言ってるね。だってもっと気持ちよくなりたいんだもん。広翔にもなって欲しいんだもん。

「ね?出来ないわけじゃない。ちーちゃんは何が不安なのかなあ?」
「不安?」
「うん。言葉にするとそうだけど、決めかねるってそういうことでしょ?後悔しないかな?失敗かもって、まず考えてるんじゃないの?」

 ……そうかも。僕まず成功より失敗を先に考えるね。成功を先にか……後ろ向きな僕には難しいな。さすがにこの流れで本音は言えないけど、改善出来るのかな。

「ちーちゃん?」
「あ、うん」

 なんでこんななんだろう。気がついたらこんなだから考えても見なかった。危機管理が出来てるって言えば聞こえはいいけど、挑戦を前もってやらないんだからそれは違う。

「ちーちゃん学校ではモブって言ってたよね」
「うん。人が決めたのを黙々とやるっていうか。自分の発言が動くって怖くてね」
「なんで?自分の考えが実現出来るって楽しくない?」
「うーん……ひとりでするなら楽しいかもだけど……」

 なら、今はって。

「仕事はちーちゃんの発案で動くこともあるでしょ?」
「うん」
「それは成功すると嬉しくない?」
「嬉しい……かな」
「でしょう。俺の告白を受けてくれたしねぇ」
「それは……」

 今更だけど初日に体も……どこか惹かれてたのかな?元彼とは全く違うタイプだし、僕を大切に変わらずしてくれる。冷たい対応なんで今までない。

「ねえ、なんで突然いじめるんだよ」
「うん?辛そうな生き方だなって思ったから。俺色んな国の人と話すでしょ?他国の人は楽天家が多くてね。辛くても前を向く……というか、それを意識してないと言うか」
「ふーん」

 それで俺も吹っ切れた部分はある。ゲイだから辛いこともあったのは本当で、家族もお前が幸せならと干渉もしてこない。

「放任なんだろうけど、放置に感じたりもしたんだ。たけど、色んな人見てそんな些細なこと気にしてもねって」
「ふーん」

 モツを口に運んでもぐもぐ食べる。

「家族に愛されてないわけじゃないよ。親も祖父母も良くしてくれる。理解しようとはしてるんだ」

 でも見えない壁がある。自分と違う息子、孫をどうしていいやらって目が言うんだ。だから実家にはあんまり行かない。それでも今はそんなもんだって思ってて、気にもしてないって。

「広翔は強いね」
「強いふりかもよ?」
「それでもさ」

 話してるうちにお腹いっぱいになり、店を出て広翔の部屋に帰った。帰る間ずっと考えていた。僕が彼の愛情に応えきれていないのを感じているのかも知れない。

 少しお酒を飲んだから、水を飲みながらソファに並んで座っていた。

「ちーちゃん。そんなに一生懸命考えなくてもいいよ。でもって言う時ってさ、俺を気遣ってのことが多いのも知ってる。俺を愛してると不安になるよね?」

 ああん?

「気がついてていじめてたの?」
「うん。ちーちゃんにもっと俺を愛して貰いたかったんだ」
「グッ……」

 色々言ったけど、それは本当に思ってること。俺を一番に考えてくれる時「でも」がたくさんでねとによによ。確かに「でも」はもっといい方法があるかもとか、そんな時に言ってる気はする。

「広翔ぉ!」
「やん!怒んないでよ。ちーちゃんの不安は俺が原因だって気がついて欲しかったの!愛されてるの感じて嬉しくてさ。自覚してもらったらもっと愛してくれるかなあって」
「……そうね」

 唖然としてしまった。僕を試したんだね?やっぱりどこか疑っていたのか。

「試したの?」
「違う。俺はちーちゃん大好きだから……もっと愛情が欲しいって思っちゃってさ。俺しか見えなくなって欲しいんだ」
「すでにそうですが?」
「知ってる。もっと欲しい。ねぇここに来て」

