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旅行記5 錬金魔法ショップ開業記

09 人生の目標が定まる時

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 ポメに未来を変えるヒントもらい、ティアラの心は再び現実へと戻っていった。ハッと目覚めるとまだ占いの途中で、魔女ベルベッドが不思議なものを見たような表情でティアラとポメに語る。

「驚いたわ、その使い魔ちゃん。幻獣カーバンクルだったのね、私が用意した未来余地を超えて新たな未来を提案するなんて」

 ベルベッドの口振りからすると、ポメが自らの意思でティアラに未来を変えるためのプランを提供したような言い回しだ。

『ティアラが慈善家として活動する』

 聖女としては国を追放されて、運良くハルトリアの公爵であるジルに見初められたからよかったものの。危うい人生になりかけていたことは事実であり、追放されたばかりの時点でティアラはただの旅人であった。
 それが今や公爵夫人であり、錬金術を活かして自分の店を持ち、さらに慈善家として活動しようとしている。随分と人生の旅路が、進んでしまったような感覚だ。

「綱渡りのような人生を歩みかけていたのに、人々を救う慈善家として活動するなんて私に出来るかしら?」
「基本的に事業は誰かの役に立つために行うものよ、慈善家はさらに奉仕を主体としているけれど。同時に学んで行く方法だってあると思うの。それにカーバンクルはその人にとってより良い未来を見せてくれるらしいわ」

 確かに、タイミングよくハルトリア公爵家所有のビルを一棟運用することになったため、ショップ経営の傍ら慈善家としての拠点をプラスして開業することは可能だろう。むしろ開業と同時に慈善家としての拠点を作ってしまえば、最初からその計画も込みで店を始めたように見えるかも知れない、


「カーバンクルは未来を見せるってことは。さっきの映像、ベルベッドさんが用意したものにポメが魔法で介入したんですか」
「ええ、おそらくは。それにしてもこれから待ち受ける未来は、ロンドッシュやハルトリアにも多少なりとも影響があるでしょう。聖女クロエは噂では我がまま放題だという話だけど、贅沢と引き換えに国の動力として魔力を消耗させているのでしょう。その末路がまさか断罪だとは」

 同じ魔女という性質からか、クロエに対して悪い噂を認めながらも同情的な意見のベルベッド。ティアラは自分を追放した原因の一端であるクロエのことを好きにはなれないが、それと断罪や魔女裁判とは分けて考えている。

「見えたんですね、クロエが魔女裁判を受けて断罪されるのが」
「ええ、とても哀しい映像が。聖女クロエはおそらく、ロンドッシュから遥か北西にある魔女伝説が眠る小さな村の出身者だわ。最後の魔女狩りが行われた場所は、そこしかないもの。この未来予知、私にも不幸を回避するために協力させて頂戴」

 ティアラは魔女ベルベッドの申し出に、了承の意を込めて無言で頷いた。

(もしかしたら私は、この星の導きのためにこうしてロンドッシュにやってきたのかも知れない。追放された国だとしても、フェルトは私の故郷だもの。このまま放置して、魔女狩りが当たり前に行われる哀しい国にするわけにはいかない!)

「私、故郷の悪い未来を回避出来るのなら、魔法使いの歴史を守る慈善家になります。魔女狩りを禁止する活動をするつもりです。罪を償う贖罪として、魔力を用いたボランティアの場を提供したり……」
「ふふっ。目標が増えたわね。もちろん、錬金魔法ショップのオーナーとしても勉強することがたくさんあるわよ!」

 オーナーとしての心構えの研修に加えて、接客やバイヤーのノウハウ、金銭管理など課題は盛りだくさんだ。慈善家として、活動を始めるに当たっての方針は決まっていた。
 ティアラの人生の目標が、定まる時を迎えたのである。
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