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第四章
第24話『何かを変えたい、変わりたい』
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帰りながら話が進む。
帰り道の風景などの情景描写を入れて移動しながら話をする。
校門を出た一華と叶。
帰路に就いた2人の進行方向は同じ。
偶然同じというわけではなく、互いの家は近所といえるほどの距離感なのだ。
夕陽に照らされる街並みを眺めながら足を進める。
「そういえばさ、テストの点数」
「ぎくっ」
自分の点数を指摘されると察した一華は、まずいと思う。
「いや、今更点数についてとやかく言おうってんじゃないよ。見えちゃってさ」
「何を?」
「志信の点数がさ。ほら、真後ろだから」
「ほうほう、それで?」
「満点だった」
「うひょー。凄いね」
「ね」
関心を寄せるも、同時に肩身が狭くなる一華。
「叶ちゃんも八十点で高得点だったよね。……てことは、私が足を引っ張っちゃったんだね」
「んまあ、一樹も慌ててたし大丈夫じゃない?」
「え、でも……」
「気にしすぎだよ。個人戦だったら、確かに反省しないといけないだろうけど今の私たちはパーティ。みんなでやってるんだから、得意不得意を補い合うのは当然」
「うん。それはそうなんだけど……」
「ほーら、また丸まってるっ」
歩いてる最中、一華は自分の不甲斐なさに背中を丸めていた。
それを見逃さず、叶は一華の背中に手のひらを打ち込む。
「――いったぁい!」
「じゃあ、その癖を治すこと」
「うぅ……ヒリヒリする」
一華は届かない自らの背に手を回す。
傍から見れば、ただ背中をかけずにもがいている人にしか見えない。
偶然にも誰一人として近くを歩いていないため、笑い者にならずに済む。
痛みに気をとられ、奇怪な動きをしているも漂ってくる匂いに気を移す。
「あぁ~いい匂い~」
「この時間にこの匂いは中々にお腹を刺激するね」
「くぅ~、よだれ出てきそう」
「いや出てるよ」
「えっ、うそうそっ」
「うそ」
「ねー、もー!」
本当に些細な会話をする2人。
どこにでもいる学生であり、普通の日常。
自宅までの距離はまだまだ。
気持ちの良いそよ風に髪を靡かせ、乱れた髪をサッサッと整える。
「それでさ一華。聞きたいことがあるんだけど」
「なになに? 今日の晩御飯はまだ何にするか決まってないよ?」
「いや、そういうのじゃない。真剣な話」
「……どうしたの、急にそんな真剣な顔して」
一華は叶の表情をチラッと見、その普段とは違う声色と表情に察するものがあった。
ヘラヘラと笑顔を浮かべていた一華の表情から、一瞬にして影が落ちる。
「無理してるでしょ」
「な、なんのことかなー……って、誤魔化せないってことだよね」
「うん。ちゃんと答えて」
「叶ちゃんには全部お見通しだね。さすがは幼馴染。――そうだね。叶ちゃんの言う通りだよ」
「だったら、ちゃんと私に相談してよ。そうじゃなくても、志信だったらちゃんと考えてくれるって」
叶の訴えに、一華は足を止め「うーん……」と喉を唸らせる。
それに気づいた叶も足を止めた。
「叶ちゃんはわかると思うんだけど、私は昔からこんなだから、さ。少しは頑張ってみようかなって、少しはみんなの役に立って見せようって」
「でも、最近の一華は無理しすぎだって」
「そうだね。自分でもそう思ってる。盾に隠れて、震える手と足を必死に隠して、すぐにでも泣き出しそうな顔を隠して。動いてもいないのに、呼吸が整わなくって、倒れそうで」
「そんなの観てたらわかる。だから、そういうのをちゃんと言わないと、絶対に後から――」
「わかってる。わかってるんだよ。自分がどれくらいできるか、できないか。でもね、叶ちゃんもわかってるでしょ? 私は他の人より本当に何もできない。役立たず。そのせいで、門崎さんのパーティから追い出されちゃった」
これは一華の被害妄想でも拡大解釈でもない。
