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しおりを挟む突然現れた謎のイケメンは、何を思ったか私の姿を確認するや否やプロポーズをかましてきた。ちょっと待ってよ、いきなりプロポーズ? 何ソレ。
こんな超絶イケメンからプロポーズされるなんて、ありえないんですけどぉ~!
しかしこちらは辺境の令嬢とはいえ一応は貴族の娘。突如目の前に現れた未知のイケメンに「ありえないんですけどぉ~」なんて、馴れ馴れしい言葉遣いで語りかけるわけにもいかず。一応は丁寧語を交えつつ、何かしらの誤解を解くことに。
「あっあの、一体どちら様でしょうか。私なんかに、プロポーズするなんて。エイプリル・フールはもう終わっていますよ」
「……そ、そんなっ。オレ、アリシアお姉ちゃんをお嫁さんにするために、全身全霊をかけて努力して大人っぽくなったのにっ。まさか、オレのこと忘れちゃったの」
ちょこんと首を傾げてイケボとともに、甘えるような仕草で子犬のような目で訊ねてくるイケメン。
(あざといっあざといよ、このイケメン! そんな甘い声で首ちょこんされたら、誰でも落ちるっつーの)
推定身長180センチ前後、体重63キロといった感じの絵に書いたようなイケメン君は、まるで私とイケメン君が懇意の中のような言い回し。イケメンの明るい薄茶色のオシャレふんわりヘアがふわっと風に揺れて、地味目女子の私とは正反対の煌びやかなオーラを発している。
「忘れちゃったのと申されましても、あいにく男の方とご縁のない生活を送っておりますゆえ。あなたのような美青年とは、お会いするのも初めてというか」
悪くいえば地味、よく言えばお上品な深窓のご令嬢という基本設定を守り抜くため、私はイケメンに対して敢えて『美青年』というちょいおかためな表現方法を採用した。
すると私とイケメンのやり取りを遠巻きで見守っていた私のお父様が、「はははっ」と豪快に笑いながらこの場に混ざってきた。私がイケメンに対してあまりにも素っ気ない態度を取っているから、フォローに入って来たのかも知れない。
「アリシア、なんだまだ気がつかないのか。まぁあまりにもカッコ良く成長してしまったから、気づかなくても無理ないか。お前の幼馴染みのリチャード君だよ、ほれ一歳年下のあの」
「えっ……リチャード君? あの天使がそのまま実体化したような、ふわふわキュートなリチャード君? このモデルや俳優顔負けの超絶イケメンがっ」
「うむ。お前も深窓のご令嬢で誰がどう見ても美人からといって、あんまり男を遠ざけていては嫁ぎ先に困るだろう。良かったな、リチャード君がいて……おい、アリシア聴いておるか?」
思わず地味系女子という基本設定を忘れて、驚きのあまり呆然とする。神様……本当にこのイケメンがあのリチャード君だとおっしゃるのですかっ?
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