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The Eraser of Constellation

軌跡(ほし)を辿る-11

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新たな可能性
 「トモ!ヒジリ!久しぶりだね!」
「宮間くん、良かった無事だったんだね~」
「うん、俺はこの通り元気だよ!ヒジリもトモを探してくれてありがとう!」
「長畑くんだけじゃないよ、中峰くんも見つかったんだ。」
「Really!?」
「やはり長畑に聞くのがベストだったのか。」
「あっ、白城くんおかえり~」
「俺たちが戻ってきたことで随分大人数になってしまったな。」
「僕は歓迎だよ~。ちょうど君たちの知恵も借りたかったところだし。」
「俺たちの知恵?宮間ならまだしも俺はあまり魔法とかには詳しくないぞ。」
「待って、俺は戦力外かよ!」
「…そもそも剣崎、お前は長畑の知り合いじゃないだろ。」
「あ、君が剣崎くんかぁ。もしかしたら君の知恵を借りるかもしれないよ?」
「おう、任せとけ!」
「…ところでその、お前がいても解決できない問題とは何だ?」
「中峰くんについてなんだけどね…かくかくしかじかで…」
 …長畑の話によれば中峰は今生きてはいるものの結界か何かで別世界に閉じ込められているようだ。触れることも話しかけることもその結界のようなものを破壊することもできないらしい。
「それは俺にもどうしようもできないな…」
そもそも俺は変に長生きなだけで何でも屋というわけではない。
「うーん、それって魔法を解除できればいいんだよね。」
「それはそうだけど、結界系の魔法は普通術者以外の人が解除できるものじゃないでしょ。それとも宮間くんは何かいい方法を知っているのかい?」
「絶対じゃないけど、もしかしたらー、ってものは…」
「本当に!?」
「うん。以前授業で魔法を使った時、失敗して飛んでいっちゃった炎が岩村先生の近くにきた途端フッと消えたんだ。もしかしたら魔法を消せるのかなって…」
「防御魔法じゃなくて?」
「うーん、こっちのことなんて見てもいなかったしなぁ…。絶対ぶつかる!って思ってたからびっくりしちゃった。」
岩村が魔法を…?いや、宮間だって華那千代の生まれではない。ここでは余程才能がない者じゃなければ魔法というものは訓練すれば使えるものだという認識が正しいとのことだった。
「そういえばあいつが巻き込まれた理研特区の戦争では多くの人が人間離れした能力を使えるマイクロチップを知らないうちに埋め込まれていたんだったな。」
「ああ、あれね!今考えてもあれが科学だとは思えないなー。で、確か岩村はそれらの能力を無効化させたり狂わせたりする能力を持っていたとか…」
「へぇ、先生たちの故郷…えっとリケントックでそんなことがあったんだ…」
「もし岩村のマイクロチップがそのままだとしたら、あいつは魔法も無効化できるということか?」
「確かにそれなら俺の魔法が消えたのも納得…」
「…ああ、なるほど。それなら中峰くんを助けられるかも…」
「でもそう簡単に岩村が見つかるってことはないだろ。」
「その岩村って教師ならここにいるよ。」
「Wow!ヒジリも岩村先生を知ってるの?」
「白城くんとここに来る前に会ったからね。」
「なら話は早いね!断られることは…多分ないだろうし岩村先生を探しに行こう!」
 宮間は先頭に立って歩き始めた。あまり人がいるところでこういう目立つことはして欲しくないが…。そういえばテンポよく話が進んでいったため考える余裕がなかったが、中峰は何故そのような状態に陥ったのだろう。自責の念で、もしくは現実逃避のために別世界に身を置こうとしているなら無理に連れ戻すべきでは無いのではとも思うが…



 魔法の効果が切れたのだろうか。しばらくぶりに崩れた建物たちが見える。 戻ってきた…?でもなんで?確かに魔法なのだから一定時間で効果が切れるのは普通である。そう考えると一生あの空間に留まり続けて償おうなどと思っていた僕が馬鹿馬鹿しいくらいだ。   
「そうだ!タイキやトモは…!?無事か確かめなきゃ!」
僕はあてもなく走った。あれからどれだけ時間が経ったかわからない。2人がどこにいるのか、生きているのかさえわからない。でも僕はそうするしかなかった。
「うわっ…!」
全く人影のない街で突然人にぶつかる感覚がした。
「あ…すみませ…」
「…君は?」
「あ…あう…」
「その恰好、君はうちの生徒だな。俺は大多数の生徒を把握しているつもりだが…すまない、君のことは…」
「あ、その…僕あまり学校には行ってないので…」
「そうだったのか。事情はあれどちゃんと登校した方が良い。閉じこもっていては何もできないぞ、中峰君。」
あれ?僕のことは知らないんじゃなかったっけ…
「厳しいことを言うがこんなことをして現実から逃げるのは最悪の対応だ。それに目を閉じたままじゃ君を心配する友人の顔も見られないだろう」
「えっ、あ、あの、あなたは―」


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