 膝をポンポン。立膝の中に入れって。仕方ないなぁと膝を背に寄りかかった。

「ちーちゃん仕方ないって顔してこうしてくれる。こんなのがたくさん欲しい」

 見上げる広翔はかわいい。愛してよって目がね。

「僕はもうひろちゃんのだよ。ひろちゃんしか見えてない」
「うん。ありがとう」

 嬉しそうに僕を抱きしめる。ちーちゃんは俺だけのだからと思うと、時々我慢できなくなるんだ。俺を見てって、欲しいと言ってって思うんだ。普段は言わないようにしてるんだけど、ひと月くらい会えなかったから。

「お互い忙しかったから」
「千広は何してるんだろう。俺以外を見て親切にしてたのかな?同僚と実は!とか不安になってさ」

 なんの心配だかな。

「柳瀬はノンケで彼女もいるよ」
「俺は今聞いたもん。訪問先の会社の人とかも狙ってるんじゃ?とかね」

 馬鹿なことを。そんな人いるわけない。それに二十九まで生きてきて、スーパーでナンパしてくるのは広翔だけだ。

「俺がいるなら他もいるかもしれないじゃん!」
「ひろちゃんは珍獣の部類だ」
「あ、酷い」

 広翔は時々こんな。僕に愛してるって言葉だけじゃない態度を欲しがる。自分は愛してるから、お前はどうだって確認するみたいにね。賢いから回りくどく意地悪に。

「ちーちゃん大好き」
「僕もひろちゃん好きだよ」
「うん」

 抱き合ってずっとおしゃべり。こうやって抱かれてるだけで僕は満足。でも彼はどうだろう。

「キスして」
「ふふっ」

 チュッとした。そしたらむーって。

「足んない。俺がしてるみたいなキスして」
「え~……」
「してよ」

 ふうと深く息をして、唇を押し付け舌を裏から舐めあげる。そして貪るように激しく。

「ち、ちーちゃ……もっと」
「んんっもう……」

 そのまま横に押し倒して貪った。

「いい……うっちーちゃ…激しくて……」
「ひろちゃ…ん……」

 興奮したのかクルッと僕が下になりいつも通り。

「あっ…ひろと……」
「かわいい……ちーちゃんかわいいね。入れていい?」
「ゴム……」
「生でしてみたい」
「出しちゃうと……漏れちゃうかも」
「いい」

 そして漏れてるのを馴染ませてぬぷうっと押し込まれ。おおぅ……ナマ……あっ……

「やべぇ気持ちいい。ちーちゃんをすごく感じるっ」
「僕も……あ、んんっ」

 あんな薄いもの一枚なのに、ないとこんなに違うのか。擦れる感じが全く違うように感じる。

「昨日してるからよく解れてる」
「あ、ん……はぁ…いい……」

 ゴムなしは良くないんだろうけど、生ヤバい。言葉責めすら反応できない気持ちよさがあった。

「ちーちゃんごめん。持たない…気持ちい…い」
「あっ…ヒッ…んんぅ……」

 抱き合って激しく突かれていると、ゾワッとしてビクビクと。僕に遅れて広翔も。

「いいよ……これ堪んないね」
「うん。ひろちゃんをすごく感じる」

 やば、萎えて抜けそうだ。ティッシュは……おお!遠い!

「ひろちゃん!抜けちゃう!」
「いいよ」
「良くない!ソファ汚れる」
「もう」

 下の広翔は腕を上げて探してるけど、もっと右!こっち?もう少し!とか言ってたらずるん。

「ああ!」

 穴からこぷんと漏れるのを感じた。僕上に乗ってたからもろドロって。

「ひろちゃん遅い……」
「もういいよ。キスして」
「……うん」

 久しぶりに会えて嬉しかった。いじめられたけど。でも……でもを減らそう。いや、減らそうとしなくても、広翔と一緒にいれば減るかもなあって漠然と思った。
 舌が気持ちいい……こんな日がいっぱいあるといい。








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