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第33話 お土産を貰いました。
しおりを挟む「おーい、かなちーん。朱音っちー!」
朝、いつものように竜胆さんと一緒に登校し教室に入ると、直ぐにそんな声が掛けられた。
そのエネルギー溢れる声の主は、有咲ちゃん。
自分の席の椅子から立ち上がり、手を大きく振りながら私たちを呼んでいる。
「おはよー、有咲ちゃん。どしたの?」
有咲ちゃんの後ろの席が私たちの席なので、近寄りながら挨拶をする。
ちなみに奈緒ちゃんは、有咲ちゃんの横で焼きそばパンとクリームパンを両手に持って食べている。
あ、あれはしょっぱいものと甘いものとを交互に味わう事で無限に食べられるやつだ…!
「おっはよーぅ! 突然ですが、二人には渡す物があるのです!」
「「渡す物?」」
私と竜胆さんは互いに顔を見合せ、心当たりが無いかどうかを共有する。…うん、無いっすね。
となれば、もはや本人に聞いてみる他無い。
「私たちに渡す物って何?」
「それはですねぇ~、なんと…」
有咲ちゃんはそこで溜め、私たちの事をじっと見つめている。
見つめ合う私たちの間には謎の緊張感が漂っていた。
ごくり、と誰かが唾を飲む音が聞こえる。
「な、なんと…?」
そんな中で、私は続きを促すように問い掛けた。
そうすると、それに応じるように有咲ちゃんがバックから何かが入ったビニール袋を取り出す。そして、それを掲げながら言った。
「お土産です!」
「え、お土産?」
「うん。はい、これ」
「あ、ありがとう…」
私は困惑しながら竜胆さんと一緒にゆっくりと袋の中身を確認する。
「えっ…これって」
その袋には…ポテチが入っていた。
「ポテチじゃん」
どこからどう見てもポテチだ。ポテチ以外の何物でもない。むしろこれがポテチじゃなかったら怖い。
そして、味も普通にのり塩味。普通だ…。
「うん。ポテチです」
「お土産じゃ…ないの?」
「え? コンビニに行ったお土産だよ?」
有咲ちゃんはきょとん、とした顔で頭にはてなマークを浮かべている。
え、本当に言ってるの…? というかコンビニに行ったお土産って初めて聞いたわ。
すると、ここで竜胆さんの訂正が入った。
「有咲。こういうのは一般的に、お土産じゃなくてプレゼントという言葉を用いるのよ?」
「そうなの? じゃあプレゼントって事で! ハッピーバースデー!」
誕生日じゃないんだよなぁ。
この後、ポテチは皆で美味しく頂きました、まる。
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