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The Eraser of Constellation
軌跡(ほし)を辿る-12
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今度こそ
岩村が何をしているか俺たちにはわからない。ただ俺たちには触れることもできなかった結界の中に容易く入り込めたのは岩村だけだ。やはりあの力はあらゆる超常現象を無効化するものなのだろうか…。
「う…」
「ユウスケの声だ!目を覚ましたのかな?」
「見ろ、魔法が解けていく…」
謎の結界が消え、魔法学研究所の床には横たわる中峰だけが残った。
「それにしても長畑はよく中峰がここにいるとわかったな。」
「そりゃ名探偵としては当然でしょ~。でも良かった、ここなら無防備に倒れていても安全だからね。」
「岩村先生は何をしていたの?」
「ああ、簡単に言うとこちらに戻ってくるように呼び掛けていたんだ。」
「岩村、言いたいことはわかるが、それだとあの世に行きかけているやつをギリギリ繋ぎとめたみたいじゃないか。」
「実際そうだろう。何日も飲まず食わずで普通だったら死んでいてもおかしくない。どのような原理かわからないが奇跡的に見た感じ彼の状態は健康そのものだ。とは言え医療機関に診せた方が良い。それにあの魔法は彼自身がかけたものだろう。だとすれば精神面の方が心配だ。」
「すごい!先生、doctorみたい…」
「…タイキの声…?僕は夢を見ているの…?」
「逆だ、中峰君。君は目を覚ましたんだよ。」
「目を…ってことはここが現実世界…」
「そうだ。言った通り君の友人は無事だろう。」
「…!そうだ、外はどうなってるんですか!ドラゴンは!?」
「残念ながらまだ…。だが街の崩壊具合に対して被害者は少ない。」
「そうですか…」
「ねぇ、中峰くん。なんでこんなことをしたの?」
「…ボロボロになった街を見て、時間が巻き戻ればいいと思ったんだ。そしたらいつの間にか街が崩壊する前に戻ってて、そこではドラゴンに街が襲われる度にやり直せるんだ。」
「無意識のうちに時間遡行をしていたってことか…」
中峰本人曰く竜の召喚も事故だったようだが、強力な魔法を制御できないのは大問題である。まあ俺が言えたことではないのだが。
「…とにかく、ユウスケが無事でよかった!大丈夫、俺だって次は失敗しないよ!強力な仲間も揃ったことだしね!」
「…タイキはすごいね。」
「そうかな?でもユウスケは魔法の力で何度も同じ戦いを繰り返したんでしょ?俺だったらそんな悪夢、耐えられないな…」
「でも僕は一人じゃ何もできなかったんだよ?」
「そうかもしれないけど、もうユウスケは一人じゃない。大丈夫、みんなで力を合わせれば勝てるさ。」
「…なんでそこまでしてくれるの?」
「なんでって…そりゃここに来たばかりの時、ユウスケが言葉も通じない外国人の俺を助けてくれたからだよ。君のお陰でこの街の人間として暮らせているんだから。次は俺が君を助ける番でしょ?」
様々な検査の結果中峰の健康状態に異常は見られなかったようだ。華那千代でも時間遡行の魔法は非常に珍しいらしく、事情を聞いた医師は驚いていたそうだ。
「それにしても宮間、お前あんなかっこつけたこと言っておきながらちゃんとした策はあるのか?」
「大丈夫、頭の中でsimulateした限りは。まあカズのやる気次第だけど…」
「俺の?」
「トモから聞いた話によれば若市を2つに分断する平原は君が作ったものなんだろう?改めて考えるとすごいよね、華那千代一国分よりも広い面積を焼野原にできるなんて。」
「あれは…」
「言うならば今回のchallengeは君の良心にかかっている。君が自分と似た過ちを犯したユウスケを助けようと思うかどうか。」
「お前思ったより嫌な奴だな。別にそんなことしなくたって手伝うよ。」
