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追うは先人、世界の謎
『剣崎雄の世界論』
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「随分歩いたようだが、目的地はこんな僻地にあるのか?」
信じられん、という感情が顔から漏れ出ているコウをよそ目に俺は剣崎の実家へと向かう。元実家と言った方が相応しいだろうか。あの家に住んでいた剣崎家は今から一世紀以上前に家出したバカ息子剣崎雄の代で途絶えたわけで、今剣崎が使っているあの家は知り合い経由であいつが両親から買い取ったものである。知り合いを通したのはさすがに何年も家出していた息子がほぼ当時のままの姿で帰宅するのはおかしな話だからであろう。身内がいない俺にはあまり関係ない心配事だが、不老というのは面倒なものだ。
「着いたぞ、ここが現在進行形で更新されゆく裏地球百貨辞典、『剣崎雄の世界論』の保管庫だ。」
「はあ…少し豪華だが、ただの一軒家では?それに『剣崎雄の世界論』とは何だ?」
「そうだな…あれを分かりやすく言うなら不老不死者が書いている世界についての記録、だろうか。」
「…驚いた、ここにはそんな者もいるのか。その不死者というのが恐らく書のタイトルにある、剣崎という人物なのだな?」
驚きたいのはこちらの方だ、裏地球と表地球についてあっさり理解し受け入れたことは聞いていたが不老不死者なんて非現実的な存在を耳にしても派手な反応をせず、とは言え信じていないわけでもなく…。この並外れた理解力と柔軟な姿勢は恐らく天性のものだろう…。アホなうえ独自の解釈を挟み過ぎる剣崎よりもこいつの方が世界の記録に向いているんじゃないか?
「待て、今までの話からするとここはその剣崎という人物の家だろう?勝手に入っていいものなのか?」
「俺についてきたからこその特典だぞ。合鍵はこれしかないからな。」
「Fantastic!不死者とも知り合いだなんて、Mr.Tiglioたちも言っていたがやはりあなたは普通の旅人じゃないな!」
まあそもそも俺がそいつを不死にしたのだが。それは言わないでおくとして、既にコウは十分剣崎に興味を持っているようだ。ここまでは計画通りだとして、果たして『世界論』はコウの御眼鏡にかなう代物だろうか…。
「…ふむ、てっきりこの世界は魔法や異種族といったfantasy色の濃い世界かと思ったが、理研特区だったか、科学が主流の国もあるのだな。途中に入る主観100%の観光案内や謎の武勇伝も含め面白い書物だ。」
「あれを面白いと言えるなんてなかなか変わったセンスしてんな…」
「そうだろうか。まあ私は変わり者だとよく言われるからな…。それにしても文章の面白さ以上に何十冊もこのような記録を書き続けていることがすごい。無限の時間に比例するかのような無限の好奇心を持っているのだろうか、いやあれこれ考えても意味はないな。文からわかることもあるが、やはり実際彼に会ってみないと…」
「コウ、お前がどれだけ剣崎に興味を持ったかは十分わかったから…」
「そうか、では彼を探すのを手伝ってくれるだろうか?」
「別にそれは構わんよ。元々俺がヴァッフェルにいたのは剣崎を探していたからだし…」
「なんと!彼はヴァッフェル王国にいるのか?」
「可能性があるだけだ。」
「いずれにせよ私とあなたの目的が同じなら同行させてもらうではないか。あなたといれば他にも面白そうな人物に会えるかもしれない。」
「…ご自由に」
と言っても俺が引き寄せるのは厄災ばかりだと思うが…。だがまあそれもコウにとってはある意味面白いことなのかもしれない。
信じられん、という感情が顔から漏れ出ているコウをよそ目に俺は剣崎の実家へと向かう。元実家と言った方が相応しいだろうか。あの家に住んでいた剣崎家は今から一世紀以上前に家出したバカ息子剣崎雄の代で途絶えたわけで、今剣崎が使っているあの家は知り合い経由であいつが両親から買い取ったものである。知り合いを通したのはさすがに何年も家出していた息子がほぼ当時のままの姿で帰宅するのはおかしな話だからであろう。身内がいない俺にはあまり関係ない心配事だが、不老というのは面倒なものだ。
「着いたぞ、ここが現在進行形で更新されゆく裏地球百貨辞典、『剣崎雄の世界論』の保管庫だ。」
「はあ…少し豪華だが、ただの一軒家では?それに『剣崎雄の世界論』とは何だ?」
「そうだな…あれを分かりやすく言うなら不老不死者が書いている世界についての記録、だろうか。」
「…驚いた、ここにはそんな者もいるのか。その不死者というのが恐らく書のタイトルにある、剣崎という人物なのだな?」
驚きたいのはこちらの方だ、裏地球と表地球についてあっさり理解し受け入れたことは聞いていたが不老不死者なんて非現実的な存在を耳にしても派手な反応をせず、とは言え信じていないわけでもなく…。この並外れた理解力と柔軟な姿勢は恐らく天性のものだろう…。アホなうえ独自の解釈を挟み過ぎる剣崎よりもこいつの方が世界の記録に向いているんじゃないか?
「待て、今までの話からするとここはその剣崎という人物の家だろう?勝手に入っていいものなのか?」
「俺についてきたからこその特典だぞ。合鍵はこれしかないからな。」
「Fantastic!不死者とも知り合いだなんて、Mr.Tiglioたちも言っていたがやはりあなたは普通の旅人じゃないな!」
まあそもそも俺がそいつを不死にしたのだが。それは言わないでおくとして、既にコウは十分剣崎に興味を持っているようだ。ここまでは計画通りだとして、果たして『世界論』はコウの御眼鏡にかなう代物だろうか…。
「…ふむ、てっきりこの世界は魔法や異種族といったfantasy色の濃い世界かと思ったが、理研特区だったか、科学が主流の国もあるのだな。途中に入る主観100%の観光案内や謎の武勇伝も含め面白い書物だ。」
「あれを面白いと言えるなんてなかなか変わったセンスしてんな…」
「そうだろうか。まあ私は変わり者だとよく言われるからな…。それにしても文章の面白さ以上に何十冊もこのような記録を書き続けていることがすごい。無限の時間に比例するかのような無限の好奇心を持っているのだろうか、いやあれこれ考えても意味はないな。文からわかることもあるが、やはり実際彼に会ってみないと…」
「コウ、お前がどれだけ剣崎に興味を持ったかは十分わかったから…」
「そうか、では彼を探すのを手伝ってくれるだろうか?」
「別にそれは構わんよ。元々俺がヴァッフェルにいたのは剣崎を探していたからだし…」
「なんと!彼はヴァッフェル王国にいるのか?」
「可能性があるだけだ。」
「いずれにせよ私とあなたの目的が同じなら同行させてもらうではないか。あなたといれば他にも面白そうな人物に会えるかもしれない。」
「…ご自由に」
と言っても俺が引き寄せるのは厄災ばかりだと思うが…。だがまあそれもコウにとってはある意味面白いことなのかもしれない。
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