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旅行記5 錬金魔法ショップ開業記
06 ほうきで空飛ぶ魔女文化
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魔女文化や錬金術など、現代魔法の基礎を作り出したとされる『魔法国家イングリッド』の中心都市ロンドッシュ。ティアラの出身地である精霊国家フェルトとは異なるルーツの魔法文化、古き良き伝統の街で魔法グッズ管理会の研修が行われる。
飛空船で二時間半の旅を終えて空港を出ると、タイミングよく雨があがった後。荷物を宿泊先に預けて、早速中心地を歩くと、街並みはスタイリッシュで行き交う人々もスマートな印象。魔法使いルックの者も数人はいるが、想像よりは多くない印象だ。
「ここがロンドッシュ。魔法の伝統都市だって聞いていたから、もっとローブ姿の魔法使いが沢山いるのを想像していたけど。実際はトレンチコート姿のビジネスマンやオフィスレディが多いみたい、魔法の中心地はもう少し離れた場所なのかしら」
「ロンドッシュは他国の人が訪問する出入り口であると同時に、ビジネス拠点だって言うからな。って、おいティアラ……オレ達は飛んだ勘違いしていたみたいだ。上空を見てみろよ」
ジルがティアラにそれとなく、空の上を見るように促した。不思議に思いティアラもふと空を見上げると、驚くべき気ことにほうきに乗って空を飛ぶ魔女や魔法使いが多数。どうやらこの土地の魔法使い達は、ほうきで空を飛ぶ技術を身につけている様子。
「うわぁ……びっくりしたわ、こんなに上空に魔法使い達がいるなんて! 空を飛ぶ魔法なんて、難しいと思っていたけど。実はこの辺りの魔法使いからすると、一般的な魔法なのね」
「ほうきで空飛ぶ魔女文化が未だに続いているのは、この都市が魔法使いに寛容だからだろう」
「きゃん、きゃん!」
空飛ぶ魔法使い達に驚きつつも、ティアラは異なる魔法文化の特徴ということで、すかさず手帳と万年筆でメモをし始めた。ポメも上空を見上げほうきで空を飛ぶ魔女に釘付けで、幻獣にとっても飛空魔法は珍しいようだ。
『イングリッド地方の魔法使いは、ほうきで空を飛ぶことが出来る』
(あらっ……そういえば、フェルトに召喚された時のクロエも空から降ってきたわよね。ただの偶然かしら? 他所の地域で魔法の勉強をしていたとしか、噂には聞いていないし。けどなんとなく、クロエが使っていた魔法のオーラに近いものがあるわ)
そこでティアラは自分と入れ替わるように召喚されたもう一人の聖女クロエが、この地域の魔法文化に近い魔力を持っていることに気付く。聖女退任がほぼ決定していたティアラには、新たな聖女クロエの情報はそれほど入って来なかったため、詳細は不明のままだ。
クロエはティアラよりも四歳下で、当時は十三歳くらいだった。今は十四歳くらいになっているが、それでもまだ子供の域だろう。当時二十九歳だったマゼランス王太子とクロエに至っては十六歳もの年齢差があり、彼がクロエに甘いのも保護者的欲求が多少あるはず。
そのため、小生意気な態度を取っていてもティアラの方が我慢していたが、いろいろと嫌な思い出がある人物なのも確かだ。
なんせ最後に聞いたセリフが『バイバーイ、偽物の聖女さん!』という嫌味全開のものだったのだから。
可愛らしい容姿に似合わず毒舌で、ティアラが追放された時も嫌味なセリフと態度を取っていた。そもそもそんな歳若い少女に、国家の魔法動力を全て任せているフェルトやマゼランス王太子にもかなり問題がある。
ちょうど情緒が不安定な年頃のクロエを甘やかせば甘やかすほど、悪い方に行くのは目に見えているのに、とティアラは多少なりとも苛立ちを覚えた。
「魔法使い達はもう少し奥の地域から飛んでくるな。案内によると表通りよりも少し奥の地域に、魔法グッズの店はあるらしいぞ」
ジルに話の続きをされて、ハッとティアラは我に返った。小生意気な少女クロエを思い出して、オーナーの勉強を怠るわけにはいかない。
