妖時々人の子よ。

1話

並木桜の女性 1

　佐々木さん夫婦に引き取られて、
　1週間が経った。

　学校はまだ手続きなどがあり、
　通えないので、早く新しい環境に慣れる為近所を散歩していた。

　辺りは山や、田んぼしかないが山奥に入ると綺麗な並木桜が散り始めていた。

「もう、春も過ぎてしまうのか…」

気づいたらそう呟いていた。
今までこんなに季節を感じたことが無かった。

あぁ僕はここで生きていくんだ。

もうすっかり暖かな風が僕の心をすっと温めていた。


その日は、並木桜を眺めた後、近くの小さな神社に立ち寄った。

もうその神社は人は居なくて、静かだったけど小さな妖怪達が楽しそうに辺りを走り回っていた。

正直妖怪は好きではない、でも必ずしも悪い奴とは限らない。

沢山居るんだ。そう沢山。

小さくて可愛い妖怪もいれば、人間に取り憑く妖怪、大きいけど自然が大好きな妖怪、イタズラが大好きな妖怪。

みんな違うけど、小さい頃よりは好きになれたきがしている。

妖怪が見える人間は、数少なくてほとんど遺伝的なものらしいが 「妖力」と言うものは、その人次第らしい。

僕の妖力は妖怪が見えて、会話ができる程度だけど、
もう少し妖力が強ければ、妖怪と契約?的なものができるとも聞いた事がある。

妖怪が見えるものが、僕以外にも居るのかはまだ知らない。
けど、居るとしたら話してみたい。

思ってしまったんだ。妖怪について知りたいと、そう思ってしまった。

妖怪と話してみたいと思ってしまった.

静けさが増す神社でそんなことを心の中で話していた僕は、

雲ひとつない青空を見上げながら、目を閉じてしまっていた。

暖かいけど、どこか冷たい風は僕の身体を休めるように包んでいた。

それがとても気持ちよくて、ついうたた寝をしてしまった。

「ん、なんだろこれ。夢…。誰かの記憶」

すっかり眠りについていた僕は、誰かの記憶の夢を見ていた。

そこには、並木桜を眺めながら、ただ静かに寂しそうな目で眺めていた着物を着た女性が映っていた。

「さくまさん、今年で80年目ね。」

彼女は、そう呟いていた。

僕にはよく分からなかったけど、
何故かその女性が悲しそうに見えてしまった。

すっかり冷たい風が吹いていた。
僕はやっと目が覚めた、もう辺りはすっかり暗くなる準備をしているかのように.

「もう、夕方か帰らないとな。」

そう呟いた。僕は胸が少し高鳴った。
みんなにとっては当たり前の言葉だけど、家にいるのが苦痛だった僕には少し嬉しく感じて不思議な気分だった。

山を降りるのは少し大変だった。
けど、自然に触れられて気持ちが良かった。

夜は、佐々木さんの手料理を食べて少し大きめのお風呂に入った。

佐々木さん家は、大きいのに人数は少ない。
けれど、とても暖かい家だ。

前の家では、僕の部屋はほぼ物置くらいの部屋で布団は薄い敷布団だったので、

今はとても大きな部屋で落ち着かないけど、感謝している。

そんなことを考えながら、
僕はふかふかのベットに入って、
目を閉じた。