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旅行記5 錬金魔法ショップ開業記
01 オーナーに最適な人物
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錬金術師に転職したティアラは、ギルドの納品クエストをこなしながら着実に実力を身につけていった。バトルで出来てしまった傷痕を残さず治すポーションをはじめ、アミュレットや杖に魔石をプラスする装備錬金にも挑戦している。
「今日はハイランクポーション5本組10セット、水の魔石付き魔法杖10本、アミュレット各種30個ずつを納品です。次は来週納品しに来ますね」
「最近はフェルトとの貿易が無いので、魔法グッズが足りなかったんです。アミュレットなんか在庫が切れてましたもの、本当に助かります」
「自分の錬金技術を上げる勉強にもなりますし、役に立てて良かった」
ギルド規則の関係でランクは初級錬金術師ながら、実力は折り紙付きになっていた。
「凄いですね、ティアラさんは。やはり前職の聖女スキルが、錬金にも活きているのでしょう。アイテムの完成度は非常に高いですので、後はバリエーションを増やしていくだけですよ」
「あはは……それほどでも」
自宅で錬金したアイテムを納品をしにギルド受付へと手渡しに行くと、受付嬢からちょっぴり大げさに絶賛されるティアラ。だが、褒められているのに今ひとつ浮かない表情なのは、理由があった。
「ところで、魔法グッズ管理会からのご案内読んでいただけたでしょうか? 私、思うんです……この加盟店のオーナーに最適な人物は、ティアラさんしか居ないと!」
「えぇ案内書は読みましたが、私には荷が重いというか。それにまだ、ハルトリアという土地に慣れていませんし」
「ですが、ハルトリアの魔法系ギルド所属者の大半が、ティアラさんの故郷フェルトであることも事実。ここはフェルト出身でハルトリア公爵一族に嫁がれたティアラさんに、人肌脱いで頂きたかったのですけど。また次の機会に」
受付嬢の優しげな笑顔の奥にビジネス的な視線を感じたが、ティアラは気付かないフリして立ち去った。ギルドに入会してから一カ月、ティアラは魔法グッズ管理会という小売店の組織から『加盟店として店舗のオーナーになりませんか』とお誘いが続いている。
だが、本部のサポートがあるとはいえ自分の店を持つというのは、大きなビジネスである。ティアラの本音では、興味が無いと言えば嘘になる。けれど、謙虚なティアラからすると嫁いで来てまだ三ヶ月も経たないのに、『自分のお店を持ちたい』なんて言い出せない。
(大手魔法グッズ管理会の加盟店オーナーになって、魔法グッズや錬金アイテムを売っていいなんて。夢のようなお話だけど、私にはまだ早いわよね)
邸宅に務めるお付きの人と納品作業を終えて今日の賃金を受け取り、ロビーで待っていた爺やと落ち合う。
「納品お疲れ様です、ティアラ様。この爺やも最近は、アクティブに目覚めまして。運転手も車の整備に余念が無いのです。これからも、どんどん錬金致しましょう! 錬金レベルが上がれば納品の数も増えますし、新たなやり甲斐が出てきましたぞ」
「そうね、とても助かってるわ。私一人じゃ、これだけの荷物を運べないもの。ありがとう」
ハルトリア家もティアラの錬金活動を応援しているようで、荷物が運びやすい商用車としても使えるバンタイプの車を購入してくれた。
(納品作業だって邸宅の付き人や爺やさんが車で送り迎えしてくれるから、屋敷から楽に運べているだけだし。これ以上は、家族に迷惑かけられないわ。家に帰ったらポメを撫でて、少し気持ちを落ち着かせよう)
「そういえば今日は、久しぶりにジル様が出張からお戻りになられる日。魔法グッズショップオーナーの件について、嬉しいお話しがあるとか……楽しみですなぁ」
「えっジルから、ショップオーナーに関する話が? 一体、何かしら?」