現に一華は、他の誰より体力並びに学力も足りていない。
さらには、根性と思い切りの良さが重要となる前衛クラスだというのに、それもない。
今までなんとかやれてこれたのは、やはり叶の優秀な補助あってのものだった。
「本当にね、叶ちゃんにはいつも感謝してるんだよ。感謝してもしきれないぐらい。それと同じく、ごめんなさいって思ってる」
「そんなことはないよ。私たち、幼馴染でしょ? 親友でしょ?」
「だからなんだよ。だから、私ももう少しだけ頑張ってみようって、私もみんなみたいに頑張りたいって」
「だとしても、ちゃんと言ってくれないとダメ」
「うん、確かにちょっとだけ頑張り過ぎてたかも。心配掛けちゃってごめんね」
その謝罪を受け、叶は一華を抱きしめる。
「これ以上心配掛けないでね」
「うん……」
一華は、叶が本当に心配してくれているのを理解はしていた。
自分が逆の立場だったとしても、同じく心配するのだから。
それでも、一華の心にはある棘がずっと刺さっていた。
その棘はチクチクと大した痛みではないにしろ、抜けることはない。
これは、気持ちの持ちようですぐにでも抜ける。
だが、そんな煩わしい棘を一華は自らの意思で取り除かない。
抱擁し、頭を数回撫でた叶は一華から離れる。
「こんなところを他の人に見られたら、恥ずかしいね」
「だから離れたの」
「叶ちゃん良い匂いだったから、もう少しギューッとしてくれても良かったのに~」
「またそんなことを言ってると」
「あっあっ、ごめんなさい!」
叶は一華に手の側を見せつける。
身の危険を感じるや速攻で頭を両手で隠しながら謝る一華。
先ほどの教室でもらった一撃が完全にトラウマとなってしまっていた。
まるで親と子。
何度も頭を下げる姿は、本当に観ていて面白いのだが……この光景こそ他人に見られたら変な噂が広がってしまう。
「もういこ」
そこからは先ほどと変わらず、中身のあるようなないような内容を話しながら歩いた。
楽しい時間はあっという間に終わってしまう。
気づけば分かれ道となり、右に一華、左に叶と別れる。
2人は最後に向かい合う。
「それじゃ」
「うん、ばいばいっ」
帰り道の風景などの情景描写を入れて移動しながら話をする。
校門を出た一華と叶。
帰路に就いた2人の進行方向は同じ。
偶然同じというわけではなく、互いの家は近所といえるほどの距離感なのだ。
夕陽に照らされる街並みを眺めながら足を進める。
「そういえばさ、テストの点数」
「ぎくっ」
自分の点数を指摘されると察した一華は、まずいと思う。
「いや、今更点数についてとやかく言おうってんじゃないよ。見えちゃってさ」
「何を?」
「志信の点数がさ。ほら、真後ろだから」
「ほうほう、それで?」
「満点だった」
「うひょー。凄いね」
「ね」
関心を寄せるも、同時に肩身が狭くなる一華。
「叶ちゃんも八十点で高得点だったよね。……てことは、私が足を引っ張っちゃったんだね」
「んまあ、一樹も慌ててたし大丈夫じゃない?」
「え、でも……」
「気にしすぎだよ。個人戦だったら、確かに反省しないといけないだろうけど今の私たちはパーティ。みんなでやってるんだから、得意不得意を補い合うのは当然」
「うん。それはそうなんだけど……」
「ほーら、また丸まってるっ」
歩いてる最中、一華は自分の不甲斐なさに背中を丸めていた。
それを見逃さず、叶は一華の背中に手のひらを打ち込む。
「――いったぁい!」
「じゃあ、その癖を治すこと」
「うぅ……ヒリヒリする」
一華は届かない自らの背に手を回す。
傍から見れば、ただ背中をかけずにもがいている人にしか見えない。
偶然にも誰一人として近くを歩いていないため、笑い者にならずに済む。
痛みに気をとられ、奇怪な動きをしているも漂ってくる匂いに気を移す。
「あぁ~いい匂い~」
「この時間にこの匂いは中々にお腹を刺激するね」
「くぅ~、よだれ出てきそう」
「いや出てるよ」
「えっ、うそうそっ」
「うそ」
「ねー、もー!」
本当に些細な会話をする2人。
どこにでもいる学生であり、普通の日常。
