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旅行記5 錬金魔法ショップ開業記
07 聖女の運命を知るために
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地図を頼りに表通りを抜けて奥の小道に入ると、それまでは見かけなかった魔法使いらしきローブ姿の人達が一気に見かけられるようになった。
「そういえば研修センターもちょっと奥まった地域にあるって、案内所には書いてあったわよね。到着の報告に行かないと……」
「おぉっ? 突然、魔女っぽい女の子達が増えたなぁ」
伝統的な三角帽子に黒ローブ姿の魔女ルック少女も多く、まるで御伽の国に迷い込んだような雰囲気だ。
(やっぱり、ここの魔法使い達はクロエと同じオーラの魔法を使っている)
クロエと同系統の魔力オーラを放つ多くに少女達は、黒ローブのシックな装いながらも髪飾りやアクセサリーの装飾で全体的に華やかだ。そして、ほとんどの魔法使いが猫がフクロウを連れていて、小型犬チックな幻獣のポメは浮いた存在に。
「使い魔は猫かフクロウが多いみたいだけど、ポメは犬型幻獣だから紛れる心配はないか。ポメ、お前は猫やフクロウとも上手くやれるよな」
「くいーん、きゃうんっ」
猫とフクロウだらけのここでは若干目立つ存在のポメだが、表通りに戻れば犬連れも多いためポメも強気だ。ティアラも、自分とは異質の魔法使い達の雰囲気に飲まれないよう気をつける。
「うふふっなんだか、気合の入った鳴き方よね。やっぱり緊張しているのかしら?」
「ははは……あれ、ようやく看板が見えたな。あの小道のビルが魔法グッズ管理会みたいだ。行こう」
* * *
入り組んだ迷路のような複雑な小道をようやく抜けて、ついに魔法グッズ管理会の本部へと辿り着いたティアラ達。
「遠路はるばる、ようこそいらっしゃいました。オーナーとなるティアラさんには、会長自ら特別な面談を行います。会長は現在百歳の長寿ですが、腕は衰えておりませんのでご安心を。よろしければ使い魔ちゃんも御一緒に。ジルさんは……一階でお茶を飲んで休んでいて下さい。魔法使い以外は二階に上がれないしきたりですが、面談後に会長から挨拶がありますので」
「まぁ会長さんは、百歳を越えていらっしゃるの? 魔女ってやっぱり長寿なのね。うぅ……なんだか緊張しちゃうわ」
魔法使いルックの若い受付の男性いわく、二階の面接室で百歳越えの会長が自らティアラと面談してくれるという。魔法使いではないジルは、一階の休憩スペースでお茶を飲んで待機だ。
「ここのお茶は全て魔法グッズ管理会で販売している魔女の特製ハーブティーなんですよ。試飲も兼ねてどうぞお召し上がりください」
「へぇラベンダーのお茶なんて、うちの国じゃ珍しいんだ。ティアラ、オレはここで待機だけど、せっかくだし商品をいろいろ見せてもらうよ」
「分かったわ、行ってきます」
二階に上がると部屋の中はいくつかのカーテンで仕切られたスペースがあり、壁面には魔法陣や鹿の剥製が飾られていてこの地方特有の魔法文化をアピールしているようだ。面談が行われる個室は星模様が施された紫色のカーテンで仕切られていて、既に黒いローブのフードで顔を隠した魔女が鑑定士の如く水晶玉とホロスコープの用紙と睨めっこしていた。
(これってどちらかというと、面接というより占いの館みたいだわ。それとも、この業界の面談ってもしかして占いを受けることなのかしら?)
