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露見・杉谷瑞希の日記

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露見
 「おい、ホルニッセお前か!あれはお前の仕業か!」
「…何のことだ。あなたから来るのは珍しいと思ったが俺には全く心当たりがない。」
「しらばっくれんな、ここで俺のことを知っているのはお前くらいだろ!」
「…いや本当に何のことかさっぱりだが。」
「あーあ、お前演技力だけはあいつに勝るよ。」
「それは奴の正体を見抜けなかった俺への皮肉か。」
俺がらしくもなく冷静さを失っているのは先日の杉谷瑞希の発言のせいである。いくら若市に足を運んだことがあるといっても俺のことを知っているはずがない。文献を漁れば出てくる情報でもないし(それこそ『剣崎雄の世界路』でも読まない限りは)、俺の体質のことを知っているのはせいぜい俺の“親”かその周辺の人物くらいである。だが唯一理研特区にいて俺の体質を知っているホルニッセ・ツァハリアスが情報を漏洩させたなら話は別である。友好的に接しては来るがこいつの母親を殺した男に底知れぬ寿命を与えているのは俺だ。こいつの憎しみの元凶は俺であり、そんな俺の秘密を理研特区の研究者にバラそうと考えつくのは普通のことである。そもそも俺が寿命を延長してやらなければホルニッセの仇はいつか死ぬであろうに何故こいつは俺を殺そうとは思わないのだろうか。…あ、俺死なないんだった。
「何があったか知らないが、とにかく俺は何もしていないぞ。」
「なら何故杉谷瑞希が俺の正体を知っているんだ!」
「杉谷瑞希…?あの都市伝説のような人物と知り合いなのか。」
「都市伝説…?」
「ああ。生態研究科史上でも指折りの天才らしいな。会ったことはないが。」
「会ったことが…ないだと…?」
「留学先の学校の先輩らしいが彼はあることをきっかけに不登校になってしまったようでな。彼といい、俺といい、あとは鉄道会社の社長ともだっけか…一般人では到底話すこともできないであろう人物と悉く知り合いなのは何故なんだ。」
「お前が洩らしたんじゃないのか…?なら一体…」
「天才がやることなんてわかったものじゃないさ。」
「あれは一体何者なんだ…。」
「気になるなら調べればいい。」
「は?どうやって…。」
「あなたがまだ立ち入っていない、というか立ち入れないところがあるだろう。どうだ、共に留学生にならないか?」
「200歳からでも入れる高校があるんですか。」
「あなたなら身分の偽装もお手の物ではないのか。」
「それもそうだ。」
「それと寄生虫の件でもあなたの協力が欲しくてな。人々をもとに戻す手段をある人物と共に模索しているのだが難航していて…。」
「最新技術に関しておじいちゃんの知恵を頼りにするのは違う気もするがな。それにしても変わったやつもいるもんだな。」
「なんでも一文路という大財閥のご子息らしい。俺が言うのもなんだがアクティブな貴族というのも珍しいな。」
「一文路、と言ったか?」
「ああ。それがどうかしたか?」
一文路と言えば杉谷瑞希が寄生虫騒ぎの犯人だと目星をつけていた人物ではないか。単純に犯人の予想が外れた?それともマッチポンプ?何のために?いや、あれが失敗から生まれたものならば無かったことにしたい、もしくは罪悪感が生じて…?
「いや、杉谷瑞希が言っていたのさ。一文路家の長男、一文路直也こそが寄生虫を生み出した全ての元凶だってな。」
「そんな…いやまさかな。だがいつも彼がおどおどとしていたのは性格柄ではなくうしろめたさからだったとも説明できてしまう…。直也さん、そして杉谷さんにも話を聞く必要がありそうだな…。」
ホルニッセが一文路と知り合いだったことにも驚きだが黒幕がすぐ隣にいたかもしれないと知ってもあまり動揺せず事の真相を知ろうという気持ちの方が強いホルニッセ自身についても驚かされる。その好奇心と行動力は確実にお前の仇譲りだろうな。

杉谷瑞希の日記-5
 ああまさか偶然会った旅人さんがあの不老不死者とかいうおとぎ話めいた存在だとはね。情報のソースは言えないけど話は本当だったんだね。そうだ、俺が柄にもなく他人に興味を持ったのは彼が特殊な存在だからだ。そうだ決してあの忌々しい寄生虫のせいで人に飢えているわけではないのだ。人間なんて自己中心的な生物俺が好きになるはずがない。寄ってたかって俺の頭脳と容姿に群がり、でも俺が生態研究科ではタブーとされる思想の持主だと知ると去っていく。大きなプラス程大きなマイナスに転じる。俺は何もしていないのに周りが勝手に裏切られていくのだ。ああいい調子だ。ほら人間なんて醜いでしょ。人間嫌い、人間嫌い、人間キライ、一人でいたい、一人でいたい、一人でいたい、一人は嫌だ
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