自宅までの距離はまだまだ。
気持ちの良いそよ風に髪を靡かせ、乱れた髪をサッサッと整える。
「それでさ一華。聞きたいことがあるんだけど」
「なになに? 今日の晩御飯はまだ何にするか決まってないよ?」
「いや、そういうのじゃない。真剣な話」
「……どうしたの、急にそんな真剣な顔して」
一華は叶の表情をチラッと見、その普段とは違う声色と表情に察するものがあった。
ヘラヘラと笑顔を浮かべていた一華の表情から、一瞬にして影が落ちる。
「無理してるでしょ」
「な、なんのことかなー……って、誤魔化せないってことだよね」
「うん。ちゃんと答えて」
「叶ちゃんには全部お見通しだね。さすがは幼馴染。――そうだね。叶ちゃんの言う通りだよ」
「だったら、ちゃんと私に相談してよ。そうじゃなくても、志信だったらちゃんと考えてくれるって」
叶の訴えに、一華は足を止め「うーん……」と喉を唸らせる。
それに気づいた叶も足を止めた。
「叶ちゃんはわかると思うんだけど、私は昔からこんなだから、さ。少しは頑張ってみようかなって、少しはみんなの役に立って見せようって」
「でも、最近の一華は無理しすぎだって」
「そうだね。自分でもそう思ってる。盾に隠れて、震える手と足を必死に隠して、すぐにでも泣き出しそうな顔を隠して。動いてもいないのに、呼吸が整わなくって、倒れそうで」
「そんなの観てたらわかる。だから、そういうのをちゃんと言わないと、絶対に後から――」
「わかってる。わかってるんだよ。自分がどれくらいできるか、できないか。でもね、叶ちゃんもわかってるでしょ? 私は他の人より本当に何もできない。役立たず。そのせいで、門崎さんのパーティから追い出されちゃった」
これは一華の被害妄想でも拡大解釈でもない。
現に一華は、他の誰より体力並びに学力も足りていない。
さらには、根性と思い切りの良さが重要となる前衛クラスだというのに、それもない。
今までなんとかやれてこれたのは、やはり叶の優秀な補助あってのものだった。
「本当にね、叶ちゃんにはいつも感謝してるんだよ。感謝してもしきれないぐらい。それと同じく、ごめんなさいって思ってる」
「そんなことはないよ。私たち、幼馴染でしょ? 親友でしょ?」
「だからなんだよ。だから、私ももう少しだけ頑張ってみようって、私もみんなみたいに頑張りたいって」
「だとしても、ちゃんと言ってくれないとダメ」
「うん、確かにちょっとだけ頑張り過ぎてたかも。心配掛けちゃってごめんね」
その謝罪を受け、叶は一華を抱きしめる。
「これ以上心配掛けないでね」
「うん……」
一華は、叶が本当に心配してくれているのを理解はしていた。
自分が逆の立場だったとしても、同じく心配するのだから。
それでも、一華の心にはある棘がずっと刺さっていた。
その棘はチクチクと大した痛みではないにしろ、抜けることはない。
これは、気持ちの持ちようですぐにでも抜ける。
だが、そんな煩わしい棘を一華は自らの意思で取り除かない。
抱擁し、頭を数回撫でた叶は一華から離れる。
「こんなところを他の人に見られたら、恥ずかしいね」
「だから離れたの」
「叶ちゃん良い匂いだったから、もう少しギューッとしてくれても良かったのに~」
「またそんなことを言ってると」
「あっあっ、ごめんなさい!」
叶は一華に手の側を見せつける。
身の危険を感じるや速攻で頭を両手で隠しながら謝る一華。
先ほどの教室でもらった一撃が完全にトラウマとなってしまっていた。
まるで親と子。
何度も頭を下げる姿は、本当に観ていて面白いのだが……この光景こそ他人に見られたら変な噂が広がってしまう。
「もういこ」
そこからは先ほどと変わらず、中身のあるようなないような内容を話しながら歩いた。
楽しい時間はあっという間に終わってしまう。
気づけば分かれ道となり、右に一華、左に叶と別れる。
2人は最後に向かい合う。
「それじゃ」
「うん、ばいばいっ」
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