だが、魔力が低くなったとはいえ、元・トップ聖女の勘は確かなもので、この土地がクロエと関連していることは確定事項だった。そしてティアラは追放されてもなお、自分自身が『聖女』の宿命を背負っていることを改めて知ることになるのだ。
飛空船で二時間半の旅を終えて空港を出ると、タイミングよく雨があがった後。荷物を宿泊先に預けて、早速中心地を歩くと、街並みはスタイリッシュで行き交う人々もスマートな印象。魔法使いルックの者も数人はいるが、想像よりは多くない印象だ。
「ここがロンドッシュ。魔法の伝統都市だって聞いていたから、もっとローブ姿の魔法使いが沢山いるのを想像していたけど。実際はトレンチコート姿のビジネスマンやオフィスレディが多いみたい、魔法の中心地はもう少し離れた場所なのかしら」
「ロンドッシュは他国の人が訪問する出入り口であると同時に、ビジネス拠点だって言うからな。って、おいティアラ……オレ達は飛んだ勘違いしていたみたいだ。上空を見てみろよ」
ジルがティアラにそれとなく、空の上を見るように促した。不思議に思いティアラもふと空を見上げると、驚くべき気ことにほうきに乗って空を飛ぶ魔女や魔法使いが多数。どうやらこの土地の魔法使い達は、ほうきで空を飛ぶ技術を身につけている様子。
「うわぁ……びっくりしたわ、こんなに上空に魔法使い達がいるなんて! 空を飛ぶ魔法なんて、難しいと思っていたけど。実はこの辺りの魔法使いからすると、一般的な魔法なのね」
「ほうきで空飛ぶ魔女文化が未だに続いているのは、この都市が魔法使いに寛容だからだろう」
「きゃん、きゃん!」
空飛ぶ魔法使い達に驚きつつも、ティアラは異なる魔法文化の特徴ということで、すかさず手帳と万年筆でメモをし始めた。ポメも上空を見上げほうきで空を飛ぶ魔女に釘付けで、幻獣にとっても飛空魔法は珍しいようだ。
『イングリッド地方の魔法使いは、ほうきで空を飛ぶことが出来る』
(あらっ……そういえば、フェルトに召喚された時のクロエも空から降ってきたわよね。ただの偶然かしら? 他所の地域で魔法の勉強をしていたとしか、噂には聞いていないし。けどなんとなく、クロエが使っていた魔法のオーラに近いものがあるわ)
そこでティアラは自分と入れ替わるように召喚されたもう一人の聖女クロエが、この地域の魔法文化に近い魔力を持っていることに気付く。聖女退任がほぼ決定していたティアラには、新たな聖女クロエの情報はそれほど入って来なかったため、詳細は不明のままだ。
クロエはティアラよりも四歳下で、当時は十三歳くらいだった。今は十四歳くらいになっているが、それでもまだ子供の域だろう。当時二十九歳だったマゼランス王太子とクロエに至っては十六歳もの年齢差があり、彼がクロエに甘いのも保護者的欲求が多少あるはず。
そのため、小生意気な態度を取っていてもティアラの方が我慢していたが、いろいろと嫌な思い出がある人物なのも確かだ。
なんせ最後に聞いたセリフが『バイバーイ、偽物の聖女さん!』という嫌味全開のものだったのだから。
可愛らしい容姿に似合わず毒舌で、ティアラが追放された時も嫌味なセリフと態度を取っていた。そもそもそんな歳若い少女に、国家の魔法動力を全て任せているフェルトやマゼランス王太子にもかなり問題がある。
ちょうど情緒が不安定な年頃のクロエを甘やかせば甘やかすほど、悪い方に行くのは目に見えているのに、とティアラは多少なりとも苛立ちを覚えた。
「魔法使い達はもう少し奥の地域から飛んでくるな。案内によると表通りよりも少し奥の地域に、魔法グッズの店はあるらしいぞ」
ジルに話の続きをされて、ハッとティアラは我に返った。小生意気な少女クロエを思い出して、オーナーの勉強を怠るわけにはいかない。
だが、魔力が低くなったとはいえ、元・トップ聖女の勘は確かなもので、この土地がクロエと関連していることは確定事項だった。そしてティアラは追放されてもなお、自分自身が『聖女』の宿命を背負っていることを改めて知ることになるのだ。
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