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第11話 明春フェス、その後

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 最初のバンドが流行アニメの映画主題歌を演奏した後も、ポップなバンドによる有名なCMソングの演奏、リズミカルでキュートなK-POPダンスなど、すごく盛り上がった。まじで、プロ??!って思うくらい上手かった。場を盛り上げるのも上手いのは何故だ?実は隠れプロなのかもしれん…。

「みんな、今日はありがとー!!!そして改めて、入学おめでとう!これからよろしくね!」

 しかし、楽しかったフェスもこれで終わりらしい。
消されていた照明がつけられ、窓に掛けていたカーテンも退けられた。すると周囲は明るくなり、フェスの世界に飛び込んでいた意識が現実へと引き戻される。

ただいま、現実リアル…。
 
 隣を見ると、竜胆さんはまだ余韻に浸っているみたいだ。虚空を見つめて、ぼんやりとしていた。
そんな姿を、私は横から眺める。

(横顔も綺麗だな~)

 観察し始めてもなく、竜胆さんが急にこっちを向く。びっくりした…。
こっちをじっと見てくる。な、なに??

「竜胆さん、どうしたの?」

「来年、一緒にバンドを組んで参加しない?」

「え?私と竜胆さんで?」

「そう。今日の演奏を見てやってみたいと思ったの」
 
 確かに、憧れるくらいかっこよかった。なんかバンドのライブとか見ると自分もやってみたくなるよね。

「私、少しギター弾けるくらいだけど」

「大丈夫。私は弾いたことないわ」

「…それって大丈夫なの?」

「…駄目かしら?」

 まぁ私がギターやって、竜胆さんがボーカルやれば大丈夫か。別に竜胆さんがギターやりたいなら私が教えれば良いもんな。

「いや、いいよ。一緒にやろ!」

「良いの?」

「もちろん!楽しそうだし!」

「嬉しいわ。ありがとう」  

「いえいえ~、練習しとくね!」

 ギターは中学二年生の夏休みに弾いて以来である。とうとう私の隠された才能を披露する時が来たか…。
ギターリストとしての血が騒ぐぜ…。

 さて、気づいたら他の人はほとんど教室に戻ったみたいで、体育館は人がまばらとなっている。

「それじゃ、私達も教室に戻ろっか」

「そうね、この後はもう帰って良いのよね?」

「うん!ホームルームは無いって言ってた。帰ろ~」

 私達は教室で鞄を取ってから一緒に帰った。
帰り道、昨日よりも半歩分、お互いの距離が縮まった。フェスを経て少し仲が深まったようだ。
隣合って演奏を聞いていただけなのに、不思議だ。
これが音楽のちから…。



 フェスが騒がしかったせいだろうか。帰宅中、ふと訪れる静寂をいつもより意識してしまう。私はこの静寂を無くそうと言葉をはっしようとして、止めた。この穏やかに時が流れる空間も、風情があって悪くない。
こういう時間も青春と呼ぶのだろう、と。そう思うから。
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