「いらっしゃい、緊張しなくていいのよ。初めてまして、お嬢さん。私がこの魔法グッズ管理会本部の会長、兼占い師のベルベッドよ。新しいオーナーになる魔法使いは、まずはここで運勢を占ってから方針を決めるの……ふふっ」
「初めまして、ベルベッドさん。ティアラ・ハルトリアと申します……って、えぇっ本部の会長さんって百歳越えてるって聞いていたんですが。どう見てもお若いような……」
目深にかぶっていたフードをとって、意味ありげに微笑む妖艶な美女。色っぽい声に加えて、流し目が似合う瞳がベルベッドの艶めいた雰囲気を増していた。緩やかなウェーブの赤い髪をかきあげ、ボルドーの口紅がよく似合うその姿は、どう見ても三十代前後で百歳越えのものではない。
「あら、受付の子は私のことを百歳って紹介したの。本当はもう少し上なんだけど。それでは、鑑定を始めましょう……あなたの終わらない聖女の運命を知るために」
「そういえば研修センターもちょっと奥まった地域にあるって、案内所には書いてあったわよね。到着の報告に行かないと……」
「おぉっ? 突然、魔女っぽい女の子達が増えたなぁ」
伝統的な三角帽子に黒ローブ姿の魔女ルック少女も多く、まるで御伽の国に迷い込んだような雰囲気だ。
(やっぱり、ここの魔法使い達はクロエと同じオーラの魔法を使っている)
クロエと同系統の魔力オーラを放つ多くに少女達は、黒ローブのシックな装いながらも髪飾りやアクセサリーの装飾で全体的に華やかだ。そして、ほとんどの魔法使いが猫がフクロウを連れていて、小型犬チックな幻獣のポメは浮いた存在に。
「使い魔は猫かフクロウが多いみたいだけど、ポメは犬型幻獣だから紛れる心配はないか。ポメ、お前は猫やフクロウとも上手くやれるよな」
「くいーん、きゃうんっ」
猫とフクロウだらけのここでは若干目立つ存在のポメだが、表通りに戻れば犬連れも多いためポメも強気だ。ティアラも、自分とは異質の魔法使い達の雰囲気に飲まれないよう気をつける。
「うふふっなんだか、気合の入った鳴き方よね。やっぱり緊張しているのかしら?」
「ははは……あれ、ようやく看板が見えたな。あの小道のビルが魔法グッズ管理会みたいだ。行こう」
* * *
入り組んだ迷路のような複雑な小道をようやく抜けて、ついに魔法グッズ管理会の本部へと辿り着いたティアラ達。
「遠路はるばる、ようこそいらっしゃいました。オーナーとなるティアラさんには、会長自ら特別な面談を行います。会長は現在百歳の長寿ですが、腕は衰えておりませんのでご安心を。よろしければ使い魔ちゃんも御一緒に。ジルさんは……一階でお茶を飲んで休んでいて下さい。魔法使い以外は二階に上がれないしきたりですが、面談後に会長から挨拶がありますので」
「まぁ会長さんは、百歳を越えていらっしゃるの? 魔女ってやっぱり長寿なのね。うぅ……なんだか緊張しちゃうわ」
魔法使いルックの若い受付の男性いわく、二階の面接室で百歳越えの会長が自らティアラと面談してくれるという。魔法使いではないジルは、一階の休憩スペースでお茶を飲んで待機だ。
「ここのお茶は全て魔法グッズ管理会で販売している魔女の特製ハーブティーなんですよ。試飲も兼ねてどうぞお召し上がりください」
「へぇラベンダーのお茶なんて、うちの国じゃ珍しいんだ。ティアラ、オレはここで待機だけど、せっかくだし商品をいろいろ見せてもらうよ」
「分かったわ、行ってきます」
二階に上がると部屋の中はいくつかのカーテンで仕切られたスペースがあり、壁面には魔法陣や鹿の剥製が飾られていてこの地方特有の魔法文化をアピールしているようだ。面談が行われる個室は星模様が施された紫色のカーテンで仕切られていて、既に黒いローブのフードで顔を隠した魔女が鑑定士の如く水晶玉とホロスコープの用紙と睨めっこしていた。
(これってどちらかというと、面接というより占いの館みたいだわ。それとも、この業界の面談ってもしかして占いを受けることなのかしら?)
「いらっしゃい、緊張しなくていいのよ。初めてまして、お嬢さん。私がこの魔法グッズ管理会本部の会長、兼占い師のベルベッドよ。新しいオーナーになる魔法使いは、まずはここで運勢を占ってから方針を決めるの……ふふっ」
「初めまして、ベルベッドさん。ティアラ・ハルトリアと申します……って、えぇっ本部の会長さんって百歳越えてるって聞いていたんですが。どう見てもお若いような……」
目深にかぶっていたフードをとって、意味ありげに微笑む妖艶な美女。色っぽい声に加えて、流し目が似合う瞳がベルベッドの艶めいた雰囲気を増していた。緩やかなウェーブの赤い髪をかきあげ、ボルドーの口紅がよく似合うその姿は、どう見ても三十代前後で百歳越えのものではない。
「あら、受付の子は私のことを百歳って紹介したの。本当はもう少し上なんだけど。それでは、鑑定を始めましょう……あなたの終わらない聖女の運命を知るために」
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