愛する夫が出張から帰ってくるのは嬉しいが、どうやら土産話を用意している様子。運命とは不思議なものでティアラを後押しするように、新たな転機が待っているのであった。
「今日はハイランクポーション5本組10セット、水の魔石付き魔法杖10本、アミュレット各種30個ずつを納品です。次は来週納品しに来ますね」
「最近はフェルトとの貿易が無いので、魔法グッズが足りなかったんです。アミュレットなんか在庫が切れてましたもの、本当に助かります」
「自分の錬金技術を上げる勉強にもなりますし、役に立てて良かった」
ギルド規則の関係でランクは初級錬金術師ながら、実力は折り紙付きになっていた。
「凄いですね、ティアラさんは。やはり前職の聖女スキルが、錬金にも活きているのでしょう。アイテムの完成度は非常に高いですので、後はバリエーションを増やしていくだけですよ」
「あはは……それほどでも」
自宅で錬金したアイテムを納品をしにギルド受付へと手渡しに行くと、受付嬢からちょっぴり大げさに絶賛されるティアラ。だが、褒められているのに今ひとつ浮かない表情なのは、理由があった。
「ところで、魔法グッズ管理会からのご案内読んでいただけたでしょうか? 私、思うんです……この加盟店のオーナーに最適な人物は、ティアラさんしか居ないと!」
「えぇ案内書は読みましたが、私には荷が重いというか。それにまだ、ハルトリアという土地に慣れていませんし」
「ですが、ハルトリアの魔法系ギルド所属者の大半が、ティアラさんの故郷フェルトであることも事実。ここはフェルト出身でハルトリア公爵一族に嫁がれたティアラさんに、人肌脱いで頂きたかったのですけど。また次の機会に」
受付嬢の優しげな笑顔の奥にビジネス的な視線を感じたが、ティアラは気付かないフリして立ち去った。ギルドに入会してから一カ月、ティアラは魔法グッズ管理会という小売店の組織から『加盟店として店舗のオーナーになりませんか』とお誘いが続いている。
だが、本部のサポートがあるとはいえ自分の店を持つというのは、大きなビジネスである。ティアラの本音では、興味が無いと言えば嘘になる。けれど、謙虚なティアラからすると嫁いで来てまだ三ヶ月も経たないのに、『自分のお店を持ちたい』なんて言い出せない。
(大手魔法グッズ管理会の加盟店オーナーになって、魔法グッズや錬金アイテムを売っていいなんて。夢のようなお話だけど、私にはまだ早いわよね)
邸宅に務めるお付きの人と納品作業を終えて今日の賃金を受け取り、ロビーで待っていた爺やと落ち合う。
「納品お疲れ様です、ティアラ様。この爺やも最近は、アクティブに目覚めまして。運転手も車の整備に余念が無いのです。これからも、どんどん錬金致しましょう! 錬金レベルが上がれば納品の数も増えますし、新たなやり甲斐が出てきましたぞ」
「そうね、とても助かってるわ。私一人じゃ、これだけの荷物を運べないもの。ありがとう」
ハルトリア家もティアラの錬金活動を応援しているようで、荷物が運びやすい商用車としても使えるバンタイプの車を購入してくれた。
(納品作業だって邸宅の付き人や爺やさんが車で送り迎えしてくれるから、屋敷から楽に運べているだけだし。これ以上は、家族に迷惑かけられないわ。家に帰ったらポメを撫でて、少し気持ちを落ち着かせよう)
「そういえば今日は、久しぶりにジル様が出張からお戻りになられる日。魔法グッズショップオーナーの件について、嬉しいお話しがあるとか……楽しみですなぁ」
「えっジルから、ショップオーナーに関する話が? 一体、何かしら?」
愛する夫が出張から帰ってくるのは嬉しいが、どうやら土産話を用意している様子。運命とは不思議なものでティアラを後押しするように、新たな転機が待っているのであった。
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