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番外編マリエルの末路⑩
しおりを挟む暗かった牢屋にもう一つ灯が灯されると。
目の前には私を睨みつける二人の女。
この邸の主と、もう一人、似た顔立ちをした女がいた。
「シェリーナ!頼む…許してくれ!」
鎖で繋がれるラッド子爵が声を上げるも既にボロボロだった。
「ちょっとした遊びだったんだ!もうこんなことは…」
「その言葉は聞き飽きましたわ。貴方とは離婚ですわ。亡き義父に義理がありました。ですからこれまでは許しましたが…女王陛下に無礼を働いた罪人であり、ルイス殿下を侮辱した罪深き女と淫らな関係になった男とは縁を切らなくては子爵家だけの問題で済みませんわ」
「なっ…知らない!私はそんなこと」
「知らなければ許される問題ではない。貴様はこのサジータの大事な息子を長年に渡り侮辱し殺そうとした女と淫らな関係になり、あげくの果て宗教の教えに背いたのだ。ちゃんとした婚姻を持たぬ女を侍らせ続け、あげくに薬にまで手を出していたそうだな」
「それは…」
「浮気までなら目を瞑って参りましたわ。別に関心もありませんし」
「は?」
蔑んだ目は変わらずにいるのに、私を悔しがる素振りは一切なかった。
むしろ笑みを浮かべているのは何故?
悔しいんでしょ?
夫を奪った私が…
「これで離婚する正当な理由ができましたわ。本当に貴女にはお礼を申し上げますわ」
「お礼…何を」
この口ぶりに、この余裕はおかしいと思った。
「ラッド夫人、貴女の協力に感謝しよう。そなたの働きは大きい…これでこの女を確実に死ぬまで閉じ込めることができよう。二度とお日様の下に出すことはできず家畜と一生を終えるのだからな」
「もったいなきお言葉でございます。私もこんな屑と手を切ることができて嬉しゅうございます。外聞が悪いので離婚が難しかったのですが…罪人に手を出したとなれば私に同情の声は上がっても批難は少ないでしょう」
「シェリーナ…」
「姉さん、私は大丈夫よ。だからそんな顔をしないで」
こいつ等最初からグルだったの!
私がこの男を誘惑するのも最初から計算していた?
じゃああの下級メイドも。
「すべてアンタの策略通りだったわけ?」
親切にする振りをして、シェリーも最初から私を騙す気だったのね。
策士じゃない!
とんだ偽善者ね!
「お前は何処まで愚かなんだ」
「は?」
心底呆れる様な表情をするオスカーに対して苛立ちが消えることはなかった。
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