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日常生活

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カチッカチッカチッ……。

部屋に時計の音が満ちている。勉強机の横から見える外には闇が満ちている。

車一つ見えない。季節は冬。

高校三年生である僕にとっては、人生の岐路の一つである、大学受験を控えている。

黙々と英語の長文を解く。本格的に勉強を始めた、春の終わり頃には満点の1/4を取ることがやっとだったが、今では八割方は取れるようになってきた。

(あと、十分か…。)
受験時間の十分を残し、全ての問題を解き終える。かと言って、そこで時間を止めて、直ぐに採点を始めたりはしない。出来るだけ本場に近づけるために、残りの時間を使って見直しを始める。

(あと…五分。)
しかし、そこで、控えめにドアがノックされた。

「どうかしたか?」
誰かすら問わず、一言目で要件を問う。こんな遅い時間に、自分の部屋のドアをノックする人物なんて一人しかいない。

もちろん、両親ではない。両親はとっくの前に寝ている。

ガチャっとドアノブの回される音と同時に、一人の少女が入ってきた。

妹だ。

「ねえ。ここ分かんないから教えてくれない…?」

そう言って、僕のすぐ横に寄って、解説が欲しい問題に指を指している。

歳が三つ離れた中学三年生である妹。高校受験を控えていて、僕と同じく夜遅くまで、勉強をしている。

そして、時折僕の元へ来てわからない問題を聞いてくる。

「この図形で、ここの角度を求めたいんだけど、解説読んでもいまいちわからない…。」
「ああ、ここに補助線を引いてだな……。」

自分と、妹の顔の距離は定規の半分すら入らないであろうくらいだ。

妹の顔を時々確認しながら僕は淡々と解説していく。妹は考えていることがある程度わかる。なぜなら、顔に出てくるのだ。

理解したら、全体的に表情が緩む。分からなかったら、少し顔を顰める。

今回は、前者だった。

「なるほどぉ……。ありがとね。」
問題集に目を落としながら、僕の部屋から出ていく。

「ふぅー……。」
僕の胸には、薄いモヤがかかった様な状態になった。

相手は、妹だ。自分に特に、そういった気はない無い。具体的に言うには、妹は妹で恋愛対象ではない。

しかしこの頃の悩み事といえば、妹が女過ぎることだ。
(別に妹との仲が悪いわけでは決してない。)

僕には、生まれてこの方、彼女の一人もいた事はない。かと言って、女性と話すのが苦手でも苦でもない。その上、普通に女友達もそれなりにはいる。

しかし、妹はどういう訳か、色々と難しい。

まず、距離感がよくわからない。外の女性達となら、ここまでは入り込んではならないラインが比較的わかりやすい。

その次に、自分が抱く感情だ。友達ではない。それは明らかだ。

ではそれら二つに対して妹はどうなるのだろうか?

前者は、個人の部屋があって、それなりには取ることが出来る。しかし、鍵はお互いのドアには付いていない。簡単に出入りが可能だ。ある意味、知ろうと思えば、何でも知れてしまう。盗撮、盗聴もしたい放題だ。

でも妹じゃん。

けど、逆にそれらがされない理由ってあるのだろうか?

……。ん…?まっいっか…。

では、後者はどうだろうか?

僕は妹に恋愛感情を抱いた記憶はない。しかし、外の女性達とは明らかに違う感情がそこにあるのはわかる。分かるのだが、それが何を表すものかはわからない。






ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ……。



時計が制限時間を教えてくれた。
(あれから5分しか経って無いのか…。)

頭を切り替えて、次は数学に取り掛かった。

















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