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第4章:俺の声を聴け!

196:詰問の時間です!

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俺は……仲本聡志は、困り果てていた。何をって。そりゃあこの状況に、だ。


「これは一体どういう事ですか?サトシ・ナカモト」
「あ、え?いや……えっと」

「どういう事ですか?」と俺に腕組をして問いかけてくるのは、声だけで黒幕感を漂わせてくる岩田旭さん……もといクリプラントの現宰相のマティックだ。いや、絶対お前黒幕だろ。お前が説明しろよ、マティック。

「リーガラント軍が突然全軍撤退をしたと聞いたが、それに関しての情報を頼めるかな?サトシ君」
「えっと、俺、よくわかんなくて」
「分からない?話によるとキミがリーガラント軍を撤退させたと聞いているのだが?」

こっちは、何気なく発せられた声だけで完全に他とは格の違いを見せつけてくる中里譲さん……もといクリプラント前宰相のカナニ様だ。なんで?なんで、俺こんなにちょっと怒られてるんだ。カナニ様、俺頑張りましたよ。エイダだって連れて帰ってきたのに。

「いやぁ、俺は特に……何も」

俺は現在、なんだかんだと色々あって無事クリプラントに帰還していた。
そして、俺が今居る場所はリプラント王宮の中でも、トップの人間しか入る事が許されない部屋らしい。えらく簡素な会議室のような部屋の中に、王国のそうそうたる面々が、俺の前にズラリと並んで座っている。

「……えっとぉ」

ただ、そこに居るのは位の高い面子ばかりではない。俺と同じ側に座るのは気心を知れた二人。

「サトシ、大丈夫?」
「……いや、全然大丈夫じゃない」
「おい、サトシ・ナカモト。お前、早く勘違いだと皆様にお伝えしろ」
「テザー先輩、だったら代わりに言ってくださいよ」
「俺が言えるワケないだろう!俺だって何も分からないんだぞ!」

コソコソと俺を挟んで両脇から話しかけてくるエーイチとテザー先輩に、俺はせわしなく視線を動かした。ちょうど目の前には腕組みをして此方を見ているイーサが居る。珍しい事に、俺を見ても何も言ってこない。静かだ。

「何をコソコソ話しているの?王族を前に失礼じゃなくって?」
「大変申し訳ございません!ソラナ様!」
「早く報告をしなさいよ。こっちは国の今後がかかっているの、ちゃんとして」
「ほら、サトシ・ナカモト!さっさと報告をしないか!」
「えぇ……」

急に裏切るじゃん。こういうバイト先の先輩居るよな。店長を前に、ガッツリ後輩売りやがる。ホント性質悪いんだけど。

「早くしてちょうだい!」
「うぅ」

完全に「私はご機嫌斜めよ!」と言わんばかりに口をとがらせてくるソラナ姫が、俺に向かってその可愛い目で睨みを利かせてくる。その後ろにピタリと控え立つのは、いつものメイド服姿のポルカだ。ポニーテールが今日も可愛い。

「は!や!く!」
「ソラナ様、少し落ち着かれた方が」
「ポルカ!こんなヤツを庇うの!?怒るわよ!」
「いえ、そんな事は……」

あぁ、いつ聞いても可愛い声達だ。推せる……

「……なんでもない!何も思ってない!俺は今物凄く大切な事を考えています!決してやましい事は考えてません!」

俺は思わず首元にあるネックレスに触れながら叫ぶと、チラとイーサの方を覗き見た。すると、イーサはどこか満足そうに口元に薄く笑みを浮かべていた。どうやらセーフらしい。またあの激痛を食らわされるのは死んでもごめんだ。

「……ちくしょう」
「何よ急に!やっぱりこの人間おかしいわ!気でも触れたんじゃない!?ポルカ!見なさいよ、この人間!頭がおかしい!」
「……確かに。少し怖いですね」
「少しじゃない!たくさん怖いわ!こんなヤツには決して一人で近寄ってはダメよ!何をされるかわからないもの!」

「……うぅ」

あーー!もう何の仕打ちだよ!コレは!
せっかく無事に砦から逃げ出して、エーイチとも合流して、何故かデカくなったエイダも、そして助けに来てくれたテザー先輩も一緒に無事に戻って来れたのに!

これは一体何なんだ!

「なぁ、俺が説明してやろうか。カナニ」
「……エイダ」
「多分、一番この中で事態を把握してんのって俺か……エーイチなんじゃねぇかなって思うんだ。な?エーイチ?」
「僕は確信の持てない事は喋ったりしない主義だから」
「いいねぇ!そのツンとした態度!あとで、一緒にメガネ買いに行こうぜ!デートだデート!」
「行かない」

フイとエイダから顔を背けるエーイチは、そのヒビの入った眼鏡の奥にある大きな瞳を俺にチラと向けた。その目は完全に「サトシ?本当に分かってないの?」と俺に問いかけている。

「……」

あぁ、分からん。ちっとも分からん。
多分、エーイチもエイダの言うように大方の事は分かっているのだろう。けれど、クリプラントに帰る道すがら、エーイチは俺に何も教えてはくれなかった。

「エイダ。お前は自身の言葉に嘘偽りがない事を、神に誓えるか?」
「お前相変わらずおカタいなぁ。カナニ。別に誓ってもいいけど、会った事もねぇ神様に捧げる誓いなんて、意味があるのかねー?」
「……だったら、神ではなく」
「神ではなく?」

エイダが揶揄うような口調でカナニ様の言葉を復唱する。コイツ、なんて無礼なヤツなんだ。

「友であるヴィタリックに誓え」

カナニ様のその言葉に、エイダの言葉が一瞬だけ詰まる。

「……へぇ。まぁ確かに、どこぞの神様よりは誓う意味もあるってモンだな」

先程までの人を食ったような表情を浮かべていたエイダの表情が一瞬だけ固まった。しかし、すぐにその顔には元の軽薄そうな笑みが浮かび上がってきた。

「さぁ、エイダ。お前の知っている事を話せ」
「ヴィタリックなら、俺の嘘くらい見抜いて笑って許してくれるからな。いつも通りの俺で語らせてもらおう」

どうやら、このエイダと言うハーフエルフは本当に“ヴィタリック王”と友達だったらしい。

「リーガラント軍を撤退させたのは、確かにこの人間だ。このつまんねーけど面白ぇ。サトシ・ナカモト。コイツで間違いない」

そう、エイダの無遠慮な人差指が、俺の方をハッキリと指さした。エイダの声。この声は聞いた事はなかったが、関西弁のキャラに起用したらハマりそうだな、なんて。

俺はぼんやりと考えたのであった。


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