「なら良かった!」
「で、具体的にはどうすればいい?」
「簡単なことさ、カズは―」
岩村が何をしているか俺たちにはわからない。ただ俺たちには触れることもできなかった結界の中に容易く入り込めたのは岩村だけだ。やはりあの力はあらゆる超常現象を無効化するものなのだろうか…。
「う…」
「ユウスケの声だ!目を覚ましたのかな?」
「見ろ、魔法が解けていく…」
謎の結界が消え、魔法学研究所の床には横たわる中峰だけが残った。
「それにしても長畑はよく中峰がここにいるとわかったな。」
「そりゃ名探偵としては当然でしょ~。でも良かった、ここなら無防備に倒れていても安全だからね。」
「岩村先生は何をしていたの?」
「ああ、簡単に言うとこちらに戻ってくるように呼び掛けていたんだ。」
「岩村、言いたいことはわかるが、それだとあの世に行きかけているやつをギリギリ繋ぎとめたみたいじゃないか。」
「実際そうだろう。何日も飲まず食わずで普通だったら死んでいてもおかしくない。どのような原理かわからないが奇跡的に見た感じ彼の状態は健康そのものだ。とは言え医療機関に診せた方が良い。それにあの魔法は彼自身がかけたものだろう。だとすれば精神面の方が心配だ。」
「すごい!先生、doctorみたい…」
「…タイキの声…?僕は夢を見ているの…?」
「逆だ、中峰君。君は目を覚ましたんだよ。」
「目を…ってことはここが現実世界…」
「そうだ。言った通り君の友人は無事だろう。」
「…!そうだ、外はどうなってるんですか!ドラゴンは!?」
「残念ながらまだ…。だが街の崩壊具合に対して被害者は少ない。」
「そうですか…」
「ねぇ、中峰くん。なんでこんなことをしたの?」
「…ボロボロになった街を見て、時間が巻き戻ればいいと思ったんだ。そしたらいつの間にか街が崩壊する前に戻ってて、そこではドラゴンに街が襲われる度にやり直せるんだ。」
「無意識のうちに時間遡行をしていたってことか…」
中峰本人曰く竜の召喚も事故だったようだが、強力な魔法を制御できないのは大問題である。まあ俺が言えたことではないのだが。
「…とにかく、ユウスケが無事でよかった!大丈夫、俺だって次は失敗しないよ!強力な仲間も揃ったことだしね!」
「…タイキはすごいね。」
「そうかな?でもユウスケは魔法の力で何度も同じ戦いを繰り返したんでしょ?俺だったらそんな悪夢、耐えられないな…」
「でも僕は一人じゃ何もできなかったんだよ?」
「そうかもしれないけど、もうユウスケは一人じゃない。大丈夫、みんなで力を合わせれば勝てるさ。」
「…なんでそこまでしてくれるの?」
「なんでって…そりゃここに来たばかりの時、ユウスケが言葉も通じない外国人の俺を助けてくれたからだよ。君のお陰でこの街の人間として暮らせているんだから。次は俺が君を助ける番でしょ?」
様々な検査の結果中峰の健康状態に異常は見られなかったようだ。華那千代でも時間遡行の魔法は非常に珍しいらしく、事情を聞いた医師は驚いていたそうだ。
「それにしても宮間、お前あんなかっこつけたこと言っておきながらちゃんとした策はあるのか?」
「大丈夫、頭の中でsimulateした限りは。まあカズのやる気次第だけど…」
「俺の?」
「トモから聞いた話によれば若市を2つに分断する平原は君が作ったものなんだろう?改めて考えるとすごいよね、華那千代一国分よりも広い面積を焼野原にできるなんて。」
「あれは…」
「言うならば今回のchallengeは君の良心にかかっている。君が自分と似た過ちを犯したユウスケを助けようと思うかどうか。」
「お前思ったより嫌な奴だな。別にそんなことしなくたって手伝うよ。」
「なら良かった!」
「で、具体的にはどうすればいい?」
「簡単なことさ、カズは―」
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