上 下
19 / 21
The Eraser of Constellation

軌跡(ほし)を辿る-12

しおりを挟む
今度こそ
 岩村が何をしているか俺たちにはわからない。ただ俺たちには触れることもできなかった結界の中に容易く入り込めたのは岩村だけだ。やはりあの力はあらゆる超常現象を無効化するものなのだろうか…。
「う…」
「ユウスケの声だ!目を覚ましたのかな?」
「見ろ、魔法が解けていく…」
謎の結界が消え、魔法学研究所の床には横たわる中峰だけが残った。
「それにしても長畑はよく中峰がここにいるとわかったな。」
「そりゃ名探偵としては当然でしょ~。でも良かった、ここなら無防備に倒れていても安全だからね。」
「岩村先生は何をしていたの?」
「ああ、簡単に言うとこちらに戻ってくるように呼び掛けていたんだ。」
「岩村、言いたいことはわかるが、それだとあの世に行きかけているやつをギリギリ繋ぎとめたみたいじゃないか。」
「実際そうだろう。何日も飲まず食わずで普通だったら死んでいてもおかしくない。どのような原理かわからないが奇跡的に見た感じ彼の状態は健康そのものだ。とは言え医療機関に診せた方が良い。それにあの魔法は彼自身がかけたものだろう。だとすれば精神面の方が心配だ。」
「すごい!先生、doctorみたい…」
「…タイキの声…?僕は夢を見ているの…?」
「逆だ、中峰君。君は目を覚ましたんだよ。」
「目を…ってことはここが現実世界…」
「そうだ。言った通り君の友人は無事だろう。」
「…!そうだ、外はどうなってるんですか!ドラゴンは!?」
「残念ながらまだ…。だが街の崩壊具合に対して被害者は少ない。」
「そうですか…」
「ねぇ、中峰くん。なんでこんなことをしたの?」
「…ボロボロになった街を見て、時間が巻き戻ればいいと思ったんだ。そしたらいつの間にか街が崩壊する前に戻ってて、そこではドラゴンに街が襲われる度にやり直せるんだ。」
「無意識のうちに時間遡行をしていたってことか…」
中峰本人曰く竜の召喚も事故だったようだが、強力な魔法を制御できないのは大問題である。まあ俺が言えたことではないのだが。
「…とにかく、ユウスケが無事でよかった!大丈夫、俺だって次は失敗しないよ!強力な仲間も揃ったことだしね!」
「…タイキはすごいね。」
「そうかな?でもユウスケは魔法の力で何度も同じ戦いを繰り返したんでしょ?俺だったらそんな悪夢、耐えられないな…」
「でも僕は一人じゃ何もできなかったんだよ?」
「そうかもしれないけど、もうユウスケは一人じゃない。大丈夫、みんなで力を合わせれば勝てるさ。」
「…なんでそこまでしてくれるの?」
「なんでって…そりゃここに来たばかりの時、ユウスケが言葉も通じない外国人の俺を助けてくれたからだよ。君のお陰でこの街の人間として暮らせているんだから。次は俺が君を助ける番でしょ?」



 様々な検査の結果中峰の健康状態に異常は見られなかったようだ。華那千代でも時間遡行の魔法は非常に珍しいらしく、事情を聞いた医師は驚いていたそうだ。
「それにしても宮間、お前あんなかっこつけたこと言っておきながらちゃんとした策はあるのか?」
「大丈夫、頭の中でsimulateした限りは。まあカズのやる気次第だけど…」
「俺の?」
「トモから聞いた話によれば若市を2つに分断する平原は君が作ったものなんだろう?改めて考えるとすごいよね、華那千代一国分よりも広い面積を焼野原にできるなんて。」
「あれは…」
「言うならば今回のchallengeは君の良心にかかっている。君が自分と似た過ちを犯したユウスケを助けようと思うかどうか。」
「お前思ったより嫌な奴だな。別にそんなことしなくたって手伝うよ。」
「なら良かった!」
「で、具体的にはどうすればいい?」
「簡単なことさ、カズは―」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる

ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。 正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。 そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

婚約破棄の場に相手がいなかった件について

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。 断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。 カクヨムにも公開しています。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。

ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」  そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。  長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。  アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。  しかしアリーチェが18歳の時。  アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。  それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。  父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。  そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。  そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。  ──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──  アリーチェは行動を起こした。  もうあなたたちに情はない。   ───── ◇これは『ざまぁ』の話です。 ◇テンプレ [妹贔屓母] ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...