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Aspiration
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あの時は咄嗟に兄弟かなどと言ったが、あれは正しく鴇子本人であった。もう5年近く彼女に会っていないが確かにあれは鴇子だ。しかし何故彼女は偽名まで使って男のふりをしているのだろう。それにあの身なりといい、ナタリーに協力していることといい、実家から離れて行き場のない生活をしているに違いない。
彼女の実家、浜野家は外国、若市にルーツを持つ一族でありヴァッフェル建国の時から王家に様々な書物を提供していた書店兼出版社だ。諸外国の質の良い書物を仕入れることに長けており王家の書斎にある本の多くは浜野家の力を借りて集めたものだ。最大手の出版社として国民の文化や教育にも多大な貢献をした。そんな浜野家の一人娘である浜野鴇子は幼少期から本に囲まれた生活を送っており社交界などで顔を合わせた時には本についての話を色々と聞いたものだ。特に彼女は物語が大好きで古今東西あらゆる物語について話してくれた。俺はその中の騎士や戦いのシーンが好きだったが、彼女は物語に登場する可憐な令嬢や姫君に興味があったようだ。幼い俺はきらびやかな少女たちに憧れる彼女を見て”女の子の趣味はわからないな…”と少し退屈な気分になった。だが後から聞いた話によると彼女は本以外のことに興味がなく加えてシャイであったため、あまり社交界で他の令嬢たちと馴染むことができなかったらしい。今思うと物語の中の令嬢に強い憧れを抱いていたのは上手くいかない現実からの逃避でもあったのかもしれない。
だがそうだ、記憶の中の浜野鴇子は本に夢中な点以外は至って普通の少女であった。もしあの時騎士の戦いや凶悪なドラゴンについて俺と熱く語り合っていたなら”ハヤテ”として生きることにも合点がいく。しかし別に彼女には男子のような趣味があったわけではない。だからこそ鴇子の行動の理由がわからないのだ。
「ちょっと、ホルニ!さっきからうわの空でどうしたの?」
「わっ、い、いや、少し考え事を…」
「考え事?あ、もしかしてあたしとの幸せな将来を考えてくれてたの?嬉しい~!」
「は、はは…そんなところ…」
魔法が使えず肉弾戦をメインとする俺にとって脱出が困難な結界が張られたこの家だが、かつての友の秘密を探るためにももう少し長居しても良いだろう。
彼女の実家、浜野家は外国、若市にルーツを持つ一族でありヴァッフェル建国の時から王家に様々な書物を提供していた書店兼出版社だ。諸外国の質の良い書物を仕入れることに長けており王家の書斎にある本の多くは浜野家の力を借りて集めたものだ。最大手の出版社として国民の文化や教育にも多大な貢献をした。そんな浜野家の一人娘である浜野鴇子は幼少期から本に囲まれた生活を送っており社交界などで顔を合わせた時には本についての話を色々と聞いたものだ。特に彼女は物語が大好きで古今東西あらゆる物語について話してくれた。俺はその中の騎士や戦いのシーンが好きだったが、彼女は物語に登場する可憐な令嬢や姫君に興味があったようだ。幼い俺はきらびやかな少女たちに憧れる彼女を見て”女の子の趣味はわからないな…”と少し退屈な気分になった。だが後から聞いた話によると彼女は本以外のことに興味がなく加えてシャイであったため、あまり社交界で他の令嬢たちと馴染むことができなかったらしい。今思うと物語の中の令嬢に強い憧れを抱いていたのは上手くいかない現実からの逃避でもあったのかもしれない。
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