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番外編マリエルの末路⑧
しおりを挟むチャンスは思ったよりも簡単に舞い込んで来た。
邪魔な女達が席を外した時に私はそれとなくアプローチをかけた。
「素敵なダンスを踊るお嬢さん、お名前を聞かせてくれるかい」
「私は一夜限りの男性に名を名乗る気はありませんわ」
「では一夜限りではないなら、教えてくれるのかい?」
駆け引きを心得ている人で遊び方をも解っている。
その後は私が目論んだ通りトントン拍子に話は進んだ。
ダンスを二度以上踊り、パーティーの主役となった私はいい気分だった。
美しい私を嫉妬する馬鹿な女達。
人生の勝ち組は生まれた時から決まっている。
どうあがいても勝組になれない人間は存在するのだから、そこで見ていればいいのよ。
夜も遅くなる時間、私達は逢瀬を楽しみながら、誘惑をすれば簡単に引っ掛かったわ。
「マリエル、私は君のような女性を探していた」
「私もですわ…けれど貴女は妻帯者」
「関係ない。私は君が欲しい」
ここまではちょろいわ。
お酒に少しばかり薬を忍ばせ、ベッドに誘い込み愛し合った。
男は単純な生き物だった。
もう私の虜になっているけど、このままではダメだ。
私は愛人に成り下がる気はない。
スティング・ラッドを本当の意味で利用する為には妻の座を得なくてはならない。
その為にも私を正妻に迎えるように約束させなくては。
「私は貴族の娘…愛人に収まるなんて両親が許しませんわ」
「ああ、君ほどの女性ならば」
そうよ。
どんなにもてはやされいい思いをしても所詮は下級貴族。
高位貴族ならばまだしも下級貴族の愛人なんて未来はない。
だからこそ正妻の座を得なくてはならない。
「お願い…子爵様」
「解った。妻と離婚しよう」
少しばかり粘れば子爵は私の願いを聞き入れてくれた。
ふふっ…これで私は勝ち組よ。
ガタン!
「ん?何か音がしたか?」
「猫が入り込んだだけですわ」
「そうか…」
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だから私はサービスをしてあげた。
「もっと愛し合いましょう。今日は記念日ですもの」
「おいおい、あまり激しくすると体に障るだろ」
「いいの…隅々まで愛してくださいな」
ちゃんと見せてあげるわ。
私とアンタの夫がどれだけ愛し合っているか。
苦に思って精神を壊せばいい。
嘆き悲しみ自害でもしてくれてもいいわ。
その方が都合がいいし、あの性悪年増女に絶望を味合わせることもできるのだから。
忘れられない日になると思った。
全てが上手く行くと信じて疑わなかった。
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