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希望的観測
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あの日からちょうど四年が過ぎた。
もう少しで大学を卒業する。そして、就職先も既に決まっていた。
この町に昔からある、設計、建築関係の会社だ。大学の時にアルバイトをしていて、社長から、卒業後うちで働かないかと誘われたのだ。
僕に拒否する理由など無かった。それが僕の夢に一番近かいのだから。
あの地震のあと、親とは翌日に会うことが出来た。
そして、親に水琴のことを話した。
母は泣き崩れ僕に縋り付いた。父は唇を噛み俯いた。
更に数日が経つと、潮が引いて行き、道は歩けるまでになった。
虚空の彼方まで儚い確率に祈り、願いを持って僕は急いで家のあった場所へと向かった。
そして…そこには何も無かった。屋根、壁、家具、そしてコンクリートの土台までもが流されていた。
妹の姿も無かった。
当たり前だ。妹の倒れていたであろう床ごと無いのだから。
(なんでなんだよ…ッ)
つぅーと涙が頬を伝う。
(なんで水琴なんだ…ッ)
水琴との思い出が心から溢れ出てくる。どうやら、しばらくの間止まりそうではない。
笑った顔に、照れた顔、膨れっ面に、泣いた顔、悔しい顔に、いたずら顔。
些細な喧嘩をした内容。結局根負けして、どうやって機嫌を取ろうか悩んだ時。
思うように、成績が伸びないずに親と衝突した時に励ましてくれたこと。
学校で駅伝の選手に選ばれたいからと、付き合わされたランニング。
毎日のように、僕の部屋を訪れたこと。
妹との思い出が溢れて止まらない。涙も止まらなかった。
そっとズボンのポケットに手を当てる。そこは小さく膨らんでいる。
地震の起きた日に、ケーキ屋で買ったクッキー。今年こそしっかりと妹へのお返しをしなければと思っていて、忘れまいと早めに買っておいた。
数年間、貰いっぱなしにしていたのだからと。
僕は思った。今日から一週間だけは自分のために生きようと。他人なんかに構わず、己自身のために。自分と妹とために。
この日から僕は一週間泣いた。落ち込んで、後悔した。思いの丈を叫び、運命を呪った。何も信じられ無かった。だから何でも信じたくて、何にでも縋り付きたかった。
そして一週間後、僕は瓦礫作業のボランティア活動に参加した。
父と母はどうやらまだまだ立ち直れなさそうだ。僕がボランティアに参加しようと、避難所から出ようもした時、母は生気のない声で、僕に妹が死んで悔しくないのか、辛くはないのかと聞いてきた。
僕は、母の肩を両手で持ち、母の目を見て言った。
辛くて、悲しくて、悔しいから一歩を踏み出したんだよ。水琴は生きているかもしれないってちっぽけかも知れない希望を持って一歩踏み出すしかないんだよ。そうじゃなきゃ、いつも努力を惜しまなかった水琴に顔向けなんて出来ない、と。
父は、僕に綺麗事だろうと言った。
この状況で現実を見て、悲観して何もしないよりは、少しの綺麗事でも並べて、未来を見るしかないんだ。と返した。
そして父と母は黙って僕を見送った。
もう少しで大学を卒業する。そして、就職先も既に決まっていた。
この町に昔からある、設計、建築関係の会社だ。大学の時にアルバイトをしていて、社長から、卒業後うちで働かないかと誘われたのだ。
僕に拒否する理由など無かった。それが僕の夢に一番近かいのだから。
あの地震のあと、親とは翌日に会うことが出来た。
そして、親に水琴のことを話した。
母は泣き崩れ僕に縋り付いた。父は唇を噛み俯いた。
更に数日が経つと、潮が引いて行き、道は歩けるまでになった。
虚空の彼方まで儚い確率に祈り、願いを持って僕は急いで家のあった場所へと向かった。
そして…そこには何も無かった。屋根、壁、家具、そしてコンクリートの土台までもが流されていた。
妹の姿も無かった。
当たり前だ。妹の倒れていたであろう床ごと無いのだから。
(なんでなんだよ…ッ)
つぅーと涙が頬を伝う。
(なんで水琴なんだ…ッ)
水琴との思い出が心から溢れ出てくる。どうやら、しばらくの間止まりそうではない。
笑った顔に、照れた顔、膨れっ面に、泣いた顔、悔しい顔に、いたずら顔。
些細な喧嘩をした内容。結局根負けして、どうやって機嫌を取ろうか悩んだ時。
思うように、成績が伸びないずに親と衝突した時に励ましてくれたこと。
学校で駅伝の選手に選ばれたいからと、付き合わされたランニング。
毎日のように、僕の部屋を訪れたこと。
妹との思い出が溢れて止まらない。涙も止まらなかった。
そっとズボンのポケットに手を当てる。そこは小さく膨らんでいる。
地震の起きた日に、ケーキ屋で買ったクッキー。今年こそしっかりと妹へのお返しをしなければと思っていて、忘れまいと早めに買っておいた。
数年間、貰いっぱなしにしていたのだからと。
僕は思った。今日から一週間だけは自分のために生きようと。他人なんかに構わず、己自身のために。自分と妹とために。
この日から僕は一週間泣いた。落ち込んで、後悔した。思いの丈を叫び、運命を呪った。何も信じられ無かった。だから何でも信じたくて、何にでも縋り付きたかった。
そして一週間後、僕は瓦礫作業のボランティア活動に参加した。
父と母はどうやらまだまだ立ち直れなさそうだ。僕がボランティアに参加しようと、避難所から出ようもした時、母は生気のない声で、僕に妹が死んで悔しくないのか、辛くはないのかと聞いてきた。
僕は、母の肩を両手で持ち、母の目を見て言った。
辛くて、悲しくて、悔しいから一歩を踏み出したんだよ。水琴は生きているかもしれないってちっぽけかも知れない希望を持って一歩踏み出すしかないんだよ。そうじゃなきゃ、いつも努力を惜しまなかった水琴に顔向けなんて出来ない、と。
父は、僕に綺麗事だろうと言った。
この状況で現実を見て、悲観して何もしないよりは、少しの綺麗事でも並べて、未来を見るしかないんだ。と返した。
そして父と母は黙って僕を